病気の原因の本質

■第10章 病気の原因の本質

□「病気と治療法についての信念が、健康的生活のための真の教育に対する事実上の障壁として立ちはだかっている」

ハーバート・シェルトン

現代医学がその根幹とするものは、病気と闘う薬、病気予防のワクチンにより、健康障害を改善できるとの主張である。さらに、現代医学は病気を退治し予防できる唯一のヘルスケアシステムとされる。なぜなら、エビデンスに基づく科学にしっかりと根ざした唯一のものだからという。

しかし、本書全体、特にこの最終章で示すように、これほど真実から遠いものはない。

一般に、近代医学は17世紀から18世紀にかけての科学の進歩の結果として生まれたと言われるが、最も重要な医学上の「ブレークスルー」が起こったのは19世紀後半になってからだった。最も重要なものは、様々なバクテリアの同定、「細菌論」の確立、多くのワクチンの開発と使用などだ。

20世紀初頭、現代医学は加速度的に進歩したが、主には技術革新の結果である。例えば、1930年代発明の電子顕微鏡は、それまでは不可視だった小さな物を見ることを可能にし、「ウイルス」と呼ばれる粒子の発見につながった。20世紀後半から21世紀初頭にかけて、先端技術の開発はますます加速した。これらの技術が現代医学に生かされ、診断、治療、実験研究などのために、より高度な医療機器や装置の開発が促進された。

しかし、現代医学が人間に関する病気について誇れることは、天然痘撲滅という唯一の勝利だけだ。もっとも、先述したように、この自慢話は無効である。したがって、二世紀以上の歳月と想像を絶する巨費にかかわらず、医学界にとって「人間の病気」打倒の成功は、依然として捉えどころがないことが明らかだ。

現代医学は、完全に科学的と主張しながらも、はるか現代科学以前の時代から継続する二つの信念に基づき病気とその治療に取り組んできた。その信念の一つは、病気とは人体を攻撃する独立の存在というもので、もう一つは、適切な薬で病気が治るというものだ。さらに、「細菌論」の受け入れによって第三の信念に導かれた。「細菌」により起こる病気はワクチンで予防できるとの主張である。しかし、これらの信念には根本的欠陥がある。病気の性質や、病気の治療や予防の手段を正確に表していない。現代医学が病気に打ち勝てないのは、このような欠陥のある信念を厳格に守ってきたことに起因する。

残念ながら、事実上すべての「ヘルスケア」は、病気の本質についての同じ欠陥理論に基づき運営されている。本書が「現代医療」、あるいは医学界に焦点を当てるのには理由がある。2030アジェンダ目標の国民皆保険導入や「すべての人に医薬品とワクチンを」の実現に向け、すべてのWHO加盟国が実施すべき医療システムだからである。そのため、この医療システムの実践を支える理論の誤りを明らかにすることが不可欠であり、それが本書の目的の中心である。

これを改めて強調することは重要だろう。本書を通じて述べる医学界システムの欠陥というものは、「病気」へのアプローチのみを指しており、緊急処置や身体の傷に対する外科的手術には適用されないことだ。ハーバート・シェルトン(Herbert Shelton)は、この区別を次のように説明する。

□「健康維持に役立つ材料と影響だけが、健康の回復に役立つ。この原則に対して衛生学者(Hygienists)が例外とするのは、創傷、骨折、事故、脱臼などに用いる建設的な外科手術である」

本章に含まれるハーバート・シェルトンの引用はすべて、特に断りのない限り、その著書『ナチュラル・ハイジーン:人間の原始的な生き方』[B66]からのものである。

医学界が病気治療や予防に使う材料は、健康維持や回復に寄与するものでないことに留意する必要がある。製薬会社が生産する全医薬品とワクチンは、意図する効果に加え、意図しない効果の誘発が認められている。これら付加的な効果が、通常は重要性が低いかのように「副作用」と呼ばれるが、これは著しく誤解を招く。意図しないとはいえ、これらの作用は実際には直接的な作用である。薬やワクチンの投与後の発生であることから、これらの製品は健康に害を与えるもので、支えるものではないと明確に証明するものだ。また、これらの製品がもたらす害の証拠は、その発生率が増加し続けている「医原性疾患(iatrogenesis)」と知られる現象によっても確認される。

こういった意見があるかもしれない、医薬品やワクチン投与後の副作用発生は、相関関係を示すかもしれないが、因果関係の証拠と解釈すべきでないというものだ。しかし、この主張は正当化できないし、道理にも合わない。すべての医薬品やワクチンが、「副作用」を起こすと認識されている事実により反証できる。したがって、これらの影響の直接的な原因なのである。さらに、医薬品であれ、ワクチンであれ、その化学成分の大部分は、本質的に人体に有毒であり、多くの医薬品は意図的に有毒なのである。例えば、抗生物質や抗ウイルス剤の目的は「細菌」を殺すことであり、がん治療の目的はがん細胞を殺すことである。このような性質の治療は患者にとって有害と知られるが、病気の原因物質を殺せると信じられ、患者を健康に取り戻せると信じられている。

毒が健康を維持する、回復させるとの考え方には根拠が全く無い。毒で身体を健康に戻すことは不可能である。

医薬品は本質的に毒性を持つため、その効果は常に有害である。ハーバート・シェルトンが説明する。

「薬物の身体との関係を研究する唯一の正当なものは毒物学である。薬物の局所的、一般的、相乗的、対立的、治療的、生理学的な「作用」というのは、その「経験的作用」と同様に神話である。薬物の体内蓄積、「副作用」、毒になること、傷害を与えることを我々は否定しない。それ以外の作用を否定しているに過ぎない。

したがって、医薬品が健康に「有益な」効果をもたらすとの考えは、大きな間違いと明らかだ。医薬品が有益に見えるのは、人体の性質と機能を完全に誤解しているからである。本章の後で詳述するように、人体は本質的に機械的なものではない。生きてはいても不活性な機械ではない。それどころか、病気に打ち勝つ能力を持つ唯一の「エージェント」であり、複雑な自己調節機能を持つ生体である。身体の自然状態である健康の回復・維持ができるのは、身体のみである。

問題とは、その本質の十分な理解、根本原因の正しい特定によってのみ解決しうる。この知識が得られれば 、原因に対処する適切な手段を考えて実行することで、問題が解決され、やがて消滅しうるのだ。

医学界が病気問題を依然として解決していないことが明らかだし、残念ながら、問題は解決されようともしていない。それどころか、問題は悪化の一途をたどっている。世界中の大多数の健康状態が、改善どころか悪化しているのだ。

この問題の主な要因の一つは、世界の全人口の健康に対する責任を負っている医学界が、病気とその原因、そして病気の治療と予防の方法について、根本的に誤った信念に基づき運営されていることだ。この誤った信念への固執が重大な障害を永続させている、医学界が病気の本質を完全に理解でき、それにより問題を解決することへのだ。

現代医学が問題を解決できないことは、それが解決しえないことを意味はしない。これを本章での議論で示す。

■■「病気」の本質

「病気(disease)」の医学界の定義は以下である。

□「特定の原因(既知でも未知でも)や認識可能な徴候や症状のある障害」

医学界による「病気」の本質の理解は貧弱であるというのが、本書の核となる主張である。これは疑いなく物議を醸すことだろう。にもかかわらず、これは医学界自身の多くの発言により裏付けられているのだ。例えば、第 7 章では、多くの主要なNCDの正確な原因が不明なばかりか、 これらの疾患の多くの側面の理解が不十分であることを明らかにした。さらに、感染症は解明しているとされるが、第3章での議論は、この主張を著しく覆す多くの異常や矛盾を明らかにし、これらの疾患の多くの側面の解明が不十分であることを明らかにした。

前節で述べた三つの信念に加え、現代医学は二つの哲学的教義を採用している。すなわち、そのメカニズムであり、人間の身体は生きてはいるものの複雑な機械に過ぎないとの考え方である。そして決定論であり、出来事は、ほぼ事前に決定された要因に支配されるとの考え方だ。病気の文脈でこれらの教義が意味するものは、本質的に「不活性」とされる人間の生体は、特定の事前決定要因、特に遺伝子の結果として、あらゆる病気の「実体」に襲われる可能性があり、これらの病気の実体、特に「細菌」に対する戦いは、現代医学の方法と実践により成功できるとするものだ。このことが、1977年の論文『現代医学の欠点。本当に病気を克服できるのか?(Modern Medicine’s Shortcomings: Can We Really Conquer Disease?)』で述べられている。

□「現代医学は、基本的に決定論的、機械論的な疾病観を持ち、個人は自身の病気のコントロールができず、結果、外部エージェントの介入に従わねばならない」

この疾病観は、現代医学の実践を支える信念に沿ったものだが、これにも根本的欠陥がある。

したがって、感染症であれ非伝染性であれ、医学界にあるとされる知識には多くの真の欠落があることが明らかだ。しかし、一般が信じることは、医学研究の結果、十分な情報が蓄積されれば、これらの知識欠落が解消されることだ。しかし、これは誤った信念である。問題の本質の十分な理解のない医療システムのもとで行われる研究では、この欠落は解消されない。

病気は、徴候や症状により識別可能とされるが、特に「感染症」と呼ばれる病気の多くは、同じ症状を伴う。例えば、発熱、咳、疲労、下痢などは、多くの病気に共通する症状である。これらの病気の治療では、薬を用いて患者の症状を緩和する。症状が無くなれば、病気が打倒されたとの考えからだ。しかし、初期治療での症状改善が無い場合、より正確な診断と効果的な治療のため、検査が提案されることがある。このように、病気の正しい認識のための検査が必要な場合があるという事実は、病気には明確な徴候や症状があるとの主張に矛盾するように思われる。

病気の研究は、病理学という科学分野で行われ、医学界による病理学の定義は以下である。

□「病気の性質と原因を理解することを目的とした、病気のプロセスの研究」

しかし、これはかなり誤解を招きやすい。プロセスは作用を伴うが、病理学は効果を研究する学問であって、作用ではない。定義が引き続き次を述べるているようにだ。

□「これは、生きている患者から、あるいは剖検時に得られる血液、尿、糞便、病変組織のサンプルを、X線やその他多くの技術を駆使して観察することで達成される」

このような性質のサンプルの研究には、顕微鏡で観察しやすくするための様々な準備手順が必要になる。これらの手続きの性質を、ハロルド・ヒルマン(Harold Hillman)博士が、2011年の論文『21世紀初頭の細胞生物学は危機的状況にある(Cell Biology at the Beginning of the 21st Century is in Dire Straits)』で述べているので、再度引用する。

□「組織が組織学、組織化学、電子顕微鏡、免疫化学のために準備されるとき、動物が殺され、組織は切り取られ、固定または凍結され、(訳注:何か別の物質に)埋め込まれ、切り取られ、再水和され、染色され、取り付けられ、光が放射され、または電子ビームが照射される」

これは動物組織の研究についての言及だが、人間の患者から得る病気の組織の研究でも同じ、あるいは非常に似た手順が採使われる。しかし、これらの手順や、あるいは染色や固定に使う化学物質が、組織サンプルに直接的に影響し、もはや観察時には明らかに生きていない。さらに、実験器具や実験室そのものは無菌環境であり、組織サンプルが取られた人体内の自然環境とは全く似ても似つかぬものだ。残念ながら、第3章で述べたように、研究者は自らの準備手順が研究対象サンプルにどの程度影響するのか、ほとんど気づいていない。

研究者の中には認める者もいる、このような性質の実験室研究には一定の限界があり、ヒトの病気の関連について導き出される結論には限界があると。しかし、これは極めて控えめな表現だ。それが研究される環境とそれに対する処置の両方によって組織サンプルに生じる変化は、非常に深刻な性質を持っており、深刻な疑問が生じるところである。このような研究が人間の病気の性質や原因について有用な情報を確認できるのかとの疑問である。

この問題は、医学界が機械論的な見方に基づき運営される事実により、さらに深刻になっている。ここでは、病気はそれぞれ固有のものであり、人体に及ぼす影響によって特定できるとされ、機械論的に機能するとされる。もし機械論的な見方が正しければ、各病気の影響は均一で予測可能であり、同じ病気と診断された患者はすべて全く同じ症状を示すはずだ。同様に、同じ病気の患者は、薬であれワクチンであれ、同じ治療に対して全く同じ反応を示すはずだ。しかし、これは現実を反映していない。現実の世界では、同じ病気と診断された人が示す症状の性質や重症度が異なるだけでなく、同じ薬に対する反応にも大きなばらつきがあり、ワクチンに対しても広範囲の反応がある。したがって、機械論的な見方は、病気の性質や人体の機能を正確に表現するものではないと明らかだ。

疾病研究の大部分は非生体サンプルで行われるが、生体サンプルで行われてきたものもわずかにあり、それらは有用な知見を生み出している。特に細胞やバクテリアの研究から得られた最も重要な知見は、これらの生きたサンプルがその環境の影響をどの程度受けうるかである。

先述したように、バクテリアは環境の変化に応じてその姿を変える能力を持つことが示されている。これは「多形性(pleomorphism)」と呼ばれる現象である。このことは、ブルース・リプトン(Bruce Lipton)博士が書籍『「思考」のすごい力 心はいかにして細胞をコントロールするか 』[B45](邦訳:PHP研究所)で、生きた細胞を使った実験について述べている。

□「細胞に健康的な環境を与えると細胞は繁栄し、環境が最適でないときは衰えた。環境を整えると、これら『病んだ』細胞は活性化したのだ」

環境が人の健康に与える影響については、先に引用した『健康的な環境』[R6.1]報告書においても、医学界は認めている。

ここでいう「環境」とは、明らかに「外部」環境のことだが、生物の健康は「内部」環境の状態にも影響される。内部・外部を問わず、環境のあらゆる側面に悪影響を及ぼしうる物質や影響はすべて、それに曝露する生物の健康に悪影響を及ぼす。したがって、有害な物質や影響が不健康の原因であるばかりでなく、現実には病気の主な原因の一つであると明らかだ。

病気の原因の議論はこの節の目的ではなく、それらは本章の後で行う。その後の議論では、「病気」と呼ばれる現象の本当の姿を考察する。

「オッカムの剃刀」と呼ばれる哲学的原理が提案するのは、ある現象について様々な説明があるとき、最も単純で、最も少ない仮定を含むものが最も正しい可能性が高いというものだ。この原理を「病気」の様々な説明に適用し、どれがこの現象に最もふさわしいか判断する。

より詳細に検討すべき最初の説明としては、「現代医学」によるものである。医学界の定義によれば、「病気」は次のように説明される。

□「あらゆる身体の異常、あるいは適切に機能しない状態」

一見単純に見えるが、この説明が基づくのは、次の基本的信念である。身体の異常や機能不全は、固有の疾患実態を示すものであり、それが身体を攻撃し、識別可能な徴候や症状を作りだすと。これが真実だとされるものの、この信念は、仮説の集まりである。つまり、何千とは言わぬまでも、何百という異なる病気があり、それぞれが特有のやり方で身体に影響を与え、認識できる徴候や症状を引き起こすというものだ。

人が様々な症状の組み合わせを経験しうることには議論の余地が無い。しかし、様々な複合症状の存在や、それぞれに特定のレッテルが貼られる事実は、個別の疾患実態が存在するとの反論の余地のない証拠とはならない。先述したように、同じ病気の診断でも、その症状の性質や程度には大きなばらつきがある。このばらつきは、それぞれの病気が明確で容易に認識可能な症状があるとの想定に対する重大な挑戦となるものだ。

医学界は、病気には感染性(infectious)と非感染性(non-infectious)の二つの形態があるとし、後者は通常、非伝染性(noncommunicable)と呼ばれる。ある病気を感染性とする考えが基づくのは、病原微生物が体内に侵入し、感染して病気を起こすことである。また、「細菌」は人の間で伝染すると主張される。一般に、現代医学の信奉者は、この説が疑いなく確立済とするが、そうではない。前述したように、感染症の説明には多くの異常がある。一つは、「感染」が必ずしも症状を伴わないこと、もう一つは「感染」後に必ずしも病気が発生するとは限らないことである。また、感染者が自身の「細菌」を他人に感染させるとは限らないとの異常もある。これらの異常は未説明のままであり、「感染症」理論の前提を覆すものである。

さらに、これらの疾患の他多くの側面も未解明のままである。例えば、医学界は全く説明ができない、微生物が病気を起こすメカニズム、重症度の異なる様々な症状を引き起こし、死に至らしめるメカニズムである。これらの説明が無いことは、微生物が病気を起こすとの主張の信憑性に対するもう一つの直接的な挑戦である。

これらの異議申し立ては、第3章での議論と同様、「細菌論」に対する明確な反論であり、「感染症」と呼ばれる現象の存在を否定するものとなっている。

非伝染性疾患(NCD)の説明には、未知で理解の不十分な部分を多く含むと認められているが、そこにもいくつもの前提がある。その一つは、「遺伝的要因」が大きな役割を果たすといもので、これによりNCDを発症したり、NCDで死亡するリスクが高まるという。言い換えれば、ある遺伝子を持つ人が、例えば、がんのような特定の疾患発症の 「遺伝的素因」を持つことが事実とされる。しかし、これは事実ではない。遺伝子が決定要因との考えは、先述したように、ヒトゲ ノムプロジェクトにより根拠の無いことが証明済だ。

遺伝子が人の健康状態を決定するとの考え方は、エピジェネティクス分野の研究によっても否定されている。これを、リプトン博士が『「思考」のすごい力』[B45]で取り上げている。彼は説明する、遺伝子は生物を支配していない、つまり、人はいかなる病気に対しても「遺伝的素因」を持たないとする。そして、以下を述べる。

□「この10年、エピジェネティックの研究により、遺伝子により受け継がれるDNAの設計図は、出生時に固定しているわけでないことが立証された。遺伝子は運命ではない」

これらの新たな研究成果の重要性にもかかわらず、WHOはNCDに関するファクトシートを修正せず、2018年6月版では、これらの病気が「遺伝的要因」を含む様々な要因の組み合わせで生じると主張し続ける。

個別のNCDについては第7章で説明したが、人は複数の慢性疾患に罹患しうる。同じ患者での二つ以上の慢性疾患の併存は、多重罹患(multimorbidity)と呼ばれる現象であり、その発生率増加が認められている。2016年の論文『多重罹患:我々の知ること、知るべきこと』[R10.1]が述べる。

□「複数の慢性疾患に罹患する人(多重罹患)が世界中で激増している」

また、多重罹患有病率の増加は、2016年のWHO報告書『多重罹患』[R10.2]でも認識されており、次を述べる。

□「長期にわたり疾患のある人は、単一ではなく、複数の疾患を抱えていることが多い。このような多重罹患は、一般的であり、近年、有病率が上昇している」:

この声明は非常に重要だ。世界中の人々が健康状態の改善を実感していると主張する、2017年の最新版『世界の疾病負担(Global Burden of Disease(GBD))』報告書とは矛盾するからだ。2018年11月のランセットの論説『GBD 2017:もろい世界』[R10.3]は、過去10年間のGBD報告書は以下であったとする。

□「かつてなく健康な世界を描き出していた」

2016年のWHO報告書[R10.2]では、多重罹患増加について、寿命の延長に関係すると説明されている。65歳以上に多く見られる現象だからだ。しかしその一方で、次も述べている。

□「多重罹患患者の絶対数は、65歳未満でより多いことが判明している」

しかし、高齢者に多いとはいえ、多重罹患は加齢に伴う必然的な結果ではない。

医学界は、個々の慢性疾患に関する知識欠落を認めており、したがって、多重罹患の知識欠落も当然である。これらの欠落は、Academy of Medical Sciencesの2018年報告書『多重罹患:グローバルヘルス研究の優先事項』[R10.4](以下、AMS報告書と略記)で認識されており、以下を述べている。

□「多重罹患は、増加中の世界的健康課題であると一般に認識されているが、我々の知識には大きな欠落が残っている」

知識欠落の理由の一部としては、不十分な研究とされる。報告書は述べる。

□「若年層や低・中所得国に住む人々の多重罹患に関する研究が特に不足している」

研究不足は、確かに問題の広がりの理解の妨げになるが、研究増加は、存在理由の説明の助けにはならず、解決にもならない。その大きな理由としては、医学界による病気治療の典型的なアプローチの変更にはつながらないからだ。

単一の慢性疾患と診断された患者には、その疾患の治療に適切とされる薬が処方される。そのため、複数慢性疾患との診断の患者には、各疾患に対して適切とされる複数の医薬品が処方される。このように、複数疾患治療のために複数医薬品を使うことを、多剤併用(polypharmacy)と言う。しかし、先述したように、すべての医薬品は意図しない副作用をもたらすことが知られる。つまり、複数の医薬品を服用する患者には、必ず複数の副作用が生じる。この事実が、2015年3月のBMJの論説『ガイドライン、ポリファーマシー、多重罹患に伴う薬物間相互作用』[R10.5]でも認めており、次を述べる。

□「多剤併用の一般的結果の一つとしては、薬物有害反応の割合が高いことだ」

さらに、多重罹患診断の人々は、様々な慢性疾患の組み合わせに悩まされうる。『AMS』[R10.4]報告書は述べる。

□「最も一般的に発生する病態群のデータは限られる一方、多重罹患は非常に異質であり、患者は様々な病態の組み合わせを経験しうると認められている」

多重疾患の患者は、様々な薬の組み合わせで治療される。各薬は、各病気に関連する身体の異常や機能不全を標的として、修正する能力があるとされる。しかし、この主張には根拠がない。薬がもたらす効果が、身体の様々な部位で起こり、特定の標的部位には限定されない。したがって、複数医薬品の使用は、身体の複数部位に複数の効果を生じさせうる。先に引用した2015年のBMJ論説[R10.5]にあるとおりだ。

□「薬物には特定の薬物標的をはるかに超える効果ネットワークがあり、特に多重罹患の患者ではその効果が顕著である」

主な問題としては、複数慢性疾患の患者に処方されうる複数の組み合わせにおいて、医薬品の有効性、安全性、潜在的な有害作用が、ほぼ未試験であることだ。『AMS』[R10.4]報告書が説明する。

□「すべての医薬品は厳密に試験されるが、特定の疾患に関する臨床試験には、通常、他疾患の患者は含まれない。つまり、多重罹患患者における複数医薬品の協調作用の仕方を示す良い証拠はない」

大多数の薬の組み合わせが未検証のままの理由の一つは、2018年の記事『人工知能がスタンフォード大学のコンピューター科学者を支援し、何百万もの薬の組み合わせによる副作用を予測することに成功』[R10.6] が示唆しており、次を認めている。

□「何百万人もが一日に五種類以上の薬を服用するが、そのような組み合わせの副作用を調べるのは非現実的だ」

このような大規模検査は「現実的ではない」ため、多重罹患患者は、複数の慢性疾患の特定の組み合わせの治療として処方された複数の医薬品の結果として、経験しうるあらゆる「副作用」の情報を、たとえあったとしても、ほとんど得ることができない。

