この記事の三行要約
神谷や田母神は「共産主義スパイが政府に入り込んで戦争に誘導した」と言いながら、治安維持法やスパイ防止法を正当化するが、それでも侵入を防げなかった(言い分が正しいと仮定した場合)。
その一方で彼ら自身が「自衛のため」と称して改憲・軍拡を唱える姿こそ、彼らが言うスパイの行動パターンと一致してしまう。
結局「自分だけは例外」とする自己矛盾を抱え、説得力を欠く愛国ビジネスに過ぎない。
おそらくこの二人に限りませんが、こういった歴史修正主義者は、身勝手で都合の良いストーリーを語りたがるために、すぐに自己矛盾を起こしてしまいます。
簡単に言えばこういうことです。
- 政府に入り込んだ共産主義者のスパイが日本を戦争に仕向けていったと主張する(田母神の主張では、アメリカや中国にスパイが入り込んだと言う)。
- だから、治安維持法やスパイ防止法が必要と主張。しかし、日本の場合、1925年施行の治安維持法施行によって多くが弾圧されていたのに、政府へのスパイ侵入を防げなかった。米国では1917年にスパイ防止法が施行されているのに、やはり防げていない(あくまでも彼らの言い分が正しいと仮定した場合)。
- 中国などからの侵略が怖いから憲法改正や軍拡、核保持などを主張する。
すると、どういうことになるのか?彼らがそのような主張をするなら、まず彼ら自身がスパイではないことを証明する必要があります。
もう一度書きますよ、スパイは政府に入り込み、国を戦争に向かわせるものなのですよね?したがって、改憲や軍拡を主張する者であるほど、スパイであることを疑わねばなりません。図に書くとこういうことになります。
ここで問題になるのが、おそらくは「自分だけは例外」というまるで説得力の無い主張でしょうね。むしろ、スパイであるほど、支持・信頼を得ようとすることでしょう。すぐバレてしまってはスパイになりませんから。
神谷宗幣の場合
こちらの動画をご覧ください。

この演説では共産主義を取り締まるための治安維持法をアピールしています。
だから彼ら(共産主義者)は、自由や平等、人権というけれども、結局は暴力です、最後は。だから、日本も共産主義がはびこらないように、治安維持法を作ったんです。悪法だと言うけれども、そりゃ共産主義にとっては悪法でしょうね。共産主義を取り締まるためのものですから。
ところが同じ演説でこう言っているのです。
政府の中枢に共産主義者、スパイを送り込んでくるんです。そして、日本がロシア、中国、アメリカなどと戦争するように仕向けていったんです。アメリカやイギリス、そのバックアップを受けてる中国と(日本を)ぶつけようと。そうして、日本が戦争に追い込まれていったという事実もありますよね?
ここで神谷の言うことは、
- 1.共産主義を防ぐために治安維持法が必要だった。
- 2.政府中枢に入り込んだ共産主義のスパイによって、日本は戦争に追い込まれた。
- 3.つまり、共産主義を防ぐための治安維持法は無意味だった。つまり、1の主張は無効だと自ら認めている。
ということです。
この2025/7/12の演説後、参院選の後7/22に、突然「スパイ防止法」を言い出したわけです(ただし、「スパイ対策系の立法ニーズは既に2022年秋に質問趣意書を出している)。
スパイ防止法は、統一協会の1970年代からの長年の悲願であることに注意してください。統一協会の悲願は参政党が実現しますをどうぞ。
田母神俊雄の場合
2008年の田母神論文を取り上げてみますが、この論文全体をAIに評価してもらったところ、簡単に言えば、それまでの歴史修正主義者の主張を並べただけで、独自研究や新たな史実などのない二番煎じ、三番煎じということでした。単に当時田母神が現職の航空幕僚長だったために大騒ぎになっただけで、内容的には大したものはないと。要するに、簡単に始められる愛国者ビジネスの一つにすぎません。
しかし、私が注目したのは「コミンテルン」、つまり共産主義者のスパイに関する記述です。田母神の場合は、神谷とは異なり、日本ではなく、中国・アメリカにこれらのスパイが入り込んで日本に対するテロや攻撃をしたというのです。もちろんこれも調べて行くと事実と妄想を取り混ぜたもののようです。
こんな調子です。
財務次官ハリー・ホワイトはコミンテルンのスパイだった。
彼(ルーズベルト大統領)は、ハリー・ホワイトらを通じてコミンテルンの工作を受け、戦闘機100機からなるフライングタイガースを派遣するなど、日本と戦う蒋介石を陰で強力に支援していた。真珠湾攻撃の一ヶ月半も前から中国大陸において、アメリカは日本に対し、隠密に航空攻撃を開始していた。
実は蒋介石はコミンテルンに動かされていた。1936年の第2次国共合作によりコミンテルンの手先である毛沢東共産党のゲリラが国民党内に多数入り込んでいた。コミンテルンの目的は日本軍と国民党を戦わせ、両者を疲弊 させ、最終的に毛沢東共産党に中国大陸を支配させることであった。
ところがですね、アメリカは既に1917年にスパイ防止法を施行しているのです。それでも防げなかったんですね。田母神さんどうしてですか?
どこの国の中枢でも共産主義スパイは入ってくる
彼らの理論によれば、日本だろうが中国だろうがアメリカだろうが共産主義スパイが入り込んで、国に攻撃行動をとらせたり戦争に向かわせるようです。あくまでも彼らの理論ではですよ。
だからこの手の人は、治安維持法やスパイ防止法を喧伝するわけですが、既に歴史的に無意味と証明されているようです。これは、彼ら自身が認めていることですよ。
では、これらの法律の真の目的は何なのでしょうか?
そしてまた、この手の人たちは、敵国の脅威を言い、改憲や軍拡を主張します。
もちろん、近現代に起こる戦争なんてすべて「自衛のため」ですよ。
もし共産主義スパイが政治家や政府中枢に入り込んでおり、国を戦争に向かわせたいのであれば、彼らは必ず「自衛のための改憲・軍拡」を言うことでしょうね。その前段階としては、必ず「敵の脅威」を煽ります。
では、彼ら自身がスパイではないという証明はどこにあるのでしょう?
彼らの主張している通りのスパイの行動を彼ら自身が行っているのでは?
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