この記事の三行要約
- 林千勝の『広島・長崎 悲劇の正体』第18章について、1945年8月13日の『読売報知』原紙を確認し、矢崎為一の実際の発言と林の引用を比較検証した。
- 原文では矢崎は「原爆とは違うと思う」としながらも、「しっかりした根拠や材料がない」と明記し、甚大な威力や原爆に似た効果も認めており、「偽装原爆」「複合爆弾」とは一言も述べていない。
- さらに林は原文の重要部分を削除して印象を変えたうえ、「もう完成されたというのは早過ぎる」という発言も原記事には見当たらず、原資料とは異なる内容を矢崎の発言として示している。
林千勝著、経営科学出版の書籍『広島・長崎 悲劇の正体』の『第18章 日本政府の抗議文と大東亜戦争集結の詔書』について一次資料が得られたので、再度論じていきます。
またも林が大嘘ついていることがわかりました
原爆なかった論の戯言:林千勝の大嘘(19)〜故意に読者に読ませない手口 に書いたことですが、林は『広島・長崎 悲劇の正体』の204ページで読売報知(現在は読売)の昭和20年8月13日(終戦2日前)の紙面を掲載し、こう言ってます。
P203:都築正男教授と並ぶ勇気の人、理研の矢崎為一教授は、「偽装原爆であり、複合爆弾だ」との特集記事を掲げた。
しかし、小さすぎて原文は読めません。
しかし、図書館にマイクロフィルムがあったので、コピーしてもらいました。
すると、ここでもまた林が大嘘をついていることがわかったのです。矢崎博士は「偽装原爆であり、複合爆弾だ」などと一切言っていません。
そしてまた、この赤枠で囲った部分は、矢崎博士とはまるで無関係な記事です。上部分は別記事の途中以降で、下部分も別記事です。そもそも、タイトルが「頭巾は覆面式に」なので想像つきますよね。それ以外の部分が矢崎博士の記事です。
現物写真
現物とは言っても、マイクロフィルムからA3二枚に印刷してもらったものです。直接デジタルに落とせないものですかね。。。こいつをスキャナーにかけて拡大して読んでいきます。
矢崎博士の記事
矢崎博士の部分はこれになりますね。
これを文字起こししていきます。かなづかいは