また、一つの病気の治療に複数の薬が使われることもある。例えば、結核の治療では、複数の抗生物質の使用が推奨される。このような現象を「多重薬理(polypharmacology)」と呼び、これもますます一般的になってきている。

一つの疾患の治療に複数の薬が必要とみなされる理由は、2014年の論文『臨床的副作用に基づく薬剤の組み合わせの系統的予測』[R10.7]で説明されている。

□「特に複雑な疾患に対しては、限られた効果しか示さないことがある」

単剤での「効果が限定的」なため、複数薬剤使用の最も良くある疾患としては、バクテリアが起こすと言われるものだ。抗生物質の単剤が効かない理由は、バクテリアによる「耐性」獲得とされる。しかし、MDR-TB(多剤耐性結核)という現象が示すように、必ずしも複数抗生物質の使用がより効果的なわけではない。しかし、健康に深刻な脅威をもたらすと認識される、「薬剤耐性」を獲得したとされる微生物はバクテリアだけではない。2018年2月のWHOファクトシート『抗菌薬耐性(Antimicrobial resistance)』[R0.1]が示すとおりである。

□「世界の公衆衛生にとって、ますます深刻な脅威となっている」

この主張は、第3章で述べた理由により、誤解を招く恐れがある。

本書での議論は、医学界が流布する病気の説明が、非常に深い性質の問題をはらむことを示すものだ。これが、その基礎理論の信憑性に疑問を投げかけ、そして、これらの説明が、オッカムの剃刀の基準「最も正しい可能性が高い」を満たせるのか、疑念を抱かせるものである。この問題が、必然的に、この基準をより満たせる別の説明が存在するかとのさらなる疑問を提起する。

「主流」から外れた医療は、一般に「補完代替医療(CAM)」と呼ばれる。しかし、「現代医療」の支持者は、こうした医療を「非正統的」と否定し、非科学的、疑似科学、疑似医療、偽医学との蔑称で呼ぶのが常である。

これらのCAM医療システムには、様々な実践が取り入れられているが、良く類似したアプローチが採用される。例えば、多くの場合、「自然」物質を薬として使い、病気というよりも、むしろ患者を治療する。このアプローチは、医学界のものより望ましいと考えるかもしれないが、それでも同じ理論的基盤を持つ。つまり、区別可能な様々な病気があり、 ある種の病気は「細菌」により起こされ、病人は、何らかの薬による治療のみで健康を取り戻せるというものだ。しかし、この理論には欠陥がある。この理論に基づくアプローチを採用する医療システムは、明らかに医学界が遭遇する問題と同じか、少なくとも非常に類似した問題に直面することになる。したがって、これらのシステムは、「病気」に関して、医学界のそれよりも信頼に足る説明はできない。

しかし、病気、原因、治療法について異なるアプローチで取り組む「非主流派」の医療システムも存在する。その最も著名なものが、19世紀に発展したナチュラル・ハイジーン(Natural Hygiene)である。初期の実践者には医師資格を持つ者もいたが、ナチュラル・ハイジーンの先駆者たちは、近代医学の採用するアプローチを否定した、特に毒性を認められる「薬」の使用、実験室内での病気の研究についてである。ナチュラル・ハイジーンの生涯の実践者であるハーバート・シェルトンは、次を説明する。

□「近代の先駆者たちは、正統派のワンパターンから離れ、軽蔑される場所での真実探求を恐れない優秀な人たちだった。しかし、彼らは浮世離れした研究室内の人たちではなかった」

病気の本質理解のため、彼らは「自然法則」と、その健康への応用を研究した。この先駆者たちの長年にわたる研究により、彼らやそれに続く多くの人々は理解するようになったのである。つまり、「病気」とは身体を攻撃する実態ではなく、有毒な「薬」で戦い破壊する必要など無いことだ。「現代医学」に携わる同時代人から嘲笑を浴びながらも、正統派からの脱却により、身体の本質について全く異なる理解を得ることを可能にした。つまり、「自然の法則」に従って全体的(holistically)に機能する生命体であることの認識である。そしてまた、身体の機能を乱すものは全て健康に悪影響を及ぼすことも発見した。ハーバート・シェルトンが説明する。

□「人間の生体は不可分の全体であり、その構造やあるいは能の統一性を阻害する傾向のあるものはすべて、病気の原因因子となる」

したがって、ナチュラルハイジーンが提示する病気の説明は、次のように明確に表現できる。「病気」とは、身体が適切に機能する能力に対する障害であり、「症状」とは、有害な物質や影響に対する身体の反応の現れであり、そこには、毒素を排出し、損傷を修復し、身体を本来の健康な状態に戻すための作用が含まれる。

この新たな説明の信憑性は、嘔吐と下痢という二つの症状で示される。医学界の見方では、これらの症状は「病気」を示しており、しばしば誤って「細菌」に起因するとされる。しかし、その重症度は大きく異なるのだが、病原体がどんなメカニズムで症状を起こすのか、何の説明もされていない。しかし、このような症状は、病気に関する新たな説明の文脈で完全に説明可能である。つまり、消化器系の有害物質に対する身体の反応と、それを排出するこころみとしてである。ハーバート・シェルトンが説明する。

□「毒が胃に取り込まれる。生体は使用不可能な有害物質を感知し、それに応じた行動の準備を行う。これは嘔吐によって送り出されるか、消化管に沿って大腸に送られ、激しい下痢によって排出される」

排出すべき有害物質の影響を受けるのは、消化器系だけでないことは明らかだ。有害物質は、吸入、皮膚からの吸収、皮内および筋肉内注射によっても体内に入る可能性がある。毒素が体内に入る経路により、影響を受ける組織や臓器が決まり、その排出のために身体がどのような反応を示すかが決まる。例えば、大気汚染物質を吸入すると、呼吸器系に大きな影響を与える。吸い込んだ毒素を排出しようとする身体の働きには、くしゃみや咳といった症状があり、これは喘息などの呼吸器系「疾患」の典型的な症状のひとつである。有毒刺激物の吸入と喘息の関連性は第7章で述べたとおりだ。

第6章の議論で完全に明確にしたように、人々が日常的に様々な組み合わせで曝露する有害物質や影響は膨大かつ多種多様である。しかし、これらの「毒」は、消化器官に入るもののようには、常に、あるいはすぐに簡単な方法で排出されるわけではない。例えば、ダイオキシンのように、生物濃縮により排出されにくい毒物もある。しかし、このような性質の毒素を、身体が排出する力がないとの意味ではなく、それどころか、身体は多くの自己防衛メカニズムを持っているのである。ハーバート・シェルトンが説明する。

□「毒物が体内蓄積し、生命の危険になると、身体は排除しようと激しくこころみる。そして、痛み、炎症、発熱など、急性疾患の一群が発生する」

上に声明に急性疾患という言葉が使われたことを、病気の種類が明確に分かれていることを認めたと解釈してはならない。それは彼の言わんとすることではない。この用語は、発熱、くしゃみ、咳、嘔吐、下痢などの自然治癒的な症状を伴う短期間の疾患を表すのに使われており、これらはすべて、有害物質や影響に対する身体の反応と排出するこころみを明らかに示す。ハーバート・シェルトンが説明するように、「急性疾患」との言葉は次を指す。

□「生体組織や器官の一部または全部において、有害物質や影響に抵抗して排出し、損傷を修復する生命の作用」

身体が「有害物質」を排出すると、これらの生命活動、つまり症状はおさまり、やがて停止する。しかし、症状が止まったといって、すべての有害物質が排出されたと解釈してはいけない。毒素排出、損傷修復、健康に必要な生命活動は、生涯を通じて継続するプロセスである。ハーバート・シェルトンが説明する。

□「生体である限り、蓄積毒素を排出しようとするシステムの苦闘は続く」

したがって、蓄積された毒素のレベルが高いほど、除去するこころみが必要となることが明らかだ。毒素と除去については、本章の後で詳述する。

残念ながら、有害物質への抵抗と排出という生命活動を、薬で「治す」べき症状と解釈してしまうのだ。しかし、医薬品や多くの「自然」薬は、身体が有害と認識する物質を含むため、適切な生命活動により排出される必要があるが、その作用が、さらに別の病気の症状として解釈され、治療が必要となる。これが不可避的に、病気と治療の悪循環に導く。そして、その結果、一連の「急性疾患」から、通常「慢性疾患」と呼ばれる、より深刻な状態へと進行していく。ハーバート・シェルトンが説明する。

□「子供はよく風邪をひく。咽頭炎、扁桃腺炎、気管支炎、肺炎を発症し、すべてが治ってもすぐに別の風邪、別の扁桃腺炎、別の気管支炎と続き、この過程は肺の慢性疾患に発展するまで続く」

慢性疾患は、急性疾患に比べると、常に長期に渡り、はるかに深刻な健康問題を示唆している。したがって、慢性疾患は非常に異なった症状を伴い、そのほとんどは明確に毒素排出のこころみは示されない。しかし、これらの症状は、身体が自身を守り、損傷を修復し、健康を回復しようとする努力の表れである。つまり、「新たな」病気の説明は、慢性疾患にも同様に適用でき、その症状は、正常機能の能力に対する障害を示すものである。例えば、心血管系疾患は、心血管系の機能不全を示す慢性疾患群である。

慢性疾患関連症状の本当の機能を、炎症を例として示すことができる。炎症は、傷害への身体の反応と認められているが、医学界は、主要NCDを含む多くの慢性疾患の主原因と誤って主張している。そして、炎症は深刻な症状で、NSAID(非ステロイド系抗炎症薬)のような抗炎症剤で抑える必要があるとされる。しかし、これは炎症の役割の誤った理解に基づく。炎症は、怪我や傷に対する身体の反応であるとともに、その損傷の修復メカニズムの一つでもある。ハーバート・シェルトンは、これを「治療的作用(remedial action)」と表現する。怪我や病気における炎症の目的は、血液供給増加により、患部への修復物質供給を増加することだ。損傷が修復されれば、血液供給は正常に戻り、炎症は収まる。炎症の継続は、損傷が完全修復されていないことを示すが、本節で後述するように、他の理由で炎症が長引くことがある。

本書の多くの議論において、医薬品は、その全成分とは言わずとも、いくつかの成分の性質上、本質的に有毒と示してきた。しかし、この毒性は事実上常に意図的である。医薬品の「活性」化学成分の主な目的は、病気に打ち勝つこと、あるいは細菌を殺すことなのである。しかしながら、その毒性にもかかわらず、医薬品には健康回復能力があると信じられている。同様に健康を取り戻すとされる多くの「自然」薬もまた、有毒成分を含むことに注意しなければならない。

医薬品であれ自然物であれ、薬がその目的を達成するとされる主な理由の一つは、「薬」により症状が軽減した、完全に止まったとさえ人々が報告するからだ。そのため、病気「回復」を薬の作用に帰すが、これは見当違いである。しかし、これは見当違いである。いかなる薬であれ身体を治す能力はない。この能力を持つ唯一の「主体」は身体そのものである。病気からの回復は、身体の本来持つ自己回復メカニズムによる。ハーバート・シェルトンが説明する。

□「こうした抵抗と排出の過程、損傷の修復過程が、薬物の作用と間違われてしまう」

ナチュラル・ハイジーンの初期実践者の、正統派からの最も大きな脱却としては、「現代医学」の基礎となる信念、特に薬が病気を治すとの信念の否定にある。特に、これら実践者の多くが、主流医学システムにて資格を得たものの、そのシステムの欠陥を認識し、それを拒否した医師だったことは注目に値する。その研究によって彼らが導かれ、発見したことは、「自然の法則に従うこと」が、健康を得る唯一の方法だった。そして、このアプローチを自身の治療に取り入れたのである。ジョン・ティルデン医学博士は、その著書『毒血症解説』[B78]の中で、「薬」の使用と、その後の使用を控えた経験について述べている。

□「私は25年のあいだ薬を使用し、33年間使っていない。薬が不要であり、ほとんどの場合には有害という私の信念は、真実を知りたい人々にとって価値があるはずだ」

したがって、ナチュラル・ハイジーンの提示する病気の説明を、オッカムの剃刀の文脈で検討することが適切だろう。先述したように、この「新たな」説明では、「病気」とは身体が適切に機能する能力に対する障害であり、「症状」とは有害物質や影響に対する身体の反応の現れであり、毒素排出し、損傷修復し、自然の健康状態に戻すための作用があるとされる。

この「新たな」説明では、その単純さと前提条件の不在に加え、医学界の説明により提起される多くの異常を払拭している。例えば、同じ病気とされる人の経験する症状の異なる性質や深刻さについては、それらは同じ病気ではなく、異なることはもはや異常ではない。各個人が経験する様々な症状は、その人の「内部環境」の条件に対する身体の反応の現れである。これは、「病気」の原因に関する後の節で述べる。さらに、この「新たな」病気の説明は、未知のプロセスの前提条件に依存しない。例えば、「細菌」が様々な症状を起こせるメカニズムがある。

この「新たな」病気の説明は、最も単純で、前提条件が最も少ないと明らかだ。したがって、オッカムの剃刀によれば、この説明が正しい可能性が最も高いことになる。この説明の正確さは「ありそうな」だけでなく、後述するように、膨大で増え続ける科学的証拠に完全に合致することを示せる。

ナチュラル・ハイジーンの提示する病気の「新たな」説明が、本章の議論の基礎であるが、いくつかの詳細に関して本書は相違点を提示することに留意されたい。例えば、本書の議論では、「細菌」は病気において何の役割も無いことを示したが、ナチュラル・ハイジーンの支持者たちは、わずかだが、細菌が二次的役割を果たす可能性を示唆している。さらに、この最終章での議論で提供することは、病気の性質とそのプロセスのより完全な説明、病気発症に寄与する全要因である。

この「新たな」病気の説明は、正統派とそれとの相違のために物議を醸すだろうが、事実上すべての病気のプロセスに関する科学的研究の結果により裏付けられる。その主な主張のひとつは、個別の疾患実体というものが存在しないことだ。従来、様々な異なる「病気」と呼ばれるものは、実際には、身体の正常機能に何らかの障害が生じ、それが様々な症状として現れるに過ぎないものである。区別可能な疾患実体は存在しないとの考え方もまた物議を醸すかもしれない。それでもなお、すべての「病気」に共通な基本的メカニズムを示す証拠が増えつつあり、その裏付けとなっている。

この共通メカニズムとは、酸化ストレスである。2000年6月の論文『フリーラジカルの発生と酸化ストレス』[R10.8]には、次のようにある。

□「おそらく、ヒトの病気における酸化ストレスの役割に関して、最も注目すべき観察は、その共通性である」

フリーラジカルは、細胞代謝(訳注:細胞内で起こる化学変化)など、身体の正常なプロセスにより生成される。しかし、これらの分子は不対電子を持つため、反応性が高く、潜在的に危険である。抗酸化物質による還元がされないと、周囲の細胞に深刻なダメージを与える可能性があるためだ。体内の酸化ストレスの存在が示すことは、過剰なフリーラジカルがあり、それが細胞を傷つけ始めていることである。細胞の損傷は、「病気」の一般的特徴でもあることに注意してほしい。

異なる現れ方ではあるものの、すべてではないにせよ、ほとんどの非伝染性疾患において、酸化ストレスが共通基盤メカニズムであることを発見する研究が増えてきていることが、『 イントロダクション:酸化と炎症、非伝染性疾患の分子的関連性』[R10.9]で述べられている。

□「最近の調査が示すことは、これらの疾患の多くが、共通の病態生理学的メカニズムを持つことで、少なくともその一部では、似たような分子変化が、異なる臓器において異なる発現をすることである」

病態生理学とは、病気の結果として起こる機能的変化を研究する学問である。

この論文は、さらに述べる。

□「ミトコンドリアの変化、酸化ストレス、炎症は密接に関係しており、非伝染性疾患の発症・進行に大きな役割を担っている」

ミトコンドリアの変化や機能障害は、酸化ストレスやそれに伴うフリーラジカルによるダメージの結果、起こり得ることに留意すべきである。

炎症は、多くの主要NCDの重要な側面だが、医学界が示唆するような因果関係ではない。むしろ、炎症を引き起こすのは、実質的に全NCD共通の根本メカニズムである酸化ストレスである。これを、2014年の論文『炎症過程における酸化ストレスの役割』[R10.10]が示す。

□「近年、酸化ストレスが炎症の発生と持続に重要な役割を果たすとの証拠が現れている」

この節の以前に述べたように、特にダメージを受けた特定の臓器や組織で炎症が持続することがあるが、その理由は、根本原因である酸化ストレスの持続にある。

NCDにおける酸化ストレスとフリーラジカルによるダメージの共通点は、2014年の論文『炎症、フリーラジカルによるダメージ、酸化ストレス、そしてがん』[R10.11]が示すように、がんにも当てはまるとされる。

□「腫瘍細胞は通常、酸化還元(redox)状態がアンバランスである」

Redoxとは、Reduction-Oxidationの略で、酸化還元を意味する。酸化還元状態は、酸化剤と抗酸化剤のバランスである。

第7章における、がんに関する議論では異数性とがんの関連に言及したが、それに加え、異数性とがんが酸化ストレスに関連する相当量の証拠がある。このことは、すべての病態に関与するプロセスやメカニズムの共通性を示すさらなる証拠となり、病気の「新たな」説明の真実性をさらに示すものだ。

酸化ストレスは主に非伝染性疾患と関連するものの、「感染性疾患」との関連も20年以上前から認識されている。これが、1995年の論文『HIV感染症における酸化ストレスの役割』[R10.12]に示されている。

□「無症状のHIV感染者の発症初期には酸化ストレスの徴候が認められる」

医学界は、フリーラジカルの機能の一つとしては、「病原性微生物」の攻撃から身体を守ることと主張する。しかし、これは明らかに誤りだ。もし正しければ、酸化ストレスとHIVその他の「細菌感染」は共存しえない。侵入した病原体はフリーラジカルにより破壊されるはずだからだ。これは、病気の「細菌論」の文脈における、さらにもう一つの異常である。しかし、この異常は「新たな」病気の説明により排除される。この説明では、「細菌」への言及は一切なく、酸化ストレスとフリーラジカルによるダメージの役割を完全に認めている。

また、寄生虫が原因の感染症でも酸化ストレス発生が確認されており、2012年の論文『寄生虫の侵入におけるフリーラジカルの関与』[R10.13]には次が記されている。

□「寄生虫に感染したヒトや動物における酸化ストレスの存在が、いくつかの研究で報告されている」

この「蔓延」には、マラリアの原因とされる寄生虫も含まれている。2012年の論文『マラリアにおける酸化ストレス』[R10.14]では、さらにもう一つの知識欠落を認めている。

□「この危険な病気根絶の多大な努力にもかかわらず、生理病理学の完全な知識の欠如により、この事業の成功が損なわれている」

これらの論文はいずれも、酸化ストレスが「感染症」により起こるとするが、フリーラジカルの目的は「感染症」からの身体の防護という主張とは完全な矛盾である。さらに、「感染症」が酸化ストレスを起こすとの主張にもかかわらず、医学界はそのメカニズムを理解していない。これが、2017年の論文『感染およびその結果の疾患における酸化ストレス』[R10.15]に示されており、ここでは、多くの「感染症」で酸化ストレスが存在するとの「圧倒的証拠」に言及しつつも、以下を述べる。

□「大多数の感染症病原体が宿主の酸化還元システムに与える影響は十分には明らかにされておらず、発表されたデータも物議を醸している

残念ながら、「微生物は病原体である」と医学界が信じ続ける限り、この論争は続くだろう。

もう一つの、特に重要な発見としては、酸化ストレスとその結果生じるフリーラジカルによるダメージは、病気を起こすすべての「物質と影響」が、その有害作用をもたらす共通メカニズムであることだ。毒性物質と酸化ストレスの関連は、1995年の論文『毒性と疾患におけるフリーラジカルの役割』[R10.16]が示すように、20年以上前に認識されていた。

□「多くの生体異物(xenobiotics)の毒性は、フリーラジカルを形成する外来化合物の代謝的活性化に関連している」

Xenobioticsとは、身体にとって異物となる物質のことで、医薬品を含む合成化学物質を指す言葉として一般に使われる。

医薬品が「生体異物(xenobiotics)」のカテゴリーに含まれることは、そのの裏付けとなる、身体が「医薬品」を毒性「異物」として認識し、排出される必要のあることだ。医薬品が、健康を増進するよりむしろ害となるという主張は、あらゆる毒素が害になるのと同じメカニズムを、医薬品が生み出すとの認識により立証されるのである。言い換えれば、医薬品もまたフリーラジカルの発生を増加させる。このことは、上に引用したマラリアについての論文[R10.14]で示されている。

□「(病気治療に使う薬剤は)フリーラジカルの産生を誘発する」

フリーラジカルは通常の代謝機能により生成されるが、身体それ自身にフリーラジカルのダメージから身を守るための生得的メカニズムが備わっている。2008年の論文『疾病と健康におけるフリーラジカルと抗酸化物質』[R10.17]が示す。

□『人間の身体には、抗酸化物質を生成して酸化ストレスに対抗するメカニズムがいくつかある」

しかし、これらの保護メカニズムの適切な機能のためには、その必要とされるすべての材料が供給されねばならない。多くの抗酸化物質は食事から摂取されるが、一部は内因的に生成される。しかし、フリーラジカルのダメージから身体を守るためには両者が必要だ。論文は述べる。

□「内因性および外因性の抗酸化物質は、ROSやRNSによる損傷を防止・修復する『フリーラジカル・スカベンジャー(清掃人)』として作用する」

ROSは活性酸素種、RNSは活性窒素種である。

本節の議論では、「病気」は身体を攻撃する実体ではなく、共通する根本メカニズムを持つ機能不全を表すものと示した。したがって、この「病気」の統一性は、「新たな」病気の説明と呼ぶものに完全に一貫性があると示しうるが、実際には、今や病気の本質を表すものであり、したがって唯一の説明と認識されるべきものである。

身体は健康維持能力を備えるものの、生来の自己防衛と治癒のメカニズムは、「自然法則」を守り、サポートされてのみ、その効果を十分に発揮することができる。この「法則」の要求事項としては、有害物質や影響への曝露を最大限避けるか、完全には不可能なときは最小限に抑制することである。加えて、この「法則」は、食物として摂取する物質への注意を要求する。「栄養」の重要性を強調し過ぎることはない。

健康を支える要因の十分な知識が無ければ、より自然法則に従うことはできず、健康阻害要因の十分な知識が無ければ、それを避けることはできない。「身体活動」の役割を簡単に説明した後、上記要因を本章の残りの節の話題とする。

■■■フィットネスとエクササイズ

2018年2月のWHOのファクトシートで『身体活動(Physical activity)』[R0.1]は、次を述べている。

□「身体活動不足は、世界的に死亡の主要リスク因子の一つである」

さらに、「重要な事実」の一つとして、次を主張する。

□「世界的に、成人の4人に1人が十分な活動をしていない」

これは非常に大胆な主張だ。特に、健康データの収集システムが不十分とされる国に世界人口の大多数が住むという事実を考慮すればだ。

WHOが成人人口の低い身体活動量を懸念するのは、「身体活動不足」がNCDの発症や死亡のリスクを高めるとの考えに基づく。ファクトシートが述べる。

□「運動不足は、心血管疾患、がん、糖尿病などの非感染性疾患(NCD)の重要なリスク因子である」

低い身体活動量がNCD診断と相関すると観察されてきたかもしれないが、これは因果関係を証明するものではない。前節の議論では、酸化ストレスがあらゆるタイプの疾患、特に慢性疾患の根本メカニズムであることを示した。

因果関係があるとの考えを流布しようとしているが、運動不足が単独で酸化ストレスを生じさせたり、何らかのNCDを引き起こすとの証拠はない。にもかかわらず、因果関係があるとの主張に基づき、医学界は身体活動増加のもたらす健康上利点の促進努力を強めている。その主要部分としては、『身体活動のグローバルアクションプラン 2018-2030年(The Global action plan on physical activity 2018-2030)』という、WHO主導のイニシアティブの立ち上げであり、これには2018年6月の『より健康的な世界のため、より活動的な人々を』報告書が含まれ、ファクトシートの情報を発展させて次を述べている。

□「あらゆる形態の身体活動は、定期的に、十分な期間と強度で行われれば、健康上の利益をもたらすことができる」

一定レベルの身体活動の利点は議論の余地がない。そこには、運動能力、柔軟性、スタミナの向上などがあり、これらはすべて「フィットネス」の側面であり、全体的幸福を向上できる。しかし、WHOは身体活動と健康を誤って同一視しており、それはファクトシートの主張が示すとおりだ。

□「身体活動には大きな健康利益があり、NCDの予防に寄与する」

この主張が誤解を招くことは、二大非感染性疾患であるCVD(心血管疾患)とがんにより、悲劇的な死を遂げたアスリートの数多くの例からも明らかである。最も重要な点は、これらのアスリートの相当数が非常に若く、しばしば20代または30代で死亡していることだ。つまり、高度な身体活動によって健康利益を得ることも、早死を避けることもできなかったのである。

成人の突然の予期せぬ死は「心臓突然死」(SCD)と呼ばれる現象として認識され、2016年12月の論文『心臓突然死の臨床的視点』[R10.19]で次の定義がされている。

□「症状発現後1時間以内に発生した心因性疾患による死亡」

論文では、一般人の「スポーツ関連死」の割合を論じているが、次のコメントを添える。

□「スポーツ関連突然死率は、エリートアスリートにおいて高い」

残念ながら、この論文では、エリートアスリートの心臓疾患での突然死割合が一般人より高い理由は説明されていない。しかし、この発見は、身体活動よりもむしろ身体的不活動が心臓問題での死亡リスクを高めるというWHOの主張とは真逆である。

先述したことだが、心臓が電気的に機能することは、NHLBI(米国立心肺血液研究所)のウェブページ『突然の心停止』[R10.20] でも認めており、次を述べている。

□「心臓には、心拍数とリズムを制御する電気システムがある。これに問題があると、不整脈と呼ばれる不規則な心拍を起こしうる」

興味深いことに、先に引用した2016年12月の『心臓突然死』論文[R10.19]には、次の記述がある。

□「病理学的・毒性学的評価が陰性のSCDは『不整脈性突然死症候群』と呼ばれる」

以前に議論したように、「突然死」というのは症候群ではない。

すべての電気機器、電子機器、無線通信が作り出す「不自然」な電磁放射の健康悪影響は既に議論してきたが、本章の後半でさらに議論する。しかし、加熱が起こるレベルよりはるかに低いレベルの電磁波曝露による深刻な健康被害を、医学界が認めないことを強調することは重要だ。


NHLBIのウェブページでは、突然の心停止(SCA、sudden cardiac arrest)の場合、既往症の有無は問わないとの極めて興味深いコメントがあり、以下を述べる。

□「健康そうに見え、心臓病その他のSCAリスク因子の無い人にも起こりうる」

心臓の持病の不在から、疑問が生ずるのは必然だ。これらの突然の心臓疾患や死亡の真の原因は何なのか。

医学界が主張する「突然の」心臓疾患の理解には、多くの重要な知識欠落を残すことが明らかだ。それまでは健康だった若い成人、特に極めて「身体的に活発」なアスリートの突然死現象は注目に値する。しかし、この現象は、病気についての「新たな」説明と、身体の正常プロセスに特に言及する人間生物学の理解との観点から完全に説明可能である。身体の主要プロセスの一つは代謝であるが、これは医学界によって次の定義がされている。

□「体内で起こり、その継続的な成長と機能を可能にする、すべての化学的・物理的変化の総体」

先述したように、通常の代謝過程ではフリーラジカルの発生が伴う。しかし、ラッセル・ブレイロック(Russell Blaylock)博士が『健康・栄養の秘密』[B10]で説明するように、身体活動で代謝率が上がり、その結果、フリーラジカルの発生が増える。彼はこう述べる。

□「運動中に発生するフリーラジカル量は、運動の強度と長さに依存する」

また、身体活動の時間や強度を大幅に上げた結果を、彼は説明している。

□「激しい運動による、フリーラジカル産生と過酸化脂質の劇的増加が知られている」

フリーラジカル産生が劇的に増加すれば、酸化ストレスが生じ、フリーラジカルによるダメージを起こしうる。このメカニズムは、心臓系に影響するものを含め、事実上あらゆる種類の「病気」に共通するものと認識されている。

フリーラジカルによるダメージは、あらゆる種類の身体活動の必然的結果ではなく、それを中和できる十分なレベルの抗酸化物質を欠く場合にのみ発生する。残念ながら、エリートアスリートを含むほとんどの人は、運動量増加に伴い抗酸化物質摂取量も増加すべきであることを知らない。 ブレイロック博士が説明するように、この認識不足は次を意味する。

□「(運動量を増やす一方で)ほとんどの人は抗酸化物質摂取量の増加ができていない」

抗酸化物質はフリーラジカルによるダメージから身を守るために極めて重要だが、健康維持に不可欠な栄養素はそれだけではない。もう一つの極度に重要な栄養素はマグネシウムであり、この欠乏もまた心疾患に関連することを、キャロリン・ディーン(Carolyn Dean)博士が『奇跡のマグネシウム』[B28](邦訳:熊本出版文化会館)で説明する。

□「マグネシウム欠乏は、健康な成人の心臓突然死を引き起こす可能性がある」

したがって、「フィットネス」が「健康」と同義ではないことが明らかだ。

身体活動は有益だが、身体活動レベルを上げる以前に身体の「健康」状態が不可欠であり、でなければ、本論で示したように、深刻な健康問題になりかねない。栄養素、特に抗酸化物質の摂取量増加が「健康」の重要な側面だが、注意を払うべき要素はそれだけではない。これを本書の残りの節で述べる。

■■4つの要素

これまでの議論で主張してきたことは、不健康な状態が常に複数の要因の結果であることだ。この主張は、限定された範囲ではあるが、『健康的な環境』[R6.1]報告書でも認識されている。

□「不健康の根本原因は多因子である」

この報告書で言及される要因には、「原因」と表現できないものも多く含む。しかし、本章の残りの節で説明するものは、原因因子であると証明済だ。すべての病気に共通する基本的メカニズムを引き起こすためである。

医学界は、誤りにも、感染症と呼ばれる不健康な状態は、「生物学的要因」、つまり病原性微生物により起こると主張する。その一方で、非伝染性疾患という健康状態は、(NCDに関するWHOファクトシートによれば)「リスク因子」 の組み合わせ、つまり遺伝的、生理的、行動的、環境的要素により起こると主張している。

「リスク」とは影響の可能性である一方、「原因」とは影響を起こすものであり、二つの言葉は明らかに同義ではない。「リスク因子」という言葉は、WHOのウェブページ『リスク因子?』[R10.21]で次のように定義されている。

□「リスク因子とは、病気や怪我の発症可能性を高める個人の属性、特性、曝露である」

医学界が、原因ではなく「リスク因子」に言及する理由は、NCDの正確な原因の知識を欠くためである。しかし、この「知識欠落」は、「病気」の本質と人体機能に対する理解不足に完全に起因している。後者の理解の欠如を示すのは、「遺伝的要因」が健康に大きなリスクをもたらすという考えである。これを、ブルース・リプトン博士が2012年2月の記事「エピジェネティクス」[R10.22]で説明する。

□「従来の医学は、人間は遺伝子に支配されるとの古風な考えで動いている。これは生物学の仕組みの本質を誤解している」

医学界は、すべての関連要因を認めはしないが、「環境要因」が不健康に寄与するとの主張に異論を挟む余地はない。

『健康的な環境』[R6.1]報告書のサブタイトルは、「環境リスクによる疾病負担の世界的評価」である。この報告書の目的は、疾病関連の環境要因のうち、「修正可能」なものを特定し、疾病の全体的負担軽減のための介入策を実施可能にすることである。残念ながら、疾病減少の目的で使われる介入策の多くが、問題解決どころか、悪化させるものである。特に適切な例としては、マラリアなど様々な病気の原因とされる寄生虫を媒介するというベクター、特に蚊の根絶目的で、強毒性殺虫剤を使用することだ。

「病気」とは個別の実体であるとの誤った考えに基づき、『健康的な環境』報告書では、いくつもの病気について「評価」を行い、各病気を個別に考察し、その病気に関連する特定の「環境リスク」を識別しようとしている。そのひとつに「喘息」があるが、その主な原因は「遺伝的体質」と誤りにも主張する。この報告書では正しく、それに大気汚染が寄与するとしているが、しかし、大気汚染が喘息を誘発し悪化させるとの文脈でしかない。つまり、喘息という病気が既に存在すると示唆しているのだ。ただし、注意すべきは、大気汚染の多くの成分が酸化ストレスを起こすと既知であり、酸化ストレスと喘息との間に関連性があると認識されていることである。

報告書は、様々な「病気」に関する多くの「環境リスク要因」を認めるが、有害物質や影響の全範囲、あるいは環境への悪影響の全範囲を認識していない。報告書が関連する全「環境要因」を含まない理由の一つは、その「リスク」が十分評価されていないためとしている。これが次の記述に示されている。

□「新たなリスク(より集約的な農法や動物由来感染症など)の影響、多くの長期的な化学物質曝露によるがんや内分泌障害への影響、新技術による電磁波やその他曝露にの影響など、適切な評価がされていないリスクの例が多くある」

この声明は不誠実だ。化学物質や電磁波への曝露に関連するリスクの多くは、評価されており既知である。これを本章でさらに論じていく。それらが健康に深刻なリスクのあることを医学界が否定する主な理由は、第9章で論じたとおりだ。

「病気」の本質の「新たな」説明が述べることは、身体の適切な機能への障害は、「有害な物質や影響」への曝露により起こることだ。身体には自らを保護するための生来のメカニズムが備わっているにもかかわらずである。しかし、「有害な物質や影響」への曝露レベルがかなり高くなると、これらのメカニズムが正しく機能し、身体を保護する能力が損なわれうる。これがまさに今、世界人口の大半が直面する苦境である。

この状況の改善は可能だが、しかし、そのためには、適切な行動のための必要情報を人々が得る必要がある。この行動としては、有害物質や影響の曝露を減らす、健康を支えるあらゆるものに注意を払うことがある。健康に影響を与えるすべての物質や影響は、有益か否かを問わず、すべて四つのカテゴリーのいずれかに属すると特定することができ、本章の残りの部分ではこれを「四つの要因」と呼ぶが、これらは、栄養、毒物曝露、電磁放射曝露、ストレスである。

■■■栄養

医学界は「栄養」の重要性を認めるものの、この言葉の完全な意味と健康への重要性の理解は貧弱だ。WHOのウェブページ『栄養』[R10.23]では、この言葉を次のように定義する。

□「身体の食事必要性との関連で考えられる食品摂取量」

栄養の本当の意味として、この定義よりはるかに多くのを指すことを、ここでは示していこう。

オックスフォード・コンサイス・メディカル辞典では、栄養素の摂取を指して「栄養」と定義しているが、栄養素の定義は次の通りである。

□「エネルギー源、成長のための材料、または成長やエネルギー生産を調節する物質の提供のために、食事の一部として消費されるべき物質」

この定義では、栄養について医学界が流布する主要な、しかし誤った考え方の一つが浮き彫りになっているが、これは食物の主目的は身体への「エネルギー」供給というものだ。このことは、WHOのウェブページ『栄養』[R10.23]でも示されており、そこでは「良い栄養」を次のように定義する。

□「定期的な身体活動を組み合わせた、適切でバランスの取れた食事」

身体活動は「良い栄養」の構成要素では無い。それを定義に含む理由としては、ある考えを促進するためである。、つまり「適切な」食事とは、身体活動で消費されるエネルギーに対する身体の必要量を満たし、それを超えない十分なカロリーを提供する食事というものだ。これは、WHOの2018年10月のファクトシート『健康的な食(Healthy diet)』[R0.1]で示されており、次の主張をする。

□「エネルギー摂取量(カロリー)は、エネルギー消費量と釣り合うこと」

食品のエネルギー価に着目した食事は、「健康的な食事」と同義でもなく、「良質な栄養」を表すものでもない。エネルギー摂取量がエネルギー消費量と釣り合うべきでとの主張は、身体活動での消費カロリーを上回るカロリー摂取が過体重や肥満の主要原因との考え方に基づく。2018年2月のWHOファクトシート『肥満と過体重(Obesity and overweight)』[R0.1]に次が示されている。

□「肥満や過体重の根本原因は、摂取カロリーと消費カロリーの間のエネルギーバランスの崩れである」

このファクトシートでは、体重過多と肥満は体脂肪の蓄積を基準に定義される。しかし、体脂肪はカロリーの過剰摂取のみで蓄積されるわけではなく、摂取した食品の質との関係の方がはるかに深い。ファクトシートでは、過体重と肥満はBMI(body mass index)という測定値を基準に判断されると説明する。成人の場合、BMIが25~30を過体重、30以上を肥満と定義する。子供におけるこの基準は、その年齢によって異なる。

高いBMI の最も重大な点は、NCD発症する「リスク」増加との関連であり、 これはファクトシートが主張する通りだ。

□「BMI上昇は非伝染性疾患の主要リスク因子である」

高BMIに関連する主なNCDは、心血管疾患、糖尿病、特定のがんだが、これらの疾患はカロリー過剰摂取により起こるものではない。「新たな」病気の説明においては、これらの疾患は、体内の機能不全の異なった現れとされる。「有害物質や影響」への曝露によるもの、それがフリーラジカルの発生を増加させ、酸化ストレスを誘発し、結果として、身体の細胞や組織に損傷を与えたものだ。

医学界による食品エネルギー価の強調は、おおよそ機械論的な身体観に基づく。これは、人間の食物への要求が自動車の燃料への要求と類似するとの考えを推進するものだ。しかし、これは間違った例えである。人間の身体は本質的に機械論的ではない。エネルギーへの変換材料となる食品消費は必要だが、人間の身体は生きた物であり、その複雑な生命維持プロセスは、最先端技術の物を含め、純粋な機械的機能とは似ても似つかないものである。

食事の基本的目的は、身体の全プロセスのサポートに必要な材料の提供であり、エネルギー生産だけではない。したがって、食物としての摂取物質には、一般に栄養素と呼ぶ必要物質が含まれねばならない。つまり、「栄養」は、より正確に定義されるべきである。栄養素の摂取と材料への変換であり、これは健康増進と生命維持するための身体の生化学的プロセスで利用される。これを、ハーバート・シェルトンが要約して説明している。

□「食物として適切な役割を果たすには、その物質が組織と同化できなければならない。つまり、細胞がそれを血流から取得し、自身に取り込み、細胞物質の正常な構成要素とし、生命プロセスに利用可能なものであることだ」

身体の利用可能な物質に変化しえないものものは、栄養素とはいえない。利用できない物質は、身体に敵対することになり、「毒」とみなさねばならない。彼はさらに説明する。

□「細胞により、そのように使われず、生きた構造に組織化されない物質、すなわち代謝されない物質はすべて毒である」

WHOは良好な栄養を「健康の礎」と呼ぶ一方で、栄養を医療の礎とする政策を推奨してはいない。この理由の一つは、既得権益、特に化学、製薬、食品業界の影響によるものである。真の意味での栄養に国民の意識が高まれば、彼らの利益を脅かされることになる。

さらに、医療関係者の多くは「栄養」知識の改善に消極的である。なぜなら、先述したように、このテーマは「非科学的」、「ふわふわした」、「医者ではなく栄養士の領域」と考えられているからだ。このような蔑視的態度が永続しているのは、おおよそ、医学部カリキュラムに栄養学コースが事実上不在であることによる。しかし、これは重大な欠落だ。栄養学の理解は、健康の理解の基本であり、医学界によれば、それは紛れもなく「医師の領域」である。しかし、医学研究者は健康を理解していない。なぜなら、彼らは「病気」、より正確には「病気の影響」を研究するのである。しかし、彼らの研究は、対象とする現象の本質の誤った理解に基づく。

この話題への蔑視的態度が永続するもう一つの理由は、栄養に関する真の研究には「現代医学」の採用するものとは異なるアプローチを含むことである。これを、T・コリン・キャンベル(T Colin Campbell)博士が示している。彼は、2017年の論文『栄養ルネサンスと公衆衛生政策』[R10.24]で次を述べる。

□「栄養学は全体論的科学であるのに対し、医療行為は還元論者的であり、栄養への偏った判断を起こす深刻なミスマッチである」

この還元主義者的アプローチは、現代医学に広く見られるもので、身体の一部分や一つの病気に焦点を当てた様々な専門分野が存在することからもわかる。そのため、それぞれ独立して機能するとの考え方で、個々の栄養素を医学界が研究することも無理はないが、これも重大な誤りだ。

倍率を高めた顕微鏡の開発により、科学者は「物質」の基本的構成要素を発見できるようになった。その結果、食品が栄養素と呼ばれる物質で構成されることがわかり、この栄養素は大きく二つに分類される。身体の要求量が比較的多い栄養素を主要栄養素といい、炭水化物、脂肪、たんぱく質の三種類がある。一方、比較的少量のみ要求されるものを微量栄養素といい、ビタミンとミネラルの二種類がある。

炭水化物は、デンプン、糖質、食物繊維からなるグループで、様々な食品にある。これらは身体の主要エネルギー源と呼ばれる。炭水化物のほとんどは消化の過程で分解され、糖に変換される。その主な種類はグルコースで、血糖としても知られ、身体のエネルギー需要に応じて使用または貯蔵されるためだ。糖質は炭水化物の一種だが、第6章で説明したように、すべてが同じではなく、体内で同じように処理されるわけでもない。しかし、炭水化物をグルコースに変換し、それを血流に放出するプロセスは、身体の自己調節機構により厳密に制御されることを強調しておく必要がある。これらの機構が、特定の炭水化物、特に精製炭水化物と砂糖の摂取により、かく乱されうる。

スクロース(ショ糖)もしくは精製糖は、加工食品の一般的成分であり、糖尿病を含む多くの健康障害と関連する製造された物質である。スクロースの摂取は、身体の正常な制御機構を乱し、血流に放出される糖のレベルを急上昇させる。この「糖分急増」が、フリーラジカル発生を増加させ、それが酸化ストレスやフリーラジカルによるダメージになりえ、すべてとは言わないまでも、糖尿病を含むほとんどの慢性的健康問題の根本メカニズムであることは広く認識されている。

精製糖の問題点は第6章で述べたが、「遊離糖」摂取量減少の推奨は、生鮮食品、特に果物や野菜に含まれる天然の果糖には適用しないことを改めて強調しておこう。

でんぷんは、野菜にも含まれるが、ほとんどが穀物に含まれる。パン、パスタ、米、トウモロコシ、ジャガイモなど、ほとんどの主食に共通して含まれる炭水化物である。また、デンプンはグルコースに変換される炭水化物の主な形態であるため、カロリー摂取の主要因となる。この理由から、デンプン主成分の食品は、摂取カロリー減少により体重減少を望む人々では、通常は最小限に抑えられ、避けられることさえある。

これもまた、食品の栄養価よりもカロリー価に焦点を当てた、誤った例の一つである。デンプン主成分食品の、はるかに重要な質として考慮すべきは、精製済か否かの点である。あらゆる加工に共通するが、穀物の「精製」は栄養価を大幅に低下させ、栄養価がほとんど残らないものがほとんどである。例えば、米は籾殻、糠、胚芽を除去して精製されるが、これらの部分に事実上すべての栄養素が含まれるため、精製米に栄養価はほとんどない。

小麦などの精製穀物やパンなどの製品は、加工で失った栄養素を補うために「栄養強化」されることが多い。しかし、後述する理由により、個々の栄養素の強化により栄養価が改善することはない。また、ほとんどの精製工程で、穀物から繊維質が失われる。繊維質は、適切な消化に必要な粗質食料となるため、これも非常に重要な成分である。しかし、精製された穀物よりも全粒粉の方が健康的であるという認識は広まっている。WHOのファクトシート『健康的な食(Healthy diet)』[R0.1]でさえ、健康的食生活の一部として全粒粉を取り入れるよう言及している。

タンパク質は主要栄養素の第二のカテゴリーであり、アミノ酸から構成される。アミノ酸の一部は体内で合成されるが、必須アミノ酸と呼ばれるものは合成されず、食事から摂取の必要がある。肉類や乳製品などの動物性食品はタンパク質を豊富に含み、唯一ではないものの、主要なタンパク源と考えられている。これについて本節で後述するが、「人間は本来肉食」との誤った考え方に基づき、動物性食品を含まない食事はタンパク質不足になると主張される。しかし、これは誤った主張であり、2013年の論文『医師のための栄養学最新情報:植物ベースの食事』[R10.25]に示されている通りで、こう述べられている。

□「一般的に、植物ベースの食事をする患者に、タンパク質不足のリスクはない」

この論文では、「植物ベースの食事」を動物性食品の摂取を避けるのではなく、最小限に抑えるものと定義しているが、それでも、医師が患者に植物性食品の摂取増加を推奨するよう勧めている。

植物性食品、つまり動物性食品を完全に排除した食事は、人間のタンパク質の必要量を完全に満たすことができることに留意することが重要だ。さらに、コリン・キャンベルは、著書『チャイナ・スタディー』[B17](邦訳:グスコー出版)にて説得力のある研究結果を多数紹介しており、次を示している。

□「新しいタンパク質をゆっくりと、しかし着実に合成できる植物性タンパク質は、最も健康的なタンパク質の一つである」

主要栄養素の三つ目のカテゴリーである脂肪は、高カロリーで悪名高いが、食事の重要な構成要素である。しかし、他の主要栄養素と同様、脂肪もまた、誤解を招く情報の対象になってきた。その最たるものが、脂肪摂取とコレステロール値上昇および健康「リスク」増加との関連性である。「善玉」「悪玉」コレステロールという誤りを第1章で述べたが、繰り返すべきこととしては、コレステロールは身体の多くの機能に不可欠であり、体内コレステロールの大部分は肝臓で生産されることである。さらに繰り返すべき重要な点は、高コレステロール値に関連するとされる健康問題は、「悪玉」コレステロールが原因ではなく、酸化したコレステロールが原因であることだ。ラッセル・ブレイロック博士の2006年の著書『健康・栄養の秘密』[B10]では次を述べる。

□「15年以上前に、コレステロールは酸化されない限り危険ではないことが発見された」

LDLコレステロールが「悪玉」とされてきた理由は、HDLコレステロールより酸化されやすいからである。第7章で述べたように、ブレイロック博士は、コレステロールはフリーラジカルによって酸化されると説明している。

□「酸化したHDLコレステロールは、酸化したLDLコレステロールと同様に危険である」

最も健康に悪い種類の脂肪は、水素添加油脂と工業的に生産されたトランス脂肪酸である。WHOのファクトシート『健康的な食(Healthy diet)』[R0.1]では、これらの脂肪について次を述べる。

□「健康的な食事には含まれず、避けるべきである」

注意すべき点としては、これらの脂肪は工業的に生産された加工食品にのみ含まれることだ。したがって、避けることは容易である。

また、ファクトシートでは、ほぼ動物性食品にのみにある飽和脂肪酸の摂取を控えるよう推奨する。この削減達成の方法として、全脂肪乳製品の低脂肪への置き換えが提案されている。しかし、これは必ずしも、より健康的な選択とは言えない。脂肪分除去にはさらなる加工を必要とし、それが全体的栄養価をさらに低下させるためだ。

飽和脂肪酸の摂取削減方法として、バター、ラード、ギーなどの脂肪を、より健康的との理由で、大豆油、キャノーラ油、サフラワー油、ひまわり油などの多価不飽和脂肪酸に置き換える方法も提案されるが、これも必ずしも正しくない。これらの油の中には、GM作物から作られるものがあり、特にGM作物の代表格の大豆から作られる油については、特に当てはまる。さらに、これらの油はしばしば「精製された」と表現されるが、通常、油の抽出においては作物を有害化学物質にさらす工業的プロセスにより生産される。

油は、GM作物や有害化学物質を使用しない、より健康的な方法で生産しうる。例えば、オリーブオイルやココナッツオイルの製造には、コールドプレスという方法が一般的に使われる。これらの油でさえ、脂肪を含むので避けるべきとのアドバイスがあるが、これは、あらゆる「脂肪」の形態がコレステロールを危険レベルまで上昇させるとの誤った考えに基づく。

植物性食品は三大栄養素の優れた供給源であることは明らかだが、植物性食品は微量栄養素の重要な供給源でもある。WHOのウェブページ『微量栄養素』[R10.26]では、微量栄養素のことをこう呼ぶ。

□「適切な成長と発達に不可欠な、酵素やホルモンなどの物質を体内で作り出すことを可能にする『魔法の杖』である」

特にあらゆる「病気」の根本メカニズムに関連するが、微量栄養素の重要な役割の一つは、抗酸化物質として作用し、酸化ストレスとその結果生じるフリーラジカルによるダメージから身体を守ることである。ラッセル・ブレイロック博士が『健康・栄養の秘密』[B10]で説明する。

□「ビタミン系抗酸化物質は、ほとんどの人におなじみである。ビタミンA、ベータカロチン、ビタミンC、ビタミンEなどだ。どれも強力な抗酸化物質で、フリーラジカルを大量に中和する。あまり知られない抗酸化物質としては、ビタミンDやビタミンK、マグネシウム、亜鉛、マンガンがある。また、植物性食品からは、抗酸化物質として働く40種類以上のカロテノイドと5千種類以上のフラボノイドが植物から摂取される」

彼は、これらの抗酸化物質すべてが身体にとって重要と説明する。

□「(なぜなら)それぞれの抗酸化物質は、細胞や組織の異なる場所で作用する(からだ)」

様々な微量栄養素の同定が、栄養に関する一定の理解を促したが、個々の栄養素とその機能に関する研究は、還元主義的アプローチの好例である。この態度が、医学界やある程度「代替医療」界にあるが、その多くもまた個々の栄養素の健康効果を推進している。このアプローチの主な帰結としては、食品の全体性を無視し、個々の断片的な構成要素のみを考慮することだ。しかし、これは深刻な誤りである。食品の場合、間違いなく、全体は部分の総和よりもはるかに大きい。

とはいえ、食品が含む個々の栄養成分の研究から、ある栄養素の欠乏が特定健康問題につながるとの考えが生まれた。たとえば、WHOは『微量栄養素の欠乏』[R10.27]で次を主張する。

□「ビタミンA欠乏症(VAD)は、子供の失明の主原因であるが、予防可能である」

他の「病気」も特定栄養素の欠乏に関連する。例えば壊血病は、重度のビタミンC欠乏が原因とされる。しかし、「新たな」病気の説明は、壊血病は重度の抗酸化物質の欠乏による酸化ストレスとフリーラジカルによるダメージから生じる症状として、より正確に説明しうると示している。これは、ライムやレモンなどの柑橘類を食事に加えれば、壊血病が解消される事実からもわかる。後述するように、食品は様々な栄養素を複合的に含む。つまり、一種類の栄養素欠乏により欠乏症が起こることはない。

「現代食」は、すべてではないにしても、加工食品・飲料を中心とし、健康に不可欠な微量栄養素すべての摂取は不可能とますます認識されつつある。しかしながら、この問題は、「足りない」栄養素を補う栄養補助食品で解決可能と信じられている。しかし、多くの理由から間違った考えだ。その一つは、個々の栄養不足の検査が事実上不可能であることだ。しかし、たとえ特定の栄養素不足を確認できたとしても、実験室で合成された化学物質で問題解決はできない。サプリメント業界は、合成化学物質の使用を、食品中の自然な栄養素と「化学的に同一」との理由で正当化するが、これは著しく誤解を招く。ビタミンサプリメントの問題について、ロバート・ティール(Robert Thiel)博士が論文『サプリメントに含まれるビタミンの真実』[R10.28]で次を説明する。

□「実は、サプリメントが含むビタミンのほとんどは、石油由来成分や水素添加糖類から作られたり、それらにより加工されている」

さらに、『食品の抗酸化物質は単体の抗酸化物質より優れている(Food Antioxidants are Superior to Isolated Antioxidants)』という記事で彼が説明するには、化学的に似ていても、製造されたサプリメントが含むビタミンは、食品含有のものとは構造的に異なると説明している。さらに重要な事実として、食品中ビタミンには、体内細胞に栄養素を吸収させるのに必要な「他の要素」を必ず含むが、サプリメントには全く無いことである。つまり、サプリメントが含むビタミンは不完全な栄養素である。ティール博士は説明する。

□「単離された非食品ビタミンは、たとえ化学的な違いはなくとも、断片化された栄養素に過ぎない」

ある種のビタミン補助食品は “食品ベース “を主張するものの、これらもまた、食品中に自然に存在し、栄養素の適切な機能に不可欠な「他の要素」すべてを欠く。この「他の要素」の重要性を強調し過ぎることはない。この「他の要素」の欠如が、サプリメントによる重要な健康効果の発揮を妨げる大きな障害である。この理由から、合成化学物質により個々の栄養素を調査する研究では、健康への有益な効果はほとんど報告されていない。

この問題は、ビタミン剤に限らず、ミネラル剤にも当てはまることである。これを、ティール博士が記事『栄養補助食品に含まれるミネラルの真実(The Truth About Minerals in Nutritional Supplements)』で説明する。

□「サプリメントが含むほぼすべてのミネラルの真実としては、これが実際には、岩石を一つ以上の酸で処理した工業化学物質であることだ」

岩石ミネラルを人体は消化できず、使用不能として拒絶され、体外に排出される。したがって、このような性質のサプリメントは全く役に立たない。それに比べると、植物は天然の岩石ミネラルを完全に吸収し、その適した形に変換できる、植物を食べたときに人体が消化、吸収、同化できるものにである。この理由から、人体が吸収可能なミネラルの唯一の源は植物なのである。ハーバート・シェルトンが述べる。

□「ミネラル栄養素は、土はなく、植物界からのみ摂取せねばならない」

ミネラルの効果的な機能には、他のミネラルを含む「他の要素」が必要であり、それらが互いに正しい形態と正しいバランスでなければならない。この相対的バランスの重要性は、カルシウムとマグネシウムの関係で示すことができる。カルシウムは健康な骨に不可欠と知られるが、その効果にはビタミンDを必要とする。NHSのウェブページ『食物と強い骨』[R10.29]は述べる。

□「骨の強化に十分なカルシウムと、その体内吸収を助けるビタミンDが必要」

適切なカルシウムの必要性からカルシウムの多い食品、特に牛乳や乳製品などの摂取が推奨されている。しかし、カルシウムのみの摂取では骨の強化は不可能である、適切なレベルのビタミンDがあったとしてさえもだ。その理由は、カルシウムの骨への吸収には、適切な量のマグネシウムも必要だからであり、明らかに、この点がNHSのウェブページでは言及されていない。とはいえ、キャロリン・ディーン博士は『奇跡のマグネシウム』[B28]で次のように説明する。

□「カルシウムの吸収と代謝には、適正量のマグネシウムを必要とする」

ほとんどの食事でカルシウムは十分摂取されるが、マグネシウムが十分なことはほとんどない。マグネシウム不足の食事が続くと、必然的に両者の相対的バランスが崩れ、健康への悪影響になりうる多くの結果が生ずる。マグネシウム不足のもとで、骨に吸収されにくいカルシウムが多くなれば、血液中にカルシウムが蓄積され、腎臓結石の原因になりうる。カルシウム濃度が非常に高いと、高カルシウム血症と呼ばれる状態になり、まれではあるものの、脳や心臓の正常機能が損なわれる可能性がある。

したがって、マグネシウムは極めて重要なミネラルだが、その働きは骨へのカルシウム吸収の助けにとどまらず、他の多くの働きと関連する。ディーン博士が述べる。

□「マグネシウムは体内の325以上の酵素を調節する」

ほとんどの食事がマグネシウム不足である主要原因のひとつとしては、この必須ミネラルはあらゆる加工により喪失するためだ。したがって、加工食品は特にマグネシウムが少ない。しかし、この不足は、マグネシウム豊富な食品の摂取で改善できる。ディーン博士がアドバイスする。

□「食事へのマグネシウム強化には、緑黄色野菜、ナッツ、種子、豆類、未加工穀物の摂取量増加が良い」

同様の関係としては、ナトリウムとカリウムがあり、どちらも細胞、特に心臓細胞の健全な働きに重要である。WHOのファクトシート『健康的な食(Healthy diet)』[R0.1]は、体内ナトリウム濃度低下のため食塩摂取量の低下を推奨している。しかし、これは誤解を招く。身体は岩石ミネラルを代謝できないため、「食卓塩」からのナトリウムは吸収されない。第1章で述べたが、ナトリウム濃度上昇の主要原因のひとつはカリウム欠乏である。しかし、医学界は、ナトリウムのレベルのバランスをとるカリウムの重要性を認識し始めている。2018年10月のWHOのファクトシート『健康的な食(Healthy diet)』[R0.1]には、次の記載がある。

□「カリウムは、高めのナトリウム摂取による血圧への悪影響を緩和できる。カリウム摂取量は、新鮮な果物や野菜の摂取で増やせる」

新鮮な果物や野菜などの植物性食品の摂取増加による多くの健康問題軽減は明らかだ。

残念ながら、土壌の栄養レベルは過去数十年の間に世界の多くの地域で大幅に低下しており、栄養が貧弱な土壌で育つ食品の栄養価は必然的に低下している。しかし、この問題は栄養補助食品や栄養強化食品で解決できはしない。唯一の解決策は土壌への栄養補給である。肥料は、失われた栄養素を補う重要な役割を果たすとされるが、ほとんどの工業的農業で使われるのはNPK肥料である。つまり、窒素、カリウム、リンのみを含むため、その他の重要なミネラル、特にマグネシウムは欠乏している。しかし、多くの必須栄養素の不足という事実は、これらの肥料製品にまつわる唯一の問題点ではない。肥料産業で使用されるリンと窒素の供給源については、第6章で既に述べた。

主要ミネラルに加え、ごく微量が必要となるミネラルがあり、「微量元素」と呼ばれる。1996年にWHOは『栄養と健康における微量元素(Trace elements in human nutrition and health)』[R10.30]という報告書を作成したが、同タイトルのウェブページ[R10.30]によれば、三つにカテゴリー分けした19種類の微量元素について、正式な勧告を行っている。同ページは次を述べる。

□「これに含まれるのは以下である。ヨウ素や亜鉛などの必須元素、マンガンやケイ素などの必須元素の可能性のあるもの。フッ化物や鉛、カドミウム、水銀などの潜在的毒性元素も含まれるが、これらは低レベルで何らかの必須機能を持つ可能性がある」

この報告書は、「微量元素」というトピックに関するWHOの最新発表と思われるが、緊急に改訂の必要がある。1996年以降、フッ化物、鉛、カドミウム、水銀が、単に「潜在的」毒素というより、むしろ確定的と明確に示す証拠が豊富に積み重なっている。また、これらのどれも、人体にてどんなレベルでも、何の「必須機能」も無いと示す十分な証拠もある。

栄養に対する還元主義的アプローチは完全な間違いである。なぜなら、個々の栄養素に焦点を当てることは、食品の全体性の重要性を無視することになるからだ。これをハーバート・シェルトンが示しており、その著書『ハイジーンシステム:第1巻 ナチュラル・ハイジーンの科学と芸術』[B67]で次を述べる。

「タンパク質、炭水化物、脂肪、ミネラル、ビタミンなど、個別の食品要素に注目する現代人は、何も考えなくても手に入る、全体的で健全なものであるべきものを、断片化しているに等しい

様々な食品が含む栄養素は、その量や組み合わせに違いはあれ、常に必要なすべての「他の要素」を伴っており、それにより栄養素はその機能を発揮できる。これは、健康と生命の維持のための身体のプロセスをサポートである。ブレイロック博士が説明する。

□「単一の栄養素ではなく、これらの複合栄養素の組み合わさった効果により、忘れがたい健康効果を我々にもたらすとの証拠が増えつつある」

そのような健康効果を得られる理由は、食品が含む栄養素の相乗的機能による。先に引用した『栄養ルネサンス』[R10.24]の論文中で、キャンベル博士は次を述べる。

□「食の全体性とは、栄養素が集合的かつ動的に働いて健康を生み出すことを説明するものだ」

もう一つの誤解を招く考えは、ヒポクラテスの「汝の食を薬とせよ」との説教に基づくもので、ある種の食品に「薬効」があるというものだ。例えば、いくつかの食品が「天然の抗生物質」とされるが、これは誤った主張だ。人間の身体には数兆ものバクテリアが生息し、そのほとんどが消化器系に住み着き、消化プロセスを助けている。つまり、本物の食品はバクテリアを殺さないのみならず、バクテリアを殺す物質は「食品」とは呼べない。いくつかは特に健康に役立つとされるものもあるが、食品は「薬」として作用するものではない。ハーバート・シェルトンは言う。

□「食品を薬と見なすことは決してできない。食品は栄養物質である」

したがって、食品は細菌を殺したり、身体を「癒す」ことも、病気を「治癒」こともしない。癒やしとは、身体によってのみ行われる生物学的プロセスであり、その本来的に持つ自己治癒メカニズムが、食品摂取の栄養素にサポートされることによる。

栄養に対する還元主義的アプローチが、「すべては化学物質から構成される」との信念も相まってもたらした結果のひとつは、食品産業に許してきてしまったことだ。合成化学物質を製品の原材料としたり、特定の「技術的機能」を果たすための食品添加物として使用することをだ。しかし、合成化学物質は食品の含む元素と「化学的に同一」とされるものの、工業生産された化合物が、自然の産物と全く同じ形で再現されることはない。ハーバート・シェルトンが説明する。

□「リンゴを分析し、その化学成分を確認することは可能だが、世界の化学者は、リンゴも、その代わりのものも作れない」

にもかかわらず、WHOは、コーデックス委員会による基準の満足を条件に、食品への化学物質使用を認めている。第6章で引用したが、コーデックス規格STAN192-1995による「食品添加物」の定義[R6.81]は、繰り返し述べるに値する。

□「食品添加物とは、栄養価の有無に関わらず、通常はそれ自体で食品として消費されず、通常は食品の代表的成分として使用されない物質を指す

通常は食品として摂取されない物質や栄養価のない物質を「食品」と表現することはできない。この議論の以前に述べたように、栄養価のない物質は身体に敵対することになり、より正確に表現するならば『毒』である。にもかかわらず、公衆衛生権威を自称するWHOは、JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)により「安全」とみなされることを根拠に、「毒」使用を許可している。しかし、第6章で述べたが、「安全」とは相対的な言葉であり、推奨使用量以下なら安全とみなされる物質との意味だ。

本物の食品は本来安全であり、有害物質の汚染でのみ安全性が損なわれうる。しかし、たとえ汚染がなくとも、本物の食品が消化不良を起こすことがあるが、これは過剰摂取でのみ起こる。ハーバート・シェルトンが説明する。

□「最高の食品の過剰摂取はトラブルを生む」

この「トラブル」には痛みや不快感がありうるが、食事の中止を求める身体の信号である。そうすれば、伸びすぎた消化器官が摂取済の食物を処理できるようになる。こういった症状を、大量摂取のために食物が「毒」になったと解釈するのは不適切である。

これに比較すると、食品添加物は、その成分の性質上、本来は毒性があるが、添加物含有食品の摂取では、すぐにその効果が出ないかもしれない。これは、体内で処理・排出できるよりも十分低いレベルの可能性があるためだ。ただし、毒素への耐性は個人や健康状態によって異なる。

有害物質を含む食品摂取への身体の反応は、嘔吐や下痢など劇的な症状を伴うこともあれば、一般的に「アレルギー」される症状の場合もある。症状を「食物アレルギー」に帰着させることの問題については第7章で述べた。しかし、農業や食品生産における有害化学物質の使用量の増加に相関するアレルギー発生率増加は、決して些細なことではない。この相関は因果関係の証明ではないと言うかもしれないが、それは不適切な意見である。なぜなら、アレルギー、有害物質曝露、酸化ストレス、病気との間には、否定し難い直接的関連性を示す証拠がふんだんにあるからだ。有害物質の問題については、この章の後半で詳しく説明する。

WHOのウェブページ『栄養』[R10.23]では、「良い栄養」が「良い健康」の重要な構成要素と認め、さらに「悪い栄養」が「悪い健康」に関係すると認めている。これについて、以下を述べている。

□「栄養不足は、免疫力低下、病気罹患のしやすさ、心身発育障害、生産性低下などにつながる」

「栄養不足(poor nutrition)」は「栄養不良(underfed)」と良く同一視されるが、同義ではない。 前述したように、十分な栄養を摂取しても「栄養不足(poor nutrition)」に陥ることがある。これは「栄養失調(malnutrition)」とも呼ばれる。特に、カロリーが高くても栄養価の低い加工食品や飲料を中心とする食生活で起こりやすい。WHOは「栄養失調」が栄養不足により起こることを認識している。以前に引用したWHOのファクトシート『栄養失調(Malnutrition)』[R0.1]は以下を述べる。

□「栄養失調とは、人の摂取するエネルギーおよび/または栄養素の不足、過剰、または不均衡を指す」

しかし、この意見は、栄養素の過剰摂取については誤解を招く。炭水化物、タンパク質、脂肪についての議論で示したように、健康に最重要なのは、これら主要栄養素の量ではなく質である。さらに、カロリーを意味する「エネルギー」の摂取不足で栄養失調になるとの主張は誤りであり、「カロリー」は栄養素ではない。

高カロリーで低栄養の加工食品の大量摂取では、空腹を感じ続けるかもしれない。しかし、これは身体が「もっと食べたい」と欲すからではなく、「空腹感」はむしろ栄養素の渇望を示す。キャロリン・ディーン博士が説明する。

□「食欲や過食は、実際には、加工食品に不足する栄養素を欲するため、満腹を過ぎても食べ続けたいとの身体の欲求に過ぎない場合がある」

『栄養失調(Malnutrition)』[R0.1]ファクトシートでは、栄養失調の形態の一つが「低栄養(undernutrition)」であり、その四つの下位形態、すなわち衰弱、発育阻害、体重減少、ビタミンとミネラルの欠乏があるとされる。しかし、「低栄養」とは、定義上、栄養素の摂取不足を意味する。つまり、衰弱、発育阻害、低体重は、「低栄養」の結果であり、その様々な下位形態ではない。

栄養失調のもう一つの「形態」は「たんぱく質・エネルギー欠乏」と呼ばれ、WHOの文書『2000年におけるタンパク質-エネルギー栄養失調の世界的負担』[R10.31]には、次のように説明されている。

「たんぱく質・エネルギー欠乏は、エネルギー(カロリー)またはタンパク質の不適切摂取から生じる栄養欠乏であり、マラスムス(訳注:栄養障害の名称)またはクワシオルコル(訳注:栄養失調の一形態)のいずれかの症状を呈する」

タンパク質は成長と発達に特に重要なため、幼児の食事には欠かせない。しかし、「栄養失調」は単一の栄養素の欠乏に起因するものではない。本節で前述したように、食品は微量栄養素と主要栄養素の両者を含む多種多様な栄養素を提供し、そのすべてが成長と発達のみならず、他の機能にも不可欠である。残念ながら、飢餓と低栄養という相互関連する問題解決のために、WHOや他の援助機関が提供する介入策は、特定の包装済「食品」の配布を伴う。第8章で述べたように、これらの製品のひとつはRUTF(すぐ食べられる健康回復食品、ready-to-use therapeutic food)と呼ばれるものである(訳注:第8章では、ready-to-use foodとして紹介されていた)。ユニセフのウェブページ「重症急性栄養障害児のための、すぐ食べられる治療食」[R10.32]では、RUTFが微量栄養素を強化したエネルギー密度の高いペーストであると説明し、次を述べる。

□「RUTFの代表的主原料は、ピーナッツ、油、砂糖、粉ミルク、ビタミン・ミネラル補給剤などである」

RUTFのような製品は急性飢餓の一時的緩和はできても、「低栄養」の解決にはならない。これらの製品の「エネルギー密度が高い」との説明は、高カロリーを意味するが、栄養密度が高いとの意味ではない。上に挙げたようなRUTFの典型的な主成分には、フリーラジカルのダメージから身体を守るのに必要な幅広い必須微量栄養素、特に抗酸化物質が含まれない。栄養失調に関連すると認識される病気への罹患しやすさは、栄養失調に苦しむ人々への本物の食品の提供によってのみ対処が可能だ。エネルギー供給の栄養素だけでなく、すべての栄養素を豊富に含むものである。さらに、これらの製品にサプリメントを加えても、主成分の栄養不足を解消することはできない。

