原爆なかった論の戯言:林千勝の大嘘(31)〜「衝撃と畏怖」だから何?意味不明

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この記事の三行要約

  • 林は「偽装原爆を落とした理由」を論じるが、引用した資料はいずれも原爆の存在を前提としており、「偽装」の根拠を示していない。
  • トルーマン声明では原文の順序や文脈を変え、原爆開発の歴史的説明を省略して「日本への威嚇」という印象になるよう再構成している。
  • さらに毒ガス使用について日本側の実例を無視したうえ、最後も「衝撃戦略」の説明に終始しており、「偽装原爆」の論証にはまったくならない。 

林千勝著、経営科学出版の書籍『広島・長崎 悲劇の正体』の『第16章 偽装原爆を落とした理由』について見ていきます。

林はここで「米が偽装原爆を落とした理由」を説明しているつまりになっているようですが、まるでその論拠はありません。

この章のほとんどが他からのまるパクリなのですが、それらは原爆の存在を前提にしているものなのです。それらの意図に反し、なぜそれが「偽装原爆」の根拠になるのか何の説明もありません。これもまた、林お得意の印象操作にすぎないのです。

林はこんなもので読者は騙されてくれると思っているようです。

まず最初に印象操作

では、見てまいりましょう。

P178:第16章 偽装原爆を落とした理由

原爆は未完成であった。次の3つの目的で、米国は大規模模擬原爆を原爆に偽装して投下した。

① 開発費20億ドルの米国議会・米国民向けの説明のため
② 戦後世界の核支配体制の構築のため
③ 日本人の大量虐殺(毒ガスは国際法違反のため偽装は必須)

7月17日から8月2日まで、ポツダム会談が開催されたが、途中の7月25日、ハリー・トルーマン米大統領は日本(日本人)に対する「原爆」投下命令を下した。日本に対する降伏状況となるポツダム宣言を発したのは翌日。投下ありきであった。

トルーマン声明と衝撃戦略

トルーマンの原爆投下声明は1945年8月6日投下から16時間後に発せられた(トルーマンはポツダム会談を終え、大西洋上にいた)。 

まずここまでが林の文章です。この記述は歴史学上議論のあるところでしょうけれども、私が指摘すべきなのは、「(毒ガスは国際法違反のため偽装は必須)」の部分ですね。

何度でも強調しますが、林は実際にこの戦争で毒ガスを使っていたのが日本であること、国際法違反を侵していたのが日本であることに一切言及しません。何がなんでも「毒ガスを使ったのは米国だ!」ということにしたいのです。完全に歴史修正ですね。林の元ネタとなったパルマーが明確に書いているにも関わらずです。林はこの部分を読んだことがないのでしょうか?

“Hiroshima Revisited”P125:In World War II, both agents were stockpiled by several of the participants, but the only acknowledged use was by Japan in its Chinese campaign.

第二次世界大戦では、硫黄マスタードとルイサイトの両方が複数の参戦国によって備蓄されていた。しかし、公に認められている使用例は、日本が中国で行った戦争における使用だけである。

トルーマン声明

さて、この後はトルーマン声明を引用しています。しかし、声明の全文ではなく一部を省略しているのは良いとして、この引用ではどこを省略しているのかわかりません。林の他の引用を見てみると、省略部分は「…」としているのに、ここには一切ないのです。つまり、初めて読む人は、こういうものだと勘違いする仕組みです。

さらに、どういうわけか林は、文章の順序を入れ替えています。私が番号をふってみましたが、本来は①③②ではなく、①②③の順です。

P179:16時間前、米国の一航空機が広島に1発の爆弾を投下、日本の重要基地を破壊しました。その爆弾は、TNT火薬で2万トン以上の破壊力を持ちます。

日本は真珠湾への空襲によって戦争を始めました。何倍にもなって償うことになったのです。しかし、まだ終わりではありません。この爆弾で、今や、革新的な破壊力の増大は我が軍の兵力をさらに強大なものにしました。同じ爆弾はいくつも製造中であり、さらに破壊力のある新型も開発中です。

これは原子爆弾です。宇宙の根源的な力を利用するものです。 太陽の力が、極東に戦争を齎した(もたらした)ものに解き放たれたのです。

我が軍は、日本の都市にある地上の生産設備のすべてを、さらに迅速かつ完全に破壊する準備を整えたところです。日本の港湾施設、工場、そして、通信施設を破壊します。間違いなく、我が軍は日本の戦争遂行能力を完全に破壊します。

7月26日にポツダムで出した最後通牒は、日本国民を完全な破滅から救うものでした。日本の指導者たちは、即座に最後通牒を拒否しました。もし今、我々の条件を日本の指導者が受け入れないなら、この世でまだ誰も見たことがないような、空からの崩壊の雨が降り注ぐことになります。この爆撃の後には、日本が見たことが無いような夥しい(おびただしい)数の、日本軍がすでによく知っている戦闘能力を持つ海軍と陸軍の兵力と火力による攻撃が続きます。

我々は史上最大の科学の賭けに20億ドル以上を投じてきました。そしてその賭けに勝ったのです。

しかし最も驚くべきことは、その計画の規模でも秘密性でも費用でもないのです。
それは原子爆弾を生み出した科学者達の英知による成果なのです。 

全文翻訳は、アメリカ大統領演説:1945年8月6日にあります。この全文と林の引用を見比べてみると、林の引用は、次の赤枠部分です。しかし、①②③ではなく、①③②の順で現れていることがわかると思います(ただし、の部分の「200億ドル」は誤訳で、正しくは「20億ドル」)

林の引用は、明らかに文章の論理構造を変更しているのです。「原爆開発の経緯を説明する歴史的声明」ではなく、「原爆による日本への威嚇・破壊予告」に仕立てあげています。この引用から省略されている部分は以下です。

  • アメリカが原爆を開発した理由
  • ドイツとの競争
  • 米英科学協力
  • マンハッタン計画の具体的経緯
  • 原爆開発を可能にした科学・産業体制
  • 戦後の原子力の平和利用

つまり、林は原文の「科学的開発の説明 → 科学的偉業 → 軍事的脅迫」という流れを、「破壊の威力 → 日本への脅迫 → 科学的偉業」という流れに組み替えているのです。この章のテーマに合わせるために、改ざんしているわけです。もちろん印象操作のためです。

ゴーディンの引用

トルーマンの改変引用の後、林の解説は一切なく、すぐさまゴーディンの引用に移っています。

何の説明もなく、さらに同書からの引用です。

林の意味不明なまとめ

最後に林はこう書いています。

P182:広島の「原爆」投下の後もトルーマンは通常爆撃を続行した。

(略)

(このうち3回は、ラジオが日本政府による降伏条件の受諾を発表した後だった)

私達は、「衝撃戦略」と、それにおける「原爆」の位置づけを知らなければいけない。

「だから何?」という感じですね。この章は「衝撃と畏怖」について説明しただけであって、「偽装原爆」の論拠にはまるでなっていません。ただの印象操作です。

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