本記事の三行要約
- バイエル(モンサント)のグリホサート(ラウンドアップ)はWHO傘下のIARCに発がん性を認定され、米国で総額1兆円超・6万5千件以上の訴訟を抱えている。
- トランプは2026年2月18日、軍事重要物資である「単体リン」の生産保護を名目にした大統領令に署名し、グリホサートに軍事用途は一切ないにもかかわらず、国防生産法を悪用してバイエルへの訴訟免責を同時に付与した。
- 和解案提示(2月17日)の翌日に大統領令が署名され、最高裁でのプリエンプション審理も同時進行するという連動した動きは、「Make America Healthy Again」を掲げたトランプ政権が実際には訴訟まみれの大企業を救済する「Make America Sick Again」政権であることを露わにしている。
MAGA(Make America Great Again、米国を再び偉大に)→ MAHA(Make America Healthy Again、米国を再び健康に)→ 実際にはMASA(Make America Sick Again、米国を再び病気に)
最悪の汚染物質グリホサートとその害(裁判所認定済み)
バイエル(モンサント)の製造するグリホサート(商品名ラウンドアップ)は同社のドル箱製品ですが、WHO下のIARC(国際がん研究機関)が「人に対する発がん性の可能性(グループ2A)」を2015年に示唆している通り、この製品による被害が起こってきました。
食に関心のある人であれば、日本の御用メディアはこの問題を一切報じず、日本の農家もグリホサート(ラウンドアップ)が安全な製品であると信じ込まされていることもご存知でしょうね。毒を避けるためには、自衛するしかないという認識の人は多いでしょう。
しかし、実際に健康被害を受けたとして、米国ではこれまで数多くの訴訟がなされ、決着しているケースでは数千億円規模の賠償命令が出ており、総額としては一兆円を超える和解金が提示されていることは知らないかもしれません。これもメディアは一切報道しませんからね。
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ペンシルベニア州の陪審評決:約22億5000万ドル(後に約4億ドルに減額)——2024年1月、フィラデルフィアの陪審がジョン・マキビソン氏に評決 PIIECNN
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ジョージア州の陪審評決:約21億ドル——2025年4月、ジョン・バーンズ氏への評決(うち懲罰的損害賠償20億ドル) CNN
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ミズーリ州の陪審評決:当初15億6000万ドル、控訴審で6億1100万ドルに減額——3名の原告への評決
過去の和解総額「1兆円超」=約70〜80億ドル規模
- 2020年の大規模和解:約100〜109億ドル(当時の為替で約1兆円超)
集団和解案とトランプの大統領令
しかし、これらの決着した訴訟にとどまらないのです。バイエルは現在でも6万5千件以上(10万件という説もあり)の訴訟を抱えています。これらの訴訟に対し、2026年2月17日、バイエルは72億5000万ドル(約1兆円超)を集団和解として提示しました。
ところが、驚くべきことに、このまさに翌日の2026年2月18日、トランプはグリホサートの原料となる「単体リン」の国内生産を「国家安全保障上の重要物資」に指定する大統領令に署名したのです。これは、グリホサートの原料となる物質です。
単体リンの用途は以下です。
農業・食品関連が圧倒的に多く:
- リン酸肥料の原料:世界の単体リン消費の約80〜85%を占める最大用途
- 食品添加物:リン酸塩として清涼飲料水・加工食品・乳製品に使用
- グリホサートなどの農薬原料:除草剤・殺虫剤の製造
工業・技術用途:
- 半導体・電子部品:スマートフォン・太陽電池・LED
- リチウムイオン電池:電気自動車・スマートフォン用
- 洗剤・界面活性剤:リン酸塩系洗浄剤
軍事用途:
- 焼夷兵器・白リン弾:煙幕・照明弾・焼夷目的
- ただし軍事用途は全消費量の数%以下とされる