栄養サプリメントは、欠乏の本質や欠乏が実際にあるかを判断する検査がない場合によく利用される。ただし、検査では身体の栄養状態を判断できないことに注意すべきである。多くの栄養素は検査のできない臓器や組織に保持されるためだ。人々がサプリメントを摂取する主な理由の一つは、ビタミンやミネラルの摂取量増加で、健康に良い影響があると言われるからである。しかし、食生活改善で栄養摂取量がはるかに増えることに気がつく人はほとんどいない。多くの人が食生活の根本改善に躊躇する主な理由を、キャンベル博士が示唆している。先に引用した2017年の論文で、博士はこう述べる。

□「サプリメントという分離された栄養素が未だに一般に利用される大きな理由は、誤った思い込み(あるいは言い訳?)である。つまり、どれほど不健康であっても好きな食べ物を食べ続ける一方で、望ましい健康を保てるというものだ」

以上の議論から明らかなこととしては、身体に必要な栄養素の唯一の真の供給源は、新鮮で丸ごとの植物性食品であることであり、特に、農薬などの有害化学物質や遺伝子組換えなどの不自然な加工の無いものである。健康的な食生活を構成するのは、このような食品である。しかし、「食事」と一口に言っても、栄養豊富な食品の定期的摂取は、特定の目標達成の一時的手段ではなく、新たな健康的な生活習慣と捉えるべきである。ヘンリー・ビーラー(Henry Bieler)博士が『食物は最高の薬』[B9]で説明する。

□「正しい食事は健康マニアのためだけでない。事実に気づくなら、それは生き方である」

合成化学物質の使用がありふれているため、食品から化学物質の完全排除はほぼ不可能だが、有機栽培農産物の選択で、曝露を最小限に抑制することは可能である。また、化学添加物を不可避的に含む加工食品や飲料を避けることでも有害物質曝露を減少できる。健康的食品への要求が高まるにつれ、一部メーカーは不健康な成分をより少なくした食品を製造するようになった。したがって、健康的な選択のために、製品のラベルを読むことが重要だ。

しかし、最も健康的な食事は、ブレイロック博士が提案するように、新鮮、丸ごと、未加工、オーガニックの植物性食品で構成されるものである。ブレイロック博士が提案する。

□「本当に、自分や家族を守る唯一の方法は、添加物の無い新鮮な食品のみを食べることだ」

この節で簡単に述べたが、人間は自然な雑食性であると広く信じられ、一般によく議論されている。この議論の主要な根拠は、先史時代の狩猟採集社会が世界の多くの地域に存在したことだ。しかし、この主張に対し、三つの反論がある。

第一に、先史時代の人が肉を食べた事実は、習慣化した行動の存在を証明するだけで、その行動が自然であるとの証明ではない。第二に、世界中の多くの社会では、同様に長い間、動物性食品を食べない習慣があった。さらに、肉の無い食事で生き延びたのみならず、繁栄し続ける数百万人の人々がいる。このことは、肉が人間の食事の必須要素ではないことを明白に示している。第三で最も説得力があるが、人間が自然に肉食という考えへの反論としては、人間の行動や習慣ではなく、人間の解剖学と生理学の視点からのものである。

人間の解剖学と生理学のある側面を肉食動物、雑食動物、草食動物のそれと比較すると、多くの違いがわかる。その中でも最も大きなものは消化器系にある。肉食動物と雑食動物の消化器系には類似点があるものの、いずれも人間の消化器系とは大きく異なる。この違いの唯一の理由は、消化器系が処理可能な食物に関係するはずだ。

これは明らかだが、数十万年の経過にもかかわらず人間は自然な肉食となる「進化」をしていないが、これは、人間の消化器官が肉を容易に処理可能な肉食動物や雑食動物のような適応をしていないためである。

人間は草食動物に近いと言われることもあるが、これも間違いである。人間の消化器官は、草食動物が食べる多くの植物、特に草が含むセルロースを処理できないからだ。人間に最も適する食事は、人間の解剖学と生理学に最も合致するものであり、これは果食(frugivorous)である。これを、ハーバート・シェルトンがその著書『ハイジーンシステム:第2巻 オーソトロフィー』[B68]で示す(訳注:オーソトロフィーの綴りはOrthotrophyであり、Orthotropyとは異なる)。

□「歯の数と構造、消化管の長さと構造、目の位置、爪の特徴、皮膚の機能、唾液の特徴、肝臓の相対的大きさ、乳腺の数と位置、性器の位置と構造、胎盤の特徴、その他多くの要素が、人間が体質的に果食動物(frugivore)であることを証言している」

果実、野菜、ナッツ、種子からなる食事を適切に述べた「frugivore(フルーギヴォア、果食動物)」という言葉があるが、ここには、それ以外の植物の部位も含まれる。彼はさらに説明する。

□「純粋な果食動物は存在せず、すべての果食動物が植物の葉や他の部分を自由に食べるように、人間もまた、その体質を損なうことなく、緑の植物を食べることができる。これらの植物の部分には、先に指摘したように、果物にはない利点がある。実際のテストでは、果物やナッツの食事に緑色の野菜を加えると、食事が改善されることが示されている」

しかし、frugivoreという言葉は、ナチュラル・ハイジーンを実践する人以外には、あまり広まっていないようだ。肉や魚は除き乳製品を食べる人はベジタリアン、動物性も乳製品も完全に断つ人はヴィーガンである。しかし、ベジタリアンやビーガンの食事は、加工食品の摂取を自動的に排除するものではないので、必ずしも「健康的」とは言えない。また、「ホールフード・プラントベース」という言葉で、この種の食を表現することもある。どんなレッテルが最もふさわしいにせよ、最も健康的な食事とは、新鮮で丸ごと食べられる、未加工の植物性食品を幅広く取り入れることだ。そしてこれが、遺伝子組み換えや有害化学物質の影響を受けていないことだ。

また、重要な点としては、可能であれば加工を最小限にすべきことである。調理を含むあらゆる加工を施せば栄養価が低下するからだ。つまり、可能であれば、食品は生のまま摂取すべきである。これを、ハーバート・シェルトンが示す。

□「果物、ナッツ、野菜が生で楽しめる唯一の食品であることは、ほとんど公理(自明)である。”

また、これらの食品を多く含む食事が、身体の最適機能のために必要な栄養を提供し、健康を確保することはも自明である。しかし、健康維持には、水分摂取にも注意が必要だ。

水は体細胞の必須成分であり、十分な量の存在が、健康のみならず生存に不可欠である。

身体は、呼吸や排泄などの正常機能により、一日を通じて水分を失う。その水分が補給されないと、体細胞や組織はすぐ脱水状態となり、長引けば多くの重要な臓器、特に腎臓の機能低下を招き、最終的には死に至ることもある。


バトマンゲリジ(F Batmanghelidj)博士は、著書『身体が水を欲しがる様々な叫び(Your Body’s Many Cries for Water)』で、細胞の慢性的な脱水に言及し、それがほとんどの慢性疾患の主原因と主張する。しかし、脱水は一因ではあっても、慢性疾患の主原因とみなすことはできない。慢性疾患は常に、本章で取り上げる「四つの要因」の、すべてではないにしても、いくつかの要因の組み合わせの結果である。重要な点としては、病気の「新たな」説明の観点からすれば、脱水は身体を「ストレス」状態にし、酸化ストレスを誘発するフリーラジカル発生を増加させ、フリーラジカルによるダメージ、特に慢性疾患など、ほとんどすべての体調不良に共通する基本的なメカニズムを引き起こすことである。

一般に、人間の身体には、一日にグラス6~8杯の水分が必要と言われるが、どんな飲料を含むかは意見が分かれる。例えば、バトマンゲリジ博士は、体内水分を十分補給するために、日摂取量は水のみであるべきとアドバイスする。

その一方、英国栄養財団(BNF)の声明では、水の摂取は「良い選択」だが、水のみを摂取する必要必要は無いとする。

□「(なぜなら)スカッシュ、フルーツジュース、炭酸飲料、紅茶、コーヒーなど、その他の飲料も一日の必要量に貢献するからだ」

これは非常に誤解を招きやすいものだが、一般大衆を教育する立場にあるとする組織が、その広める栄養についての知識レベルの貧弱さを物語る。BNFのウェブページ『健康的な水分補給ガイド』[R10.33]で認めることは、炭酸飲料やスカッシュは砂糖を含み、その消費を最小限にすべきことだが、にもかかわらず、これらの砂糖入り飲料は「ダイエット」バージョンで置き換えられる主張している。食品や飲料中の砂糖の代替として使われる人工甘味料の問題点はこれまで議論してきた。さらに、お茶やコーヒーは水分を含むが、どちらも利尿作用があり、排泄される水分量が増えるため、水分摂取必要量は増える。

したがって、バトマンゲリジ博士のアドバイスのように、毎日飲む水分は、唯一とは言わないまでも、主に水が望ましいと思われる。残念ながら、飲用に供される水のほとんどは、あるべき「清潔さ」を備えてはいない。

医学界の主張では、飲料水の清潔さに影響する主要問題は、汚染水を介して感染する数々の病気を起こすという「細菌」の存在である。2018年2月のWHOのファクトシート『飲料水(Drinking-water)』[R0.1]は次を述べる。

□「汚染水は、下痢、コレラ、赤痢、腸チフス、ポリオなどの病気を媒介する」

WHOは糞便が主要汚染物質と認識するものの、これらの「病気」は糞便-経口経路で人に感染する「細菌」で起こり、この病気の関連症状を起こすのが「細菌」と主張する。下痢は病気でなく症状であることを強調したい。下痢は症状であって、病気ではない。ともあれ、この主張には無理がある。嘔吐や下痢などの症状は、いかなる「菌」も起こすものではなく、糞便汚染された水などの有害物質への身体の反応であり、毒素排出の働きである。WHOは、下痢性疾患は主に「発展途上国」に多いとするが、その原因は主に水管理の不十分さと主張する。これは、第6章で引用したファクトシートに示されているが、繰り返すに値する。

□「都市、工業、農業の排水の不適切管理により、何億もの人々の飲料水が危険なほど汚染されたり、化学的に汚染されている

しかし、「適切」とされる水管理システムも、何億人もの人々に異物混入や化学汚染された水を供給している。化学的汚染物質の一部は、水を「安全」にする「処理」に使う物質である。改めて、安全とは相対的な言葉に過ぎないのである。第6章と第8章で述べたように、人間が消費できる水のほとんどは、特に自治体の水道水のものは、安全とも清潔とも言い切れないものだ。

水の「浄化」に使う化学物質は、安全とみなされるレベルの濃度と主張される。しかし、これらの化学物質は、生物であるバクテリアを殺す目的のため本質的に有毒だ。物質は、ある「量」に達したときにだけ毒となるとのパラケルススの誤りによって、水に毒を盛ることが許されている。水の「浄化」に使われる有毒物質に加えて、多くの化学汚染物質がある。特に工業や農業活動で生産され、排水として排出される物質が水中に残る。水処理システムはそれらを除去できないためだ。

第6章で述べたが、「飲料水」として供給される水は、「安全」とされるにもかかわらず、その水質は極めて悪いことが明らかだ。しかし、飲料水の質の低さという問題に対し、家庭や職場で適用できる解決策がある。水中汚染物質の一部、あるいは大部分を除去できるフィルターや濾過システムの利用である。しかし、ここで必然的に生ずる疑問は、なぜ水が一般に供給される以前に、これらのフィルターが適用されないのかである。

水のろ過システムの一つでは、逆浸透膜を使用する。これは、フッ素や医薬品を含むほぼすべての汚染物質を除去するとされる。しかし、水のミネラル分も除去するため、このシステムが有益か否かについて、いくつかの論争があった。

水は、化学記号H2Oで表される。この「純粋な」形態の水は、デトックスを助けるための短期間摂取はあっても、長期間摂取や常用には適さないと考えられている。しかし、ハーバート・シェルトンは『オーソトロフィー』[B68]で次を述べる。

□「新鮮な雨水と蒸留水がベストだ。蒸留水は、愚かにもそのように言う人がいるが、死んでいるわけではない。岩清水の純水は優れた飲み物である」

大気汚染が進めば、もはや雨水は真に清らかな水とは言えなくなる。「純水」や蒸留水が飲用不適とされる理由は、ミネラル分を欠くことである。しかし、ハーバート・シェルトンは『オーソトロフィー』[B68]の中で、この主張に反論している。

□「身体には水中のミネラルが必要と言われる。身体にミネラルが必要なことは確かだが、先に示したように、有機塩(organic salts)の形で必要とし、これを食品から得るのだ」

水分摂取に関するほとんどの情報は液体のみに言及するが、多くの食品、特に果物や野菜は相当な量の水分を含み、毎日の水分摂取量に寄与すると認識する人もいる。ハーバート・シェルトンも『オーソトロフィー』[B68]で述べている。

□「ほとんどの緑黄色野菜と新鮮な果物は、成人の身体より高い割合で水分を含む。これらを豊富に含む食事であれば、追加の水分はほぼ必要ないだろう」

さらに付け加える。

□「オルコット(Alcott)博士や他の菜食主義者たちが直接実験によって証明したことだが、彼らは、野菜のみの養生法を実行した。その食にジューシーな果物や水分の多い野菜を多く取り入れ、水無しで健康を維持し、栄養を得られることをである」

したがって、果食は身体への水供給のみならず、その水は「処理された」水よりはるかに優れた品質である。ヘンリー・ビーラー博士が『食物は最高の薬』[B9]で述べる。

□「メロン、パパイヤ、生ニンジン、キュウリ、セロリに含まれる水の質は、疑いなく、より身体に有益である、塩素添加され、化学的に処理され、あまりに頻繁に蛇口から出てくる刺激性の液体よりもだ」

しかし、完全なく果食でない限り、追加の水分を摂取する必要があるが、これらの液体は健康的な飲料でまかないうる。特に、自家製の新鮮なフルーツジュースや野菜ジュースがおすすめだ。様々な種類の果物や野菜からジュースを抽出するあらゆる機械が販売されている。前節での議論から明らかだが、ジュースにする果物や野菜は、可能な限り有機栽培のものを選ぶことだ。有害化学物質への曝露を最小限に抑え、遺伝子組み換えでないことを確実にするためだ。

清潔な有機栽培の果物や野菜から作った新鮮なジュースは、製造されたジュースやジュース飲料よりはるかに健康的であることは明らかだろう。特に濃縮液から作られ、大量の砂糖や人工甘味料を含むものよりもだ。注意すべきことは、パック入りジュースやジュース飲料は必ず低温殺菌され、この処理により栄養価がさらに低くなっていることだ。ホームメイドの新鮮なジュースは、水分摂取量の増加だけでなく、栄養摂取量も増加できる。しかし、フレッシュジュースは野菜や果物に加えて摂取すべきものであり、それら自然食品の代替品と考えるべきではない

■■■毒への曝露

「毒素(toxin)」という言葉はギリシャ語の「毒(poison)」に由来するが、その意味は特定の種類の毒のみを指すように変化している。これは、先に引用した医学界による毒素(toxin)の定義が示す通りである(訳注:「先に引用した」は、原著者の間違い)。

□「生物、特に細菌が産生する毒(poison)」

毒を生成しうる生物は数多く存在するが、その目的は、捕食者から身を守る防御的なものと、獲物の無力化や殺傷の攻撃的なもののいずれかである。その一方で、バクテリア毒素(bacterial toxin)は、病気を起こすという全く異なる目的を持つとされる。2019年1月の論文『バクテリア毒素の構造と機能における進化的特徴』[R10.34]は以下を述べる。

□「バクテリア毒素形成は、病原性バクテリアが病気を作り出す主要メカニズムである」

この論文では、一部バクテリアのみが毒素を生成すると認めているが、次の記述で、またも一つの「知識欠落」を露呈している。

□「しかし、未だに謎である点は、なぜある種のバクテリアがそのような強力な分子を作り、他は作らないのかだ」

しかし、この謎が解明されることは無いだろう。いかなる細菌であれ、特に人体にだが、病気を起こす目的のためだけに「毒」を作り出すとの誤った考えを医学界の研究者が持ち続ける限りだ。

ラテン語で毒(poison)や毒物(poisonous substance)を意味する原語は「ウイルス(virus’)」だが、その定義はすっかり変わってしまい、今ではもっぱら「感染性物質(infectious agent)」を指す。しかし、先述したように、「ウイルス」と呼ばれる粒子は、タンパク質で覆われた遺伝物質断片であり、「生きている(alive)」あるいは「感染する(infectious)」との表現を正当化するのに必要な特性は何一つ持たない。

バクテリア、ウイルス、その他の「細菌」が病気の原因とする理論には、多くの知識欠落、多くの異常や矛盾があるとこれまで示してきた。しかし、医学界はこれらの欠落、異常、矛盾の存在を認める一方で、認識してはいないのだ、それらが複合的に作用し、この理論の信憑性に疑問を付していること、この疑問が、「感染症」という現象の存在を完全に否定するほど深刻で根本的なものであることを。

医学界が「細菌論」に固執し続ける主な理由の一つは、既得権益者、特に「有害物質」を生産、使用、排出する産業を支配する者の影響である。多くの病気の原因をいわゆる「病原性微生物」に押し付けることは、これらの産業にとり、その危険な活動や製品から注意をそらすとの意味で、明らかに多大な利益をもたらす。しかし、現実には、これらの有害物質への継続的曝露こそが、人間の健康に対する真の脅威であるばかりか、すべての生物の生命を危険にさらすのである。

以前にも引用したが、毒(poison)の医学界による定義を繰り返すことは有用だろう。

□「身体組織に刺激、損傷、または活動障害を与える物質

また、これを「病気」を指す医学界による定義と比較することも有用だ。

□「あらゆる身体の異常、あるいは適切に機能しない状態」

これらの定義が、毒の効果と「病気」の著しい類似性を浮き彫りにすることが明らかだ。残念ながら、この類似性の重要性が、パラケルススの誤りへの言及により、常に難読化されている。適当な量であればすべてが毒というものだ、これが「毒」の医学界定義に示されている。

□「大量に摂取すれば、ほとんどすべての物質が毒として作用するが、この言葉は通常、ヒ素、シアン化物、ストリキニーネなど、比較的少量で有害となる物質についてのみ使われる」

ある物質が毒として作用するか否かは用量で決定されるとの考え方は、大きな誤りである。ある物質の投与量がその根本的性質を決めることはできない。ハーバート・シェルトンは、1968年の論文『毒とは何か』[R10.35]で次を述べている。

□「毒とは、質的なものであり、単に量的なものではない

しかし、毒物の用量は、起こす害の程度を決定する。低量の毒物なら害がないように見えても、害がないことを意味しない。低量では明らかな害がない理由の一つは、身体の毒素排出と損傷修復能力のためだが、低量では「安全」だとは意味しない。毒物による害の程度は、それに曝露した個人の健康状態にもよる。機械論的な人体観に基づく医学界は、この状況を無視している。しかし、この考え方には致命的欠陥がある。人体が本来持つ自己防衛や自己回復メカニズムの存在を認めず、健康状態や毒素の体内蓄積に関する個人のユニークさを無視するためである。

さらに、「ほとんどあらゆる物質」が毒として作用しうるとの考え方には、区別ができていない。本質的に毒性があり、全生物に有害な物質と、本質的には毒性がないが、それでも一部の生物に悪影響を与えうる物質の区別である。この区別の重要性を強調し過ぎることはない。しかし、ヒ素と柑橘類を比較することで、この区別を説明することができる。

ヒ素は自然界にあり、その本来的な毒性のため、猫、犬、ウサギ、人間を含む全生物に害を及ぼす。ヒ素の害の程度は、猫、犬、ウサギ、人間のいずれの生物種においても、曝露レベルや、この特定の毒素を排出し損傷を修復する生得的能力の有無により異なる。また、ヒ素の害の程度は、猫、犬、ウサギ、人間のそれぞれの健康状態や毒素の体内蓄積量によって異なる。

柑橘類は本来毒物ではなく、人間には極めて適した食品だが、猫、犬、ウサギは耐性が低く、「毒物」とさえ考えられている。しかし、ネコは肉食、イヌは雑食、ウサギは草食であり、前節で述べたように果食である人間とは食餌条件が異なる。この違いは、解剖学的、生理学的な違い、特に消化器官の違いによるものだ。どの物質を「食物」とし、あるいは「非食物」として認識するかは、この違いによって決まる。とはいえ、食品の過剰摂取は不快な作用をもたらすかもしれない。しかし、この不快感をもって、食品が毒になったと解釈すべきではない。この不快感の主目的は、摂取済食物を処理する消化器官の能力を妨害するため、それ以上の食物摂取しないようにすることだ。

また、本来毒性がない物質が悪影響となる場合の理由として、書籍『解剖学と生理学』の第26章[R10.36]に記される恒常性の乱れが関係している。

□「恒常性、つまり生体内の状態を一定に保つことは、全生物の基本的性質である」

恒常性の要求事項としては、身体の正常機能に必要な物質がすべて「適正量」で存在することである。「誤った量」で存在する物質は恒常性を乱し、身体の正常機能を阻害する。この書籍では次を述べる。

□「人間の体内では、化学反応に関わる物質が狭い範囲の濃度に維持される必要がある。一つの物質が過大あるいは過少でも身体機能に支障をきたす」

必須物質の「誤った」量や濃度により起こる身体機能障害は、前節で述べたように、過剰なカルシウムと不十分なマグネシウムの組み合わせで起こる健康悪影響によって示すことができる。カルシウムとマグネシウムは、その体内量が単純に「間違って」いるだけで「毒」になるわけでないこと明らかだろう。これは明らかにマグネシウム不足の場合である。物質の不十分レベルの存在によって、「毒」にはなりえない

毒性物質としては、化学工業の研究所で合成した化学物質や化合物の大部分のみならず、第6章で述べたように、様々な産業活動により地下深くから露出したり地表に現れた天然由来物質も多く含まれる。これらの物質には本質的な毒性があり、生命維持のための人体の生化学的プロセスとは相容れない。つまり、どんな量や曝露レベルであっても、摂取、吸入、注射、その他で体内に吸収すべきではないことを意味する。

物質により害の程度は異なるが、いずれも細胞レベルでのダメージを起こす。なぜなら、すべてとは言わずとも、ほとんどの有害物質が害をもたらすメカニズムは、酸化ストレスを誘発するフリーラジカルの生成であり、それが体内細胞、最終的には組織や臓器へのダメージにつながるからだ。ほとんどの慢性的健康問題で共通の基本メカニズムは、酸化ストレスであると認識する証拠が増えつつあることは、「有害物質」と「病気」の関係が直接的であり、因果関係のあることをさらに示している。

有害物質が悪影響を及ぼすメカニズムが初めて認識されたのは、30年以上前である。1986年の論文『フリーラジカルと環境毒素』[R10.37]は次を述べる。

□「我々の環境を汚染する化学物質の中には、フリーラジカルの形成能力により毒性を発揮するものがある」

1990年代の研究が発見したことは、フリーラジカルの形成能力は、「ある」化学物質に限定されず、ますます多くの化学物質の共通メカニズムであることだ。これを、1993年の論文『毒物学におけるフリーラジカル』[R10.38]が示す。

□「化学物質の毒性メカニズムへのフリーラジカルの関与がますます認識されつつある」

人間の身体は、日常的に曝露する有害物質の多くに対して無防備ではない。それどころか、身体には毒素の体外排出のための多くの器官やシステムがある。これは解毒作用として知られる。解毒作用に最も重要な役割を持つ臓器は肝臓であり、医学界による肝臓の定義は以下である。

□「”毒物の解毒に重要な役割を持つ」

この定義では以下も述べる。

□「肝臓は多くの重要な病気の発生場所である」

「病気」とは、肝炎、肝硬変、赤痢などを指している。これらすべてが、特に嘔吐や下痢といった、その一般的な症状の示すように、身体の「毒物」排出の働きを表している。

毒物は肝臓にダメージを与えうるが、身体にはこの重要臓器の再生能力もあり、2007年の論文『肝臓再生』[R10.39]は、次を述べる。

□「肝臓は、失った質量を回復し、その大きさを生体に合わせることができ、同時に、再生プロセス全体において身体恒常性を完全にサポートする。”

毒素排出能力と肝臓再生能力の二つが理由で、人体は一定レベルの毒性物質曝露に耐えられる。しかし、生命を脅かすような極度の毒性物質、例えば青酸カリに一度でも曝露すると、身体の自己保護と自己回復のメカニズムが損なわれうる。これらのメカニズムはまた、毒性物質への継続的曝露によっても損傷されうる。この毒性物質は、一度の投与や曝露では生命の危険は無いものの、細胞レベルのダメージを与え続け、身体機能の能力を低下させる。このような持続的曝露はまた、肝臓の適切に働く機能を低下させ、この重要な器官に損傷を与えうる。

残念ながら、肝臓へのダメージが知られる「毒性物質」の一種としては、肝臓に影響するものを含む病気の治療に「薬」として使われる医薬品である。一般的な医薬品の肝臓への害については、1986年の論文『薬物による肝障害の範囲』[R10.40]が、次を述べる。

□「一般使用される薬物は肝臓に毒性作用を及ぼすことがあり、これは人間に自然発生するほぼすべての肝疾患を模倣できる」

病気は自然発生するものではない。「新たな」説明においては、病気とは有害物質や影響への曝露による、身体の機能への障害を意味する。したがって、薬物の毒性作用が病気を「模倣」するとの主張は不誠実なものだ。薬物の本質的な毒性が、肝臓へのダメージ原因となっているのだ。言い換えれば、それらが「肝臓病」の直接的原因となのである。この現象は、2010年の論文『薬物性肝障害』[R10.41]でも認識されており、次を述べる。

□「薬物性肝障害(Drug-induced liver injury、DILI)は一般的であり、ほぼ全てのクラスの薬剤が肝疾患を起こしうる」

パラセタモール(アセトアミノフェン)は最も一般的に肝障害に関連する薬だが、この論文では、肝臓ダメージ知られる他のクラスの「薬」のいくつかにも言及している。

□「麻酔薬、抗がん剤、抗生物質、抗結核薬、抗レトロウイルス薬、心臓の薬など、幅広い種類の様々な薬理学的薬剤が肝障害を誘発する可能性がある」

この声明は明白な認識である、「医療」の名で病気治療のため「薬」として使う物質が本質的に有毒であること、健康回復どころか肝臓に損傷を与えること、それにより毒素を処理して体外排出する主要器官の活動を損なわせることである。

薬は身体の機能障害を刺激、遮断、抑制、安定化、あるいは修正を意図する作用により「効く」と、医学界は主張するが、機能障害の原因は明らかにこれらの「薬」であり、身体の自己治癒メカニズムはそれを改善する必要があるのだ。しかし、残念なことに、毒素排出、損傷修復、健康回復の身体能力が、誤りにも、ほぼ常に薬によるものとされる。ハーバート・シェルトンが説明する。

□「こうした抵抗と排出の過程、損傷修復の過程が、薬物の作用と間違われる」

薬物に可能な唯一の作用としては、事実上すべての有害物質が細胞レベルで身体に害を及ぼすと知られるメカニズム、すなわち酸化ストレスを誘発するフリーラジカル生成である。2012年の論文『薬物誘発性酸化ストレスと毒性』[R10.42]は次を述べる。

□「薬物誘発性酸化ストレスは、多くの組織や器官系における毒性メカニズムとして関係する」

薬物誘発性酸化ストレスの悪影響を受けると知られる臓器の一つが肝臓である。これについては、肝炎、肝硬変、赤痢などの「肝疾患」における酸化ストレスの存在が知られることで示される。

さらに、上記引用の2010年のDILIに関する論文[R10.41]が示すように、抗結核剤は肝障害を誘発すると認識されるクラスの薬剤の一つである。言い換えれば、結核治療の薬剤は肝毒性を知られている。2018年の論文『酸化ストレスとファーストライン抗結核薬による肝毒性』[R10.43]では、抗結核薬による肝毒性を「重大な有害反応」と言及し、次を述べる。

□「イソニアジド(訳注:結核予防や治療の第一選択薬)誘発の肝毒性と酸化ストレスの関連性は、それなりに良く理解されている」

イソニアジドなどの第一選択薬に患者が反応しないのは、「菌」が「耐性」を獲得したためと解釈されがちである。しかし、先述したように、これは誤った解釈である。この論文が明確に述べることは、イソニアジドが肝毒性を起こすこと、そしてこの毒性に酸化ストレスのメカニズムが関与することである。つまり、イソニアジドでの治療後に患者の体調不良が続き、しばしば悪化するのは、肝毒性とこの毒素を適切に処理・除去する肝臓の能力の低下のためだ。あらゆる種類の医薬品による肝障害の問題は、2010年のDILIに関する論文[R10.41]で、次を認めていることで示されている。

□「実際のところ、米国では薬物による肝毒性が急性肝不全の最大原因である」

薬物誘発の肝毒性が米国でこれほど深刻な問題になった理由が、2017年8月の記事『多すぎる薬? 処方箋薬に対するアメリカの恋愛事情』[R10.44]で浮き彫りにされている。この記事では、アメリカ人の半数以上が少なくとも一種類の処方薬を服用するとの調査結果に言及し、アメリカ人は他国の国民よりもはるかに多くの「薬」を服用すると述べる。さらに、アメリカにおける処方薬の使用量はここ数年で劇的に増加している。これが、2017年8月の記事『アメリカ人の処方薬服用量が増加:調査結果』[R10.45]でも示されている。

□「(ある健康調査会社によれば)アメリカの大人と子供の処方箋の数は、1997年から2016年の間に85%増加し、年間24億から45億になった」

もし、医学界が主張するとおり医薬品が安全で効果的であれば、アメリカ人は世界で最も健康な国民のはずだが、そうではない。第1章の議論では、アメリカ人が「先進国」中で最も不健康な国民と示す報告書に言及した。さらに、医薬品による害は、先に引用した『多すぎる薬?』[R10.44]の記事にあるように、「権威ある」組織も認識している。この記事は述べる。

□「(CDCとFDAのデータに基づく推定によれば)2014年には約130万人が薬物副作用のために緊急治療室に行き、約12万4千人がそれで死亡した」

薬物有害作用の規模は深刻な懸念事項だ。特に、2030アジェンダの目標である、すべての人が、どこでも、国民皆保険にアクセスでき、『必須』の医薬品とワクチンの提供を含む医療を受けられるようにすることに関して、重要な意味を持つ。残念ながら、これらの製品の毒性は、健康問題の解決でなく、必然的に悪化させることになる。

人々が一般的に曝露する「有害物質」のもう一つのグループは、農薬(pesticide)と総称されるものである。その目的は、害虫(pest)とみなされる様々な生物を殺すことだ。したがって、農薬は意図的に有害であるが、定義上も有害なものである。接尾辞「-cide」は、ラテン語の「殺す」が由来である。農薬の種類としては、殺虫剤、除草剤、殺鼠剤、殺菌剤がよく知られる。他にも多くの種類があり、EPAのウェブページ『農薬成分の種類』[R10.46]によれば、抗菌剤、殺生物剤、殺菌剤、微生物農薬などがあり、これらはすべて「病原微生物」、特にバクテリアとウイルスを殺すために使用される。しかし、ウイルスは生きていないので、「生物」と呼ぶべきではなく、つまり「殺す」ことはできない。

EPAのウェブページ『農薬成分に関する基本情報』[R10.47]に記述されていることとして、農薬には、対象の害虫を無効化・殺傷する有効成分(active ingredients)と、製品の保存期間を延ばすなど他の働きをする不活性成分(inert ingredients)の両方が含まれることだ。EPAは有効成分と製品全体を評価するが、不活性成分はEPAの「承認」しか必要としない。このページは述べる。

□「連邦法の下では、不活性成分の正体は企業秘密情報である」

特に注目すべきは、EPAウェブページにある次の記述である。

□「『不活性(inert)』という名称は無毒との意味ではない」

さらに、米国の法律では、不活性成分の製品ラベル表示義務はない。この状況が、健康悪影響の可能性判断のための独立した科学的分析を妨げている。これらの成分の単独での、あるいは他の化学物質との組み合わせでもである。これは米国の法律であるが、最大の化学企業は多国籍企業であり、第9章で述べるように、ほとんどの規制機関は企業の既得権益に大きく影響されていることを強調せねばならない。

工業的農業では様々な種類の農薬が使用される。これが、有機栽培食品を選択すべき最も説得力のある理由の一つである。しかし、農薬は「医療」の名の下に、寄生虫を媒介して様々な病気を起こすという数種類の「ベクター(媒介者)」を抑制、しかし主には殺すためにも使用される。これらのベクターの多くが昆虫であり、2017年10月のWHOファクトシート「媒介性疾患(Vector-borne diseases)」は次を述べる。

□「媒介性疾患とは、寄生虫、ウイルス、細菌により起こる人間の病気である。これらは、蚊、サシバエ、トリアシナガバチ、クロバエ、ダニ、ツェツェバエ、ダニ、カタツムリ、シラミなどが媒介する」

マラリア、住血吸虫症、ヒトアフリカトリパノソーマ症、リーシュマニア症、シャーガス病などの病気は、すべて第8章で述べた。これらの病気に対するWHOの対応は、治療やワクチン接種プログラムの実施だが、殺虫剤処理ネットや室内残留散布技術などのベクター抑制戦略も含む。媒介性疾患問題は悪化していると主張される。これが、2017年のWHO報告書『世界のベクター抑制対応 2017-2030年』[R10.48]で示されている。

□「近年、媒介性疾患は新たな領域に進出した。かつては熱帯・亜熱帯に限られた多くの病気が、今では温帯でも見られるようになった」

これ以降『ベクター抑制』報告書と呼ぶが、本報告書では、2030年までにすべての国で媒介性疾患の流行を防ぐことを目標の一つとして掲げており、これは、これまで問題点を指摘してきた2030アジェンダと明確に整合している。

このような媒介性疾患の蔓延を防ぐ「公衆衛生対策」として「航空機消毒」がある。これは、航空機内に誤って侵入した昆虫を殺虫剤で退治し、他国への侵入を防止するものだ。1940年代にマラリアの蔓延を防ぐために初めて導入されたが、その対象はマラリア被害が大きい国に限定されていた。『ベクター抑制』報告書は、「世界的な旅行の増加」により、昆虫ベクターが新たな地域に移動し、これらの病気の発生増加の一つの要因と主張する。しかし、興味深いことに、EPAのウェブサイトのページ『航空機の無昆虫化』[R10.49] には、次が述べられている。

□「米国疾病対策予防センター(CDC)によれば、殺虫剤による機内の蚊退治は、蚊の媒介する病気の侵入や拡大の防御に有効と示す証拠は無い」

しかし、航空機がこれらの昆虫を「新天地」に運び、そこで病気を起こすとの基本的な考えには、根本的問題がある。第8章のマラリアに関する議論では、アノフェレス蚊と、それが運ぶとする原虫は、あらゆる場所におり、南極大陸を除くすべての大陸に生息することを示した。

にもかかわらず、マラリア流行終息という2030アジェンダ目標は、他多くの「顧みられない熱帯病」への関心の高まりと相まり、「航空機消毒」プログラムの拡大を促進する。これらのプログラムで使用する、WHOの推奨する殺虫剤は、2013年のIPCS(国際化学物質安全性計画)の報告書『航空機無昆虫化殺虫剤』[R10.50] に引用されており、次を述べる。

□「航空機の無昆虫化について、WHOの現在の推奨としては、空間噴霧にはd-フェノトリン(2%)、残留消毒にはペルメトリン(2%)である」

ペルメトリンやフェノトリンは合成ピレスロイドで、人に対する「低毒性」をうたうが、これは安全を意味はしない。しかし、WHOのWebページ『航空機消毒』[R10.51]には、次が記載されている。

□「WHOは、指定殺虫剤スプレーの推奨通りの使用において、健康に有害との証拠を発見していない」

特に2013年のIPCS報告書に照らせば、この発言は不誠実だ。こう述べている。

□「現在まで、航空機消毒用殺虫剤について、広く認められた査読済みのヒト健康リスク評価モデルはない」

WHOが流布した情報の多くの矛盾は明らかだ。健康リスクはないとの一方で、リスクは評価されていないとの主張は、『健康的な環境』[R6.1]報告書のそれとは大きく異なる。ここでは、ベクターの「管理」に使う殺虫剤の毒性を認め、次を述べているのだ。

□「化学物質の使用は、人畜への毒性、環境汚染、持続可能性の問題を提起する。抵抗力が常に脅威であり続けるためだ

WHOが流布する情報の矛盾がさらに示されるのは、殺虫剤の有害性の否定と、WHO主導の協議結果の比較である。これは、2018年7月の報告書『航空機消毒の方法と作業手順』[R10.52]である。この報告書では、一部参加者の定期した使用殺虫剤の有効成分に関する懸念に言及し、次を述べる。

□「客室内に使用すれば、そのいくつかは人体に有害の可能性がある」

「航空機消毒用」殺虫剤成分の健康悪影響についての、WHOによる曖昧化の一方で、その有効成分、特にペルメトリンが人間の健康に有害と示す証拠が増えている。これが、2016年の論文『ペルメトリンによる酸化ストレスおよび毒性、代謝について』[R10.53]で示されている。もともとペルメトリン(PER)は「哺乳類への毒性が低い」と考えられていたと述べるレビューだが、次のコメントが加えられている。

□しかし、世界的に使用が広まるにつれ、PERが動物や人間に対して様々な毒性を持つ可能性を示唆する証拠が増えてきた」

WHOのウェブサイトは、この科学的証拠を盛り込む早急な更新が必要と思われる。

他の毒性物質と同様、ペルメトリンの毒性の作用メカニズムには、酸化ストレスが関与している。また、論文は示す。

□「PER関連の様々な毒性に酸化ストレスが重要な役割を果たすと示す研究が増えてきている」

さらに、この論文で述べることは、ペルメトリンの毒性に神経毒性や生殖毒性などがあることだ。ペルメトリンをベースとする殺虫剤は、蚊で媒介されるというジカウイルスの「危険」があるとされる国を含むフライトの機体消毒に使用されている。注意すべきは、このウイルスが起こすという健康被害には「神経障害」や「新生児奇形」などがある。言い換えれば、ジカウイルスは、ペルメトリンによると証明済の健康被害に全く同じものを起こすと主張されているのだ。

これまでの議論、特に第8章での議論は、いわゆる「媒介性」疾患が、蚊などが媒介する寄生虫により起こるのではなくく、「新たな」説明が述べるように、疾患は「有害物質」への曝露の結果であることを示す。

人々が曝露する「有害物質」は、医薬品や農薬のみでないことは明白だ。しかし、上の議論の目的は、有害成分を含む製品が医療の名で不適切に使用されていることを浮き彫りにすることである。

大気中の二酸化炭素濃度上昇による気候変動が人類にとっての最も深刻な脅威であるとの誤った報道が絶えない。しかし、人類にとって非常に現実的ではるかに深刻な脅威の認識が、小さいながらも一般市民の間で高まってきている。これは、多くの様々な産業により生産、使用、排出される有害物質による環境汚染によってもたらされているものだ。また、研究者の間でも、ますます認識が高まっていることは、環境汚染物質が人間の健康問題の重要な寄与因子であることである。2017年の論文『汚染物質の毒性に及ぼす栄養の影響:エピジェネティックな制御に関する新たな知見を含む最新情報』[R10.54]が示す。

□「環境汚染物質への曝露は世界的な健康問題であり、多くの慢性疾患の発症に関連する」

この論文で具体的に言及される環境汚染物質は、POPs(残留性有機汚染物質)、重金属、大気汚染のみであり、他にも多くの汚染物質が存在する。しかしこの論文では、これらの汚染物質が有害影響を及ぼすメカニズムとして、酸化ストレスを挙げている。

第6章では、家庭や職場で一般使用される様々な製品の化学成分の危険性について述べた。その中で、一部は個別試験され「安全」と判断されているものの、大半の化学物質は未試験のままであることも明らかにした。さらに重要なことは、人々が日常的に曝露する化学物質の組み合わせについて、その安全性や健康悪影響の可能性について、一度も試験されていないことである。

環境汚染による健康被害はあまりに大きく、事実上、誰も健康にはなれないように思えるかもしれないが、必ずしもそうではない。先述したように、身体には毒素排出、損傷修復しての健康回復のための生得的メカニズムがある。これらのメカニズムや、その調整するプロセスは、有害物質への継続的曝露により損傷を受け、その有効性が弱まる。しかし、この損傷は軽減することができるが、有害物質への曝露を最小限に抑えるための継続的な努力が必要である。また、栄養素、特に抗酸化物質を最大限に摂取する継続的努力が必要となる。これがフリーラジカルに対抗し、それによる体内損傷を防ぐのである。

必要情報がすべて揃って初めて、情報を得た上の決断が可能になる。したがって、有害物質への曝露の最小限の抑制や回避には、有害物質からの成分を含む製品を使うあらゆる種類の利用例を知ることが不可欠だ。全有害物質の完全排除は不可能かもしれないが、かなりの割合は確実に可能である。特に、身体に直接曝露する製品の成分だが、摂取や吸入するもの、身体に直接塗布するものなどが含まれます。

医薬品やワクチンもこの範疇に入るものの、体内に直接取り込まれるのは、食べ物や飲み物として摂取される製品である。前節の栄養と水に関する議論で示したことは、新鮮で丸ごと、有機栽培された植物由来の食品からなる食事が、栄養素摂取量を最大化することだ。このような食事はまた、毒素摂取の最小限の抑制にもつながる。工業的農業で使う有毒化学物質の摂取を排除できるためだ。さらに、このような食事は、栄養素の摂取増加だけでなく、解毒も助ける。ラッセル・ブレイロック博士が『健康・栄養の秘密』[B10]で説明する。

□「多数の農薬、除草剤、外来有機化学物質、フッ素、水銀、アルミニウムほかの有害物質が、我々の身体を襲っている。これらの化合物はすべて解毒されねばならず、我々の解毒システムに大きな負担をかけている。これは栄養に依存するのだ」

時間をかけて毒素が蓄積されたと同様に、体外排出にも時間がかかるため、解毒は継続的なプロセスであることに注意されたい。それに加え、毒素の体外排出過程では、一般には「病気」に関連付けられる「症状」を伴うことが多いことも強調しておきたい。しかし、「新たな」説明においては、これらの症状は正常な身体のプロセスとして認識されるべきである。したがって、医薬品で「治療」されるべきでない。

解毒促進方法として特定のプログラムが宣伝されているが、強毒性物質による急性中毒の場合を除き、推奨されない。こういったプログラムを避ける理由の一つは、身体の解毒器官が損なわれ、排泄プロセスが本来あるべき効率で機能しない可能性があることだ。身体が自然に解毒を行えるようにし、毒素の摂取を最小限に抑え、栄養素を最大限に摂取することで、この生来の自己治癒力をサポートすることが望ましく、より安全である。

日常的に身体に直接塗布される主な製品グループとしては化粧品やパーソナルケア製品だが、その多くに有毒成分が含まれることは既に述べた。しかし、有害物質曝露を最小限に抑え、回避できる類のものである。エプスタイン(Samuel Epstein)博士が『有毒美人』[B36]で説明する。

□「今日の化粧品とパーソナルケア製品は、有害成分とその健康への危険性を回避できる最大の製品でありながら、一般にはそれが認識されていない」

多くの化粧品やパーソナルケア製品に使われる有害成分の健康への危険性は、もはや「一般に認識されていない」ではない。そうではなく、この問題は十分注目され、これらの有毒化学物質の懸念に対する社会の関心を高めている。このような逆評判が、製品メーカーにも大きな関心を呼び、一部は製法を変え、フタル酸エステル、パラベン、SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)、SLES(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム)などの有毒成分を「新たな」化学物質に置き換えている。しかし、必ずしも「より安全な」製品になるとは限らず、代替化学物質には、より有毒でないにしても同等毒性が判明している。

幸いなことに、有害成分を含まない化粧品やパーソナルケア製品を製造する新たな企業がたくさんある。これらの企業や製品の情報は、ネット上で見つけられる。米国の団体環境ワーキンググループ(EWG)のウェブサイトは有用なリソースの一例であり、化粧品やパーソナルケア製品に含まれる有毒な化学成分や、より安全な代替品の情報を提供している。


Good Tradeのウェブサイトもまた有用なリソースの一例である。それが、『ナチュラル&オーガニックメイクアップブランド10選:あなたの顔があなたを好きになる』[R10.55]という記事で示されている。しかし、購入する製品成分は、自分で調べねばならない。特に、「ナチュラル」という言葉が、マーケティング戦略として使われる可能性がある。記事は述べる。

□「『ナチュラル』や『グリーン』を売りにするメイクアップブランドの多くは、実はそのどちらでもないことが多い」

人々の取れる最も強力な行動の一つは、「財布で投票する」ことだ。有毒な製品を拒否し、より安全で無害な製品の製造者を支援することである。

強調しておくべきこととしては、この節で紹介する、より安全な代替製品の紹介ウェブサイトは、その掲載する製品の推奨や推薦として解釈されるべきではないことだ。これらのウェブサイトは、有害物質への曝露を減らしたい人々が、十分な情報を得た上で購入製品を決定できるよう、どんな情報を入手できるかを説明する目的でのみ掲載している。


EWGのウェブページ『化粧品の安全性に関する迷信』[R10.56]にリストされている神話のひとつとして、化学物質は一般にごくわずかな量しか体内に吸収されないとの考え方がある。この神話に対するEWGの答えとして、フタル酸エステル、パラベン、トリクロサンなど多くの有害化学物質について、男性、女性、子供から、かなりの量が検出されたとの研究報告が含まれている。さらに、第6章の「毒された身体」についての議論では、2014年のIPCSの『経皮曝露』[R6.151]報告書に言及したが、そこでは物質が皮膚バリアを通過して「全身的影響」を起こす可能性を認めており、さらに医学界のもう一つの「知識欠如」を次の記述で露呈している。

□「しかし、ほとんどの化学物質について、経皮吸収と体内の他の場所で観察される健康影響との関係は、まだ十分理解されていない」

多くの化学物質が皮膚を通して血中に入ると認識されているのみならず、フタル酸エステル、パラベン、トリクロサンはすべて酸化ストレスに関連することに注目すべきである。これが明確に完全な説明を提供することは、皮膚に塗布された有害化学物質と健康への悪影響の関係である。その一方で、IPCS報告書は理解不足を露呈している。

有害物質曝露の大きな原因となるもう一つの大きな製品群としては、家庭や職場の清掃や維持管理に使用される製品がある。これらの製品は様々な化学成分を含むが、相当の割合で揮発性有機化合物(VOC)が含み、これは気体として放出され、吸い込んでしまう物質である。このため、VOCの健康被害で最も多いのは呼吸器系だが、その他の重要な器官やシステムも悪影響を受ける可能性がある。

EPAのウェブページ『揮発性有機化合物の室内空気質への影響』[R10.57]には、VOCの健康への悪影響として、肝臓、腎臓、中枢神経系への害が記載されており、その有害性を明確に示す。VOCとしてよく知られる二つはベンゼンとホルムアルデヒドで、いずれも酸化ストレスとそれに伴うフリーラジカルによる細胞障害により毒性を発揮すると知られる強毒性化学物質である。VOCを含む可能性のある製品種類が、PAのウェブページにあり、次である。塗料、塗料剥離剤、その他溶剤、洗浄剤、消毒剤、建材や家具、グラフィック・アートや工芸品など。ドライクリーニングでよく使用されるパークロロエチレンもVOCの一種である。

しかし、VOCや他多くの有害化学物質への曝露は、最小限の抑制や回避も可能である。毒性が低い、あるいは無害な成分を含む、より安全な製品が数多くあるからだ。例えば、EWGのウェブサイト『健康的掃除ガイド』[R10.58] では、米国で入手可能な、より安全な掃除製品に関する情報を提供している。Good Tradeのウェブサイトでも、『気にする家庭のためのナチュラルでエコな11の掃除用品』[R10.59]という記事のように、より安全な掃除製品の情報を提供している。多くの掃除作業は、完全に自然な材料を使って行える。有機消費者協会(OCA)の記事『あなたの家庭の掃除用具はどの程度有害でしょうか?』[R10.60]では次を述べる。

□「石鹸、水、重曹、酢、レモン汁、ホウ砂などの安全でシンプルな材料に、少々のハードワーク、粗めのブラシでこすれば、ほとんどの家庭で必要な掃除はできる

衣料品もまた、第6章で述べたように、有毒素材や工程での製造が多い製品群のひとつだ。有名衣料品メーカーには有毒化学物質の使用削減に合意したものもあるが、オーガニックコットンなどの無害な素材や、アゾフリー染料を使う、より安全な工程で衣服を製造する新たな企業もたくさんある。Good Tradeのウェブサイトにある『ファストファッションに対抗するフェアトレードとエシカル衣料ブランド35社』[R10.61]には、こうした新たな衣料品メーカーが多数掲載されるが、すべてではないが、そのほとんどが米国に本拠地を置く。 ヨーロッパ拠点のいくつもの衣料品会社のリストが、Ecocultのページ「サステナブルでエシカルなヨーロッパのベストファッション・ブランド」[R10.62]にある。また、ソフトファニッシングや寝具にも、より安全な選択肢がある。これは、Good Tradeのウェブページ『オーガニックシーツと寝具の10の情報源が、あなたを優しくサポートする』[R10.63]に記載されている。

プラスチックも有害物質グループの一つであり、多種多様な製品、容器、包装材に幅広く使用される。第6章で、プラスチックの本質的な危険性と低生分解性について既に説明した。しかしながら、プラスチックによる環境汚染問題への社会的認知は高まっている。また、プラスチックを使わない製品も増えてきている。例えば、Life Without Plasticsのウェブサイトでは、プラスチックを使わない製品が多数紹介されている。また、Recyclingのウェブサイトのページ『浪費のライフスタイルを始めよう』にて、米国で販売されている様々なプラスチックフリー(プラスチック無し)製品を紹介している。英国では、The Plastic Free Shopのウェブサイトサイト[R10.65]で、プラスチックフリー製品が紹介されている。

この節での議論から十分明らかなこととしては、多種多様な製品製造に有害化学物質は全く不要であり、毎日でなくとも人々が日常的に使用する製品の多くに、より安全で低毒性の代替品があることだ。同様に明らかなことは、より安全な代替品の選択により、各個人の有害物質曝露レベルを大幅に低減できることである。

■■■電磁放射への曝露

電磁波は、電磁波スペクトルと総称される周波数と波長の範囲に広がるエネルギーの一形態である。例えば、可視光線やマイクロ波など、電磁波の種類により異なる名称が付けられているが、すべての電磁波は、そのエネルギー強度により電離型と非電離型に分類される。

先述したように(第6章)、地球には常に「自然背景放射」と呼ばれる低レベル電離放射線があった。これは、地殻やその下に自然にある放射性物質が放出する放射能と、太陽や星から放出される宇宙線が大気中の結果である。鉱業活動などで放出された放射性物質により、放射レベルは徐々に増加してきたが、20世紀半ばに核兵器の開発、実験、使用の結果、大きく変化した。その後、原子力産業、特に原子力発電所により、環境中の電離放射線レベルは上昇を続けている。被ばくレベル上昇に寄与する電離放射線の利用例は他にもある。2016年4月のWHOのファクトシート『電離放射線、健康影響と防護策(Ionizing radiation, health effects and protective measures)』[R0.1]は以下を述べる。

□「電離放射線には、医療、産業、農業、研究など、多くの有益な用途がある」

自然界の電磁環境は、「自然でない」非電離放射線によっても変化してきた。この非電離放射線は、家庭用、産業用の、ほぼすべての機械や機器の主電源として交流電力が導入された後に増加し始めた。先述したように、電気を利用するすべての電気機器や器具は、電磁界(EMF)を発生させる。20世紀後半から電磁放射の環境濃度はさらに上昇し、より急速に増加している。携帯電話や無線通信などの通信産業が開発したRFやELF領域の電磁波を利用する新技術の結果である。

地球の電磁環境は、信じがたい速さ、短期間で、取り返しのつかない変化をしているのが明らかだ。ロバート・ベッカー(Robert Becker)医学博士は、1990年の著書『クロス・カレント 』[B4] (邦訳:新森書房)でこの状況を説明している。

□「今日、我々はほとんど人工的なエネルギーの海を泳いでいる」

この人工的エネルギーの海の問題としては、生物、特に人間の自然な電気システムの機能を妨害することである。クリントン・オーバー(Clinton Ober)、マーティン・ザッカー(Martin Zucker)、スティーブン・シナトラ(Stephen Sinatra)医師は、『不調を癒す《地球大地の未解明》パワー アーシング 』[B56](邦訳:ヒカルランド)で次を説明する。

□「我々全員が、電気的な惑星に住み、電気的に機能している」

興味深いことに、根本的に宇宙全体が電気的性質を持つことを示す有力な証拠が次々と出てきている。

人間の健康は、「人工」電磁波といった「有害影響」や、「人工」化学物質のような「有害物質」への曝露により悪影響を受ける可能性がある。化学産業は、「すべては化学物質でできている」との主張に基づき合成化学物質の生産と使用を正当化するが、「物質」は電気的な性質も持つので、この主張は誤解を招きかねない。

すべての物質は原子から構成され、各原子は陽子、中性子、電子という三つの主要な素粒子の組み合わせで構成される。化学元素の性質は原子構造によって決まる。例えば水素原子は陽子一個と電子一個、炭素原子は陽子六個と電子六個を含む。しかし、物質の電気的な側面は第一義的なものである。すべての素粒子が電気的性質を持つからだ。陽子は正電荷、電子は負電荷を持ち、中性子は正負電荷が等しく、釣り合って全体として中性になると言われる。ほとんどの原子では、陽子数は電子数と等しいので、全体として電荷は発生しない。しかし、陽子と電子の数が異なるときに原子は電荷を持つ。電荷を持つ原子や分子はイオンと呼ばれる。

イオンは様々なプロセスで生成されるが、ひとつが「電離」と呼ばれるもので、液体に溶けたときに化学化合物がイオンなど小さな粒子に分離することを指す。例えば、塩化ナトリウムは水に溶けて、プラスのナトリウムイオンとマイナスの塩化物イオンに分離する。しかし、体内では、電解質とも呼ばれるイオンが、細胞膜の間に電流を流すなど重要な働きをする。特にナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの重要なミネラルもまた電解質であり、化学的恒常性のみならず電気的恒常性の維持にも極めて重要な役割を担う。

電気的性質が第一義的だが、物質の電気的・化学的側面が密接に関連することは明らかだ。したがって、人体を含む「すべてのもの」は、電気化学的な性質を持と言う方が正確である。

イオンは電離放射線によっても生成されるが、電離とは全く異なる過程をたどる。先述したように(第6章)、電離放射線は分子結合を切断して自由電子を放出させるのに十分なエネルギーを持つ。「自由電子」は「フリーラジカル」とも呼ばれるが、生体細胞にとっては電離放射線が生成するフリーラジカルの方がはるかに危険だ。ジョン・ゴフマン(John Gofman)医学博士は、1997年の論文『電離放射線に関するフリーラジカルの誤り』[R10.66]で、次を説明する。

□「電離放射線の照射を受けた細胞は、生物学的に異常な量のエネルギーを瞬時にランダムに放出する」

非常に短時間に「異常な量」のエネルギーが放出されれば、ほぼ瞬時に悪影響が生じる。先に引用したWHOのファクトシート『電離放射線(Ionizing radiatio)』[R0.1]には、次が記されている。

□「放射線量があるレベルを超えた場合、皮膚の火傷や急性放射線症候群などの急性健康被害が発生しうる」

CDCのウェブページ『急性放射線症候群:臨床医のためのファクトシート』[R10.67]では、「急性放射線症候群」を急性の「病気」と定義し、「放射線毒性」「放射線障害」とも呼ばれるこの症状が、高線量の透過性放射線を浴びた結果起こると述べる。このページでは、この「病気」に罹患したであろう人々として、広島と長崎の原爆の被爆者をあげるが、核爆弾による電離放射線の恐ろしい影響を、病気や症候群と表現するのは全く不適切である。

残念ながら、医学界は「病気を起こす存在」は破壊せねばならないとの考えに基づき動いている。これらを倒すための武器として、特定の病気、特にがん治療用の電離放射線がある。患者を殺さずにがんを破壊すると言われるため、電離放射線が『有益』と信じられている。にもかかわらず、ファクトシートは次を認めている。

□「低線量の電離放射線は、がんなど長期的影響のリスクを高めうる」

言い換えれば、この治療法は、その治療として使われるまさにその「病気」を起こすことが認識されている。しかし、放射線には人を健康に戻す力はない。第6章の議論では、カール・Z・モーガン(Karl Z Morgan)博士の1978年の次の言葉を引用した。

□「安全な曝露量はなく、悪性腫瘍のリスクがゼロになるほどの低線量は存在しない

とはいえ、低用量や低被曝で必ずがんになるわけではない。人が、がんや他の「慢性疾患」を発症する可能性は、「リスク」や「偶然」、あるいは「遺伝子」の問題ではない。それは、各個人それぞれの健康状態に完全に依存し、その健康状態は、本章で論ずる「四つの要因」すべての影響の程度によって左右されるのである。

他すべての「有害物質や影響」と同様に、電磁波の悪影響は、細胞レベルでのフリーラジカルによるダメージを誘発する酸化ストレスのメカニズムを通じてである。ただし、電磁放射は、電気的に機能する臓器やシステムに特に有害だ。電気的に機能する主要な臓器の一つは心臓である。したがって、当然だが、第7章で述べたように、EMFへの曝露と酸化ストレスと心臓の問題は関係している。身体の電気システムは、ごく微量の電気エネルギーしか必要としないことを強調することは重要だ。これを、先に引用した『クロス・カレント 』[B4] にてベッカー博士が示している。

□「体内エネルギー制御システムは微細であり、微量の電磁エネルギーで動作している」

身体の繊細な電気システムは、不自然な電磁波により乱される可能性があるし、常にそうなる。

低レベル非電離電磁放射の被ばくから生じうる害の程度は、各人の健康状態により決まる。その中には、その人特有の体内毒素負担がある。興味深いことに、有害化学物質と非電離電磁放射の間の相乗的関係の証拠がある。EHT(Environmental Health Trust)の記事『ワイヤレス放射線/電磁波は体内毒素負担を増加させる』[R10.68]では、有害化学物質の既知の健康悪影響に言及し、次を述べる。

□「さらに、無線や電磁波は、これら日常的有害物質の曝露影響を相乗的に増大しうる」

毒素と電磁放射の相乗的作用のメカニズムは不明だが、両者ともフリーラジカル生成を通して影響を及ぼすという事実に関連すると思われる。しかし、特に懸念されるのは、電磁放射が血液脳関門に影響を与えることだ。記事が示す。

□「再現できる研究によれば、無線放射は血液脳関門の透過性を高め、有害化学物質の脆弱な臓器への移動をより許してしまう」

脳は極めて重要であり、これは電気的に機能するもう一つの主要臓器である。電磁放射と有害化学物質の相乗的相互作用が脳に及ぼす影響の多くは、自閉症の議論でも言及したとおりで、実際に結果が生じている。最も重大な影響があるのはは、脳がまだ発達途上にある子供である。しかし、神経の問題は子供だけの問題ではなく、大人にも影響を与える可能性がある。

ここで強調すべき重要な点としては、身体は「有害な物質や影響」に対して無防備ではないことだ。それらに対応する多くのメカニズムを持つのである。メカニズムの一つは「細胞ストレス応答(cellular stress response)」として知られ、マーティン・ブランク(Martin Blank)教授は、特に電磁放射に対する細胞反応に言及し、その記事『細胞ストレス応答:EMF-DNA相互作用』[R10.69]で論じている。これは、『バイオイニシアティブ報告書』[R6.46]に掲載されたものであり、これ以降では『ストレス応答』記事と言及する。彼は言う。

□「細胞ストレス応答は、環境中の有害な刺激に対する個々の細胞の保護反応である。ストレスタンパク質と呼ばれる一群のタンパク質の合成という特徴がある」

細胞ストレス応答は、次節で述べる、「ストレス」に反応しての体内ホルモン生成とは異なるものである。

細胞ストレス応答を誘発する刺激としての最初の発見が熱であることから、当初、これらのタンパク質は熱ショックタンパク質と呼ばれていた。これらのタンパク質については、2004年の論文『「死ぬストレス」:アポトーシスの制御における熱ショックタンパク質の役割』[R10.70]が述べている。

□「熱ショックタンパク質(Hsps)は、環境、物理、化学的ストレスに応答して誘導され、損傷の結果を制限し、細胞の回復を促進する、相同性の高いシャペロンタンパク質のファミリーである

様々な異なる「ストレス」が同じ細胞反応を起こすことを認めるなら、「新たな」説明の正当性がさらに証明される。つまり、病気は別々の「実体」ではなく、細胞障害とその結果の身体機能不全の様々な現れに過ぎないことだ。

上記論文が示すように、細胞ストレス応答は熱以外の刺激によっても誘導しうる。しかし、非熱刺激であれば、組織の加熱レベルよりも数桁低い曝露で、この応答を起こせる。ブランク(Blank)教授は『ストレス応答』[R10.69]記事で、こうも述べる。

□「実際のところ、細胞は熱刺激よりEMFにはるかに敏感で、EMF刺激の閾値エネルギーは、有効な熱刺激より10億倍以上弱かった」

この証拠にもかかわらず、WHOは、組織の加熱が非電離放射線の主要なな健康悪影響と主張し続けている。先に引用したが(第7章)、『電磁波と公衆衛生:携帯電話(Electromagnetic fields and public health: mobile phones)』[R0.1]と題する2014年10月の(WHOの)ファクトシートは以下を述べる。

□「高周波エネルギーと人体の相互作用の主要メカニズムは組織加熱である」

非電離放射線の影響から人々を守ると主張するICNIRPのガイドラインでは、これが唯一の悪影響であるとのであるとして、組織の加熱を防止するレベルに閾値を設定している。電磁界の話題に関連するWHOのウェブページには、『研究』[R10.71]と題された日付の無いページがあり、電磁放射曝露の健康影響に関する研究に言及し、次を述べている。

□「今まで実施された全レビューの示すことは、0-300GHzの全周波数帯をカバーしているICNIRP(1998)ガイドラインが推奨する限界値以下の被ばくでは、既知の健康悪影響は生じないことである」

このウェブページでは、埋める必要のあるいくつかの「知識欠如」を認めているものの、既知の健康悪影響ないとの主張は不誠実である。RFとELFは両方とも、IARCがグループ2Bの発がん性物質に分類している。両方ともヒトに対する発がん性物質の「可能性」が公式に認識されていることを意味する。組織加熱が唯一の健康悪影響との主張に対し、この分類は疑問を投げかけるものだ。


ICNIRPガイドラインは、もはや20年以上経過しており、人々を真に保護するには全く不十分だ。継続中の科学研究成果を反映しておらず、それらが示すことは、政府機関が安全とするレベル以下の被ばく量での深刻な非熱的影響を決定的に証明し続けているのである。残念ながら、WHO、ICNIRPをはじめ、電磁放射被ばくの健康影響を発表するすべての「権威ある」組織は、主には「既得権益」、特に電気通信および関連産業の影響から、これらの非熱的影響を認めない。

2018年12月の論文『惑星電磁波汚染:その影響を評価する時だ』[R10.72]では、人工電磁場の拡散に言及し、次を述べる。

□「最も注目すべきは、高周波電磁放射の覆いであり、その主なものは、無線通信や監視技術のために作られるマイクロ波である。高周波電磁波に長時間さらされると、生物学的・健康的に深刻な影響があることを示唆する科学的証拠が増えているのである」

RFとELFの単なる発がん性「可能性」分類は、もはや擁護不能である。電磁放射と酸化ストレス、細胞損傷、がんの間の関係と、その直接的かつ因果関係を示す多数の証拠がある。2018年5月の論文『近隣基地局の高周波放射により、スウェーデン・ストックホルムのアパートで高レベルが検出された。症例報告』[R10.73]は次を述べる。

□「RF放射は、フリーラジカル増加や抗酸化防御システムの変化により、脳を含む生体系に酸化ストレスをもたらす」

この論文では、高周波放射の発がんリスク増加示す研究結果に言及し、高周波放射をグループ2Bから、既知のヒト発がん性物質カテゴリーのグループ1に格上げするよう勧告している。


ICNIRPガイドラインの設定した閾値を緊急改訂する必要が明らかだ。ブランク教授が『ストレス応答』[R10.69]記事で強調する。

□「これは明らかだが、電磁波安全基準は誤った仮定に基づいており、科学的根拠を反映するよう改訂されねばならない」

残念ながら、非電離電磁放射被ばくが深刻な健康悪影響に関係すると示す証拠は増え続けているが、電気通信と関連業界からはほぼ無視されている。彼らは、モノのインターネット(IoT)実現を意図する第5世代無線インフラの5G導入を間近に控えている。5Gは既存の2G、3G、4Gの技術の置換ではなく、拡大であることを強調せねばならない。

5Gと関連インフラや技術には多くの懸念があるが、そのひとつは、環境中の既存電磁波濃度を許容不能レベルまで上昇させることだ。5G使用の周波数は、スペクトルの高周波セクションの最上部にあり、これらの高周波電波は、その波長からミリメートル波(MMW)としても知られる。MMWは現在、米国をはじめ多くの国の空港ボディスキャナーに採用されている。これらのスキャナーは、低エネルギーのため「安全」されている。これは、CDCのウェブページ『』に記載の通りだ。

資格「この形態の技術は、携帯電話の数千倍のエネルギーを放出する低エネルギー非電離放射線を使用する」

これは健康影響が無いと意味するものではない。第6章で述べたように、軍は群衆統制などの用途でMMWを、Active Denial Systemに利用している。MMWが皮膚に極めて不快な感覚をもたらすことが知られるからだ。この感覚は、人に発生源への接近を思いとどまらせ,分散を促すことを意図する。

MMWは皮膚の加熱のみとされるが、繰り返し示すように、非電離放射線曝露の健康悪影響は、加熱が生ずるより数桁低いレベルで生じる。2019年2月の記事『5G無線技術:健康へのミリ波の影響,』[R10.75]で、ジョエル・モスコウィッツ(Joel Moskowitz)が述べる。

□「MMWのほとんどが、皮膚の1-2ミリ以内に吸収される」

一見して表面的に見える皮膚への吸収は、身体の他部分に影響が無いという意味ではない。彼はさらに述べる。

□「皮膚には毛細血管や神経末端があるため、MMWの生体影響は皮膚の分子メカニズムや神経系を通じて伝達される可能性がある」

5Gと関連インフラ、IoTによるSMART(セルフモニタリング・アナリシス・アンド・リポーティング・テクノロジー)システムを利用してあらゆる機器の相互接続を促進する技術の導入は、明らかに既存の「不自然な」電磁放射濃度を強めるだろう。しかし、既存の全世代の無線技術と同様、5Gは健康に対する潜在的影響を十分調査せず実施されることになっている。モスコウィッツ博士が述べる。

□「残念ながら、低強度MMWの長時間被ばくを調べた研究はほとんどなく、私が知る限りでは、他の高周波放射と組み合わせたMMW被ばくに焦点を当てた研究はない」

幸いなことに、安全性調査の無い5G導入を懸念する180人の科学者が、欧州委員会に宛てた宣言文に署名した。先に引用したEHTのウェブページ『科学者と医師が5G一時停止を要求』[R7.21]が説明するには、この宣言は委員会に5G導入一時停止を勧告するよう要請している。

□「産業界から独立した科学者によって、人の健康や環境に対する潜在的な危険性が十分に調査されるまで。”

しかし、十分な証拠が既に蓄積済である、高周波領域電磁波への曝露が、人間のみならず全生物に極めて有害と示すものである。主に酸化ストレスの結果であり、事実上すべての体調不良の基礎的メカニズムに共通するものだ。

ある種の電磁放射被ばくは不可避かもしれないが、、その他の被ばく源は避けるか最小限にできる。WHOによれば、電離放射被ばくのほとんどは、医療検査や診断の結果である。例えば、X線検査やCTスキャンなどだが、これらの被ばくは回避できる。他の電離放射発生源、例えば、原子力発電所やウラン鉱山などは回避が容易ではないかもしれない、特にこれらの産業で働く人々や周辺に住む人々にとっては。

高周波領域の電磁放射利用技術の驚異的な広がりは、世界の電磁波環境のあり方を大きく変えた。携帯電話や他が依存している無線通信システムはどこにでもあるが、都市部ではその割合が高い。したがって、各個人の非電離放射線被ばく量がおおよそ依存するものは、生活や仕事の場所、使用機器、装置、無線システムの性質、および非自発的な被ばくである。

身体の電気システムは、直流という一方向にのみ流れる電流で動いていることを強調する必要がある。その一方、主電源は交流(AC)電流で動作しており、電流の流れが方向を変える。すべての電気機器や電気製品は、ELF(超低周波)領域の電磁場を発生させ、身体の繊細な電気系統に干渉し、白血病や脳腫瘍など多くの健康悪影響がある。前述の通り、IARCはELF電磁放射をグループ2Bの「ヒト発がん性物質」可能性と分類している。

電磁放射被ばくに関する様々なトピックについて、特に有用な情報源の一つがPowerwatchのウェブサイトである。このサイトの『記事ライブラリ』[R10.76]というセクションには、様々な公開物があり、ダウンロードができる。例えば、「小児がん(Child Cancer)」セクションには、「電離放射線」とのタイトルの公開物があり、そこでは診断用X線とCTスキャンを述べ、後者の方が前者より電離放射線量が多いことを説明している。

『電力周波数帯の電磁波と健康(Powerfrequency EMFs and Health)』というセクションには、『細胞変化と潜在的メカニズム(Cellular changes and potential mechanisms)』という公開物があるが、ここでは、強力な抗酸化物質のメラトニンの減少につながる可能性のある「脳の酸化的バランス」に影響を与えうる「フリーラジカル効果」に言及している減少したメラトニンレベルの結果は、ニール・チェリー(Neil Cherry)博士が、2002年の記事『EMF/EMRは動物および人のメラトニンを減少させる』[R6.49]で説明している。第6章で引用したが繰り返すに値する。

□「メラトニンの放出量低下は、ヒトや他の哺乳類に多くの深刻な生物学的影響を引き起こす。睡眠障害、慢性疲労、癌、心臓、生殖器、神経疾患、死亡率につながるDNA損傷などである」


PowerWatchのウェブサイトは、家庭内の様々な電化製品や機器、家庭外の電波塔などからの電磁波のからの電磁放射被ばくに関する公開物も多数掲載している。被ばく源やその影響調査の科学的研究の情報に加え、被ばく低減のアドバイスもある。

最も広範囲に使われ、最も広範囲の研究があるのも携帯電話で、脳への悪影響、特に腫瘍はよく知られる。EHTのウェブサイトには、有用情報やダウンロード可能文書がある。そこでは、危険性だけでなく、被ばく減少のアドバイスがあり、例えば、『携帯電話放射減少のための10のヒント』[R10.77]といったページがある。文書『5Gワイヤレスと「スモールセル(小型基地局)」について知るべきこと』 [R10.78]では、より安全な代替手段を説明し、次を述べる。

□「世界の多くの地域で有線光ファイバー接続への投資が進んでいる。これは、より安全で、高速で、信頼性が高く、大容量で、サイバーセキュア(訳注:サイバー攻撃への安全性)である」

身体は電気的システムであり、恒常性状態維持の必要があるが、これは地球との直接接触で補助できる。このことが、本節冒頭で紹介したアーシングの本[B56]で説明されている。この著者は、地球との直接接触が電磁放射影響を軽減するとは主張していないが、「グラウンディング(訳注:アーシングと同義)」は電気的恒常性の回復を助けるとして、次を主張する。

□「アーシングは、静電気や干渉から身体の繊細な生体電気回路を自然に保護する」

電磁放射は主に、酸化ストレスによりフリーラジカル発生を増加させ、体内の自然の抗酸化システムの有効性を減少させることでその影響を及ぼす。しかしこれらは、身体をサポートする努力、特に抗酸化物質豊富な食品の定期的摂取で軽減できる。もちろん、栄養のみならず、本書で取り上げる「四つの要因」すべてへの注意が極めて重要であり、次節で取り上げる四つ目の要因「ストレス」を含む。

■■■ストレス

ストレスの一般的な理解として、オックスフォード辞典は次を述べている。

□「精神的、感情的な緊張(strain or tension)」

この文脈では、ストレスは結果である。一方で、オックスフォード・コンサイス・メディカル辞典による医学界の定義では、ストレスは原因として記述されており、次のように言及されている。

「健康を脅かしたり身体機能に悪影響を及ぼす、怪我、病気、心配事などのあらゆる要因」

この記述は一見異なる現象の説明のように見えるうえ、ストレスの「ネガティブ」な含むに言及しているに過ぎない。しかし、これは誤解を招く。ストレスには「ポジティブ」な含みもあり、2005年の論文『ストレスがあるか、無いか:その違いは何か?』[R10.79]に示されており、こう述べられている。

□「ある人にとっては、興奮や挑戦(『良いストレス』)を意味し、他多くにとっては、慢性的な疲労、心配、フラストレーション、対処不能など、望ましくない状態(『悪いストレス』)を反映している」

この分野の研究の重要な先駆者の一人として広く知られているハンス・セリエ(Hans Selye)医学博士は、著書『人生のストレス』[B65]で次の定義をするように、ストレスを結果としてとらえる。

□「あらゆる要求に対する身体の非特異的反応である。それが快・不快の条件により起こるか、あるいはその結果であるかを問わない」


セリエ博士は、原因と結果の区別のため、原因要因を指す用語として「ストレッサー」を作り、彼の定義の示すように影響を指す用語として「ストレス」を使い続けた。また、ポジティブとネガティブな含みの区別のため、「良いストレス」を指す言葉として「ユーストレス」を作り、「悪いストレス」を指す言葉として「ディストレス」を採用した。今後の議論では、これらの用語とその文脈を使用する。

ディストレスは、恐怖、心配、対処不能などの感情と関連し、愛する人の死など人生の悲劇的な出来事、戦争など生命の直接的脅威の結果として生ずる。ユーストレスは、喜び、興奮、爽快感などの感情と関連し、新たな仕事の機会など、楽しいチャレンジングな出来事から生ずることがあるが、こういった性質の出来事が「ディストレス」になる人もいる。


セリエ博士は、身体に要求をかける日常的活動や感情はすべて、ストレッサーとみなせると説明する。したがって、この文脈の結果の「ストレス」は、完全に正常であり、健康を害する可能性は低い。ユーストレスとディストレスは、この通常のストレスとは異なる。ユーストレスとディストレスは、通常の日常生活にはないストレス要因により起こる、より高いレベルのストレスを意味する。しかし、ユーストレスとディストレスは身体への要求増加を表すものの、同じ影響を伴うわけではない。ユーストレスはしばしば有益と見なされる一方、ディストレスは、特に長期化すれば健康への害になると広く見なされている。

ストレッサーに対する身体の反応は、「急性ストレス反応」としても知られる「闘争か逃走か(fight or flight)」反応を伴うと言われ、これが引き金となって、内分泌系が特定のホルモン、特にコルチゾールとアドレナリン(エピネフリン)を高濃度に分泌させ、神経系がセロトニンなどの特定の神経伝達物質を放出させる。興味深いことに、アドレナリンは神経伝達物質としてもホルモンとしても作用する。

これらの分泌物の目的としては、エネルギーを急増させることである。「非日常的な」ストレッサー、特にディストレスをもたらす恐怖などの感情を誘発する状況に対し身体が迅速に反応できるようにである。ストレッサーが解消または除去されれば、分泌物レベルは徐々に正常に戻り、身体は通常の恒常性状態に回復する。ストレッサーが速やかに解消または除去されない場合、身体はホルモンや神経伝達物質を放出し続ける。これらの物質は、特定レベルまで上昇すると、神経学的影響などの健康悪影響がありうる。例えば、コルチゾールレベル上昇は、うつ病と関連している。

しかし、神経への影響は感情的ストレッサーからのみ生ずるわけではない。これらは物理的ストレッサーによっても起こされうる。例えば、神経系に悪影響を及ぼすと知られる有害化学物質や電磁波などである。これは、『非電離性電磁界の神経学的影響』[R10.80]と題されたバイオイニシアティブ報告書(BioInitiative Report)の2014年版補足に示されている。

□「神経系に直接的あるいは間接的に作用して形態的、化学的、電気的変化を引き起こす因子は、神経的影響をもたらす可能性がある」

有害化学物質や電磁放射は、一定の低用量・低曝露であれば悪影響がないとされるが、これは誤解を招くもので、この類の主張は細胞レベルの微妙な影響を完全に無視している。ブレイロック(Blaylock)医学博士が『健康・栄養の秘密』[B10]で説明する。

□「微妙な毒性は、明らかな臨床的毒性を生じることなく細胞機能をかく乱することがあり、これは不顕性毒性(subclinical toxicity)として知られる」

不顕性毒性が実際の症状を起こすかもしれないが、臨床的に重要とみなされるものではない。このような症状は、医学界が認める「病気」の兆候ではないとの理由で無視される可能性が高いが、医学界のMCS(多重化学物質過敏症)やEHS(電磁波過敏症)患者に対する姿勢は第7章で説明したとおりだ。ブレイロック博士は、経験しうるいくつかの症状について述べる。

□「吐き気、嘔吐、腹痛などの明らかな兆候ではなく、人によっては、疲労感、思考の曇り、記憶力の低下、イライラ、落ち込み、軽い痛みなどの曖昧な感覚しかない場合もある」

残念なことに、毒素摂取による吐き気や嘔吐などの明らかな症状を認識する医師はほとんどおらず、ほとんどは、そういった症状を何らかの「細菌」のせいと考える。また、ブレイロック博士によれば、医師は「不顕性毒性」の徴候をほぼ知らないという。つまり、例えば「思考の曇り」などの微妙な症状を、毒物や電磁波曝露と関連付ける可能性は低く、これらの症状を精神的問題とする可能性がはるかに高い。

医師が症状を「有害物質や影響」への曝露の結果と認識しないのは、その医学的訓練に起因する。そこでは、特定の症状や症状の複合を、その原因が不明な特定の「病気」の兆候と認識することしか教えない。その訓練は、特定の症状や症状の複合を「精神疾患」と呼ばれる状態の兆候として認識することにも及ぶ。これは、現在では「精神障害」として知られており、2018年4月のWHOファクトシート『精神疾患(Mental disorders)』[R0.1]によれば、その有病率は増加傾向にある。

□「精神疾患の重荷が、健康、広く社会的、人権的、経済的結果に大きな影響を及ぼし、増加し続けている。これは、世界中すべての国においてである」

ファクトシートは、このカテゴリーに含まれるいくつかの条件について言及し、次を述べる。

□「精神疾患とは、うつ病、双極性感情障害、統合失調症などの精神病、認知症、知的障害、自閉症などの発達障害を指す」

うつ病を「精神疾患」と呼ぶことの問題は第1章で議論し、自閉症が「精神疾患」との考え方の誤りは第7章で議論した。上記の他の「疾患」にも、明らかに同様の問題がある。認知症については、本節で後述する。

ファクトシートは「精神疾患」と呼ばれる状態の基本的特徴を次のように説明する。

□「一般に、異常な思考、知覚、感情、行動、他者との関係などの組み合わせを特徴とする」

第1章で述べたように、「異常」への言及は「正常」の明確な定義の存在を前提とするが、そのようなものは無い。ある種の行動を受け入れがたいと表現するのは適切かもしれないが、それを精神疾患のためとするのは不適切だ。さらに重要だが、誰にとっても深い懸念事項であるべき点としては、特に人々の思考、知覚、感情に関し、何が「異常」と言えるかの確定のために「正常」パラメータを決定する権利を、いかなる「権威」もが持つことである。

興味深いことに、先に引用したように(訳注:第8章)、ファクトシートは、精神疾患の大きな要因としてストレスや環境危険への曝露も含むと主張する。本節の議論が示したことは、これらが神経学的問題の大きな原因因子であることだ。しかし、WHOが「精神疾患」に推奨する治療には、これらの要因への適切な対処措置は含まない。その代わりに、すべてではないが、これらの症状の多くの治療には、この障害の主原因とされる「脳内の化学的不均衡」を正す精神薬の使用を含む。この主張の誤りについては、第1章で述べたとおりだ。

精神薬は治療としてまったく不適切である。存在証明の無い問題を修正できないだけでなく、脳への深刻な害が知られているためだ。以前引用した(訳注:第1章)記事『セラピスト、医療従事者、クライアントのための精神薬理学の合理的な原則』[R1.9]で、ブレギン博士は次を述べる。

□「脳無効化原理(brain-disabling principle)は、すべての精神活性物質が脳と心の機能障害を起こすことにより作用するとするものだ」

再度だが、医学的な「治療」は、それが解決せんとするまさにその問題そのものを引き起こす能力のあることがわかる。

これを改めて確認することが極めて重要だが、ブレギン博士はその記事で述べている。

□「精神薬の断薬は、感情的に、時には身体的に危険なことがある。経験豊かな監督のもと、慎重に行う必要がある」

精神薬が「精神疾患」治療薬として不適切なもう一つの理由は、「ディストレス」を起こした可能性のある根本的な感情的問題への対処が全くできないことだ。先述したように、問題はその原因への対処によってのみ解決ができる。しかし、残念ながら、医薬品は多くの「ディストレス」への万能薬として広く受け入れられている。ブレギン博士がその記事で述べる。

□「一般の人々の大部分は、疲労や失恋から親子間の家庭内対立に至るまで、日常問題への答えとして精神薬を受け入れている」

親や他の大人と対立する子供は、ODD(反抗挑戦性障害)と診断されることがある。ODDは一般に行動障害と呼ばれ、子供が大人の「権威」者に対して敵意、不服従、反抗を示すことがよくある。医学界は、子供のそういった行動の原因を理解していない。しかし、ODD診断には、半年以上の継続が必要となり一時的な癇癪は除外される。

このような行動をとる子供は、医薬品でない治療法で対処可能な情緒的問題を抱える場合もあるが、情緒的問題と全く無関係な要因の影響を受けている場合もある。他の要因のうち最も重要なものは、神経系に害を及ぼし、神経学的影響をもたらす物質や影響への曝露である。神経機能を損なう物質としては、食品の着色料や保存料として使われる化学物質など、様々な食品添加物がある。これを第6章で説明した。その他、特に子供の神経機能を損なう化学物質の発生源としてワクチンなどがあり、その多くが神経毒成分を含むことは、前述した通りである。神経系に悪影響を及ぼし、神経的障害を起こす可能性のあるものとしては、RF-EMFがある。例えば、携帯電話を使ったり、それで遊ぶ子供は、その有害な高周波電磁放射に曝露する。

高齢者もまた、「精神疾患」の影響を多大に受けているとされる集団である。65歳以上が診断される最も一般的な疾患は認知症であり、WHOの2019年5月のファクトシート『認知症(Dementia)』[R0.1]は、以下を説明する。

□「記憶、思考、行動、日常生活動作の能力が低下する症候群」

高齢者に多いとはいえ、認知症は65歳以上だけの問題ではない。より重要な点は、ファクトシートの認めるように、認知症は加齢の必然的結果ではないことだ。65歳以上の多くは、精神的能力の低下を経験していない。ファクトシートは、認知症の原因を特定せずに、次を述べる。

□「認知症は、アルツハイマー病や脳卒中など、主にあるいは二次的に脳に影響を与える様々な病気や傷害によって生ずる」

ファクトシートでは、アルツハイマー病の結果として認知症になりうるとの記述に加え、アルツハイマー病が認知症の最も一般的な形態との記述もある。しかし、これは非常に異常である。これが示唆するのは、認知症の最も一般的な形態の一つが認知症の原因ということだ。

興味深いことに、しかし驚きでもないが、ファクトシートは、認知症を含む認知機能障害を、「身体的」疾患と同じ「リスク因子」に関連づけようとする。

□「研究によれば、定期的な運動、禁煙、アルコールの有害使用の回避、体重のコントロール、健康的食事、血圧、コレステロール、血糖値を健康に保つことにより、認知症リスクを減少できる」

この記述の問題点については、以前にも述べた。しかし、ファクトシートでは、他の「リスク因子」も関与するとし、次を述べる。

□「他のリスク因子としては、うつ病、低学歴、社会的孤立、認知的不活発などがある」

「身体的」病気に関する医学界の説明に欠陥があるのと同様、「認知障害」関連にも欠陥がある。しかし、それらは「新たな」病気の説明を使っての説明が可能だ。「精神疾患」と呼ばれるものを含む認知障害は、「有害物質や影響」への曝露の結果、特に神経系や脳内の機能不全が現れたものである。場合によっては、第7章の内分泌系と先天性異常に関する議論で示したように、こうした曝露が出生前に生じた可能性がある。

重要な点は、ストレッサーが有害作用を及ぼすメカニズムは、すべての「有害物質や影響」と同じであることだ。そして、酸化ストレスが多くの「精神疾患」に関連すると示されている。2009年の論文『酸化ストレスと不安』[R10.81]は次を述べる。

□「脳内の酸化ダメージは、神経系障害を引き起こす。最近では、酸化ストレスが、うつ病、不安障害、高い不安レベルにも関与すると言われている」

「ディストレス」に伴う緊張や不安により起こる代表的症状のひとつに頭痛がある。しかし、頭痛は神経系や神経的問題に関連すると認識されてはいるものの、「障害」として再定義されている。2016年4月のWHOファクトシート『頭痛疾患(Headache disorders)』[R0.1]には以下が示されている。

□「頭痛疾患は、神経系の最も一般的な疾患の一つである」

「頭痛疾患」には、片頭痛、緊張性頭痛、群発頭痛、薬物乱用頭痛の四種類があるとファクトシートは主張する。持続的な頭痛は明らかに消耗させるものだが、「疾患」と呼ぶのは不適切だ。頭痛は、人々が自己治療する最も一般的な病気の一つであることを強調せねばならない。しかし、他すべての「薬」と同様、市販鎮痛剤は、根本問題を解決したり、対処するものではない。「薬物乱用頭痛」と呼ばれるカテゴリーは、治療が意図するまさにその問題を引き起こす可能性を示すもう一つの例である。

酸化ストレスが、最も一般的な「精神疾患」の特徴であると発見する研究がますます増えている、2014年の論文『酸化ストレスと精神障害』[R10.82]が示すようにである。さらに、この論文にはこうある

□「酸化ストレスが、うつ病、不安障害、統合失調症、双極性障害などのいくつかの精神疾患に関与する事実は、驚きでもない」

しかし、2013年の論文『良いストレス、悪いストレス、酸化ストレス:予測的コルチゾール反応からの洞察』[R10.83]には、お馴染みのこんな記述がある。

□「心理的ストレスが酸化ダメージを促進するメカニズムは十分解明されていない」

しかし、これはかなり意外である。

元神経外科医のラッセル・ブレイロック博士が2006年の著書『健康・栄養の秘密』[B10]で説明するには、ストレスは新陳代謝を活発にし、活発化した新陳代謝はフリーラジカル発生を増加する。それに対抗する抗酸化物質が十分にないと、フリーラジカルは酸化ストレスを引き起こし、細胞レベルでのフリーラジカルによるダメージにつながりうる。したがって、長期にわたるディストレスは、フリーラジカルの生成と細胞損傷プロセスを継続させ、その結果として、神経系や脳を含む組織や臓器の機能低下をもたらす。

このプロセスは、二つの最も一般的神経変性疾患に関して特に重要だ。つまり、アルツハイマー病(AD)およびパーキンソン病(PD)であり、両者ともに高レベルの酸化ストレスと関連する。これは、2017年の論文『神経変性疾患における酸化ストレス:分子メカニズムから臨床応用まで』[R10.84]で報告されており、以下を述べている。

□「ドーパミン神経細胞の変性の基礎となる病理学的メカニズムは、ROSまたは他のフリーラジカルの過剰蓄積と相関している」

ROSは活性酸素種のことである。

認知症は予測可能な将来にわたり発生と蔓延が増加し続けるとWHOは予想する。先のファクトシートによれば、世界には約5,000万の認知症患者がおり、その数は2050年までに1億5,200万人に達すると予測されている。今後数十年の認知症発生率のこれほどの劇的上昇を予想するのは、人の寿命がますます延びると予測しているためだ。もっとも、WHOは、認知症が加齢の必然的結果でないことを認めているのだが。そして、平均寿命の伸びをもたらしたのが「現代医学」であり、ワクチン接種プログラムによれい致命的な「感染症」を克服し、死亡率、特に乳児死亡率が低下したとされる。しかし、この主張の誤りはこれまで述べてきた通りである。

老若男女を問わず、「精神障害」と診断される認知障害や神経的問題を経験する真の理由は、多くあり、様々である。しかし、他すべての「病気」と同様、これらの病気は、物理的および感情的なストレッサーの様々な組み合わせの曝露により起こる


脳に悪影響を与えるストレッサーの曝露を最小限に抑え、保護作用のある抗酸化物質摂取を増すことにより、認知機能低下を遅らせ予防するだけなく、向上にも資する。その理由は、医学界が長年保持するもう一つの信念の誤りが証明されたことである。これは、ニューロンとも呼ばれる新たな脳細胞が、三歳程度で形成された後には生成されないという考えである。1970年代に研究者たちが発見したことは、ある動物の成体脳のある部分での新たな神経細胞の存在である。その後も研究が進み、神経発生とも呼ばれる新たなニューロンの生成が、ヒトを含む様々な動物の成体脳の多くの部位で起こることが明らかになった。

2008年の論文『エストロゲンと扁桃体および視床下部における成体神経発生』[R10.85]によれば、新たな神経細胞生成の速度には、様々な要因が影響する可能性があるという。これらの要因には、生理機能に影響を与える外部環境の側面が含まれる。さらに、

□「神経化学および/または神経伝達システムに作用し、細胞の増殖および/または生存に影響を与える」

これまでの議論から明らかなことは、身体的ストレス要因として作用し、神経への影響に寄与する「環境汚染物質」の数多くの存在である。


セリエ博士の定義の文脈では、「ストレス」とは生命において不可避のものだ。しかし、博士はこう説明する。

□「その有害な副作用の『ディストレス』を最小限に抑える方法について、多くを学ぶことができる」

「ディストレス」となったストレスが長く続くと、明らかに衰弱させ、健康に害を及ぼす可能性がある。愛する人の死など、克服が容易でないストレッサーもあるが、ストレスの全体的なレベル低下に役立つ特定の行動は可能である。

例えば、スティーブン・シナトラ医学博士のウェブサイトには、『緊張やストレスによる頭痛の対処法』[R10.86]というページがあり、食事、リラックス、睡眠などの戦略について述べている。このページでは、先に引用したアーシングの本[B56]の共著者であるシナトラ博士が、「ストレスを取り除き」、神経系の再バランスに役立つグラウンディング実践について言及している。ページ『アーシングやグラウンディングとは何か』[R10.87]で、彼は次を説明する。

□「新興の科学が明らかにしたことは、地面に直接触れることで、エネルギー注入を受けられることである」

彼は、このエネルギー注入を「パワフルなもの」と呼ぶ。

□「生理機能と臓器を支配する生体電気回路を回復し安定させ、基本的生体リズムを調和させ、自己治癒力を高める」

人間の身体には、脳を含む全身の損傷を修復するメカニズムが備わる。しかし、それが必要とするものは、有害なストレス要因に曝露せぬよう、あるいは最小限にとどめるためのあらゆる努力である。セリエ博士は述べる。

□「我々の行動を生物学的ルールに賢く適応させることによってのみ、ディストレスを伴わないユーストレスの完全享受が可能である」

 

Posted by ysugimura