そして、この供給上の脆弱性としては、米国内の単体リン生産者がバイエルのアイダホ州工場1社のみで、輸入の大部分を中国に依存しており、「敵対的外国勢力」への依存リスクがある とのことです。
モンサントを救済する大統領令のトリック
たしかに、単体リンは軍事を含む重要物質で、中国に依存するなどは米国の戦略上まずいことでしょう。しかし、ここにトリックがあるのです。
大統領令タイトルは「国内における単体リンおよびグリホサート系除草剤の十分な供給の確保による国防促進」というもので、一つの命令の中に二つの要素が束ねられています。
第一の要素:単体リンの国内生産保護
- 国防生産法に基づく権限を発動
- 単体リンを国家安全保障上の重要物資に指定
- 国内採掘・生産の強化を農務長官に指示
- 軍事・半導体・電池への用途を根拠として列挙
第二の要素:グリホサート生産者への免責付与
- 国防生産法第707条が規定する「すべての免責」を付与
- 「単体リンおよびグリホサート系除草剤の国内生産者はこの命令に従うことが義務付けられる」と明記
- 命令への遵守を条件として訴訟責任を免除
わかりにくいんですが、要するにこういうことです。バイエルは、戦略上の重要物質の生産者だから、彼らに対するすべての訴訟は無効になるということです。しかも、訴訟対象が単体リンではなく、グリホサートでも免責されてしまうのです。つまり、こういうことです。
単体リン = 軍事上の重要物資(しかし、単体リンの全体的パーセンテージとしては低いし、グリホサートは、軍事用途ゼロ、半導体用途ゼロ、電池用途ゼロである)
↓
バイエルは単体リンの国内唯一の生産者
↓
バイエルはこの大統領令に従う義務がある
↓
国防生産法第707条:命令に従う者への
「すべての免責」を付与
↓
∴ バイエルへのすべての訴訟が免責される
(グリホサートのがん訴訟も含めて)
しかし、本来的に国防生産法での免責というのは、「軍需物資の生産を優先したために民間契約を履行できなかった場合」を想定したものです。たとえば戦時中に鉄鋼メーカーが軍の命令で戦車を優先生産したため民間向け自動車の納期を守れなかった、というような場面ですね。それを「グリホサートでがんが発生した被害者の損害賠償請求」にまで拡大適用するのは、法律の趣旨から大きく逸脱しているというのが批判側の主張です。
つまり、トランプは、訴訟まみれのバイエルを救うために、わざわざ大統領令を出し、それどころか、とてつもない言い訳で、現在バイエルの直面する6万5千件の訴訟をなきものにしようとしているわけです。
両者の連動
当然のことながら、大統領側は、この訴訟まみれの一企業と連動していると批判されていますね。
- 2026年2月17日:バイエルが72億5000万ドルの集団和解案を提示
- 2026年2月18日:トランプが大統領令に署名
つまりバイエルによる和解案提示が大統領令の前日です。この順序は非常に示唆的で、専門家の間では「一連の動きが連動している」と指摘されています。
バイエルの訴訟負担の全体像
- 過去の和解・賠償:総額1兆円超をすでに支払い済み
- 個別の陪審評決:最大で約3300億円規模の賠償命令も出ている
- 残存訴訟:現在も約6万5000件が係争中
- 新たな和解案:72億5000万ドル(約1兆円超)を集団和解として提示
この流れをまとめると
- 前日に巨額和解案を提示して訴訟解決への意欲を示す
- 翌日に大統領令で免責を付与してもらう
- 最高裁でのプリエンプション審理(4月27日)も控えている
特定の意図があることは明らか
先にも書いたように、グリホサートは、「軍事上の重要物資」では全く無いにも関わらず、単体リンをそのように指定すると同時に、単体リンから生成されるグリホサートも免責にしているわけです。どう言い訳しようが、バイエルを救いたいがために大統領令を出したと言われても仕方がないでしょうね。
※2026年5月28日発売、ジェームズ・コーベット著、字幕大王訳『認知戦争・認知支配の全貌』でも、このモンサントの悪質さを『第8章 バイオの億万長者とGMOビジネスの終末–食卓が実験場に』としてとりあげています。ここでは、モンサントがいかなる姑息な手段を用いて、規制当局を意のままにしてきたか、研究論文を潰してきたかが語られています。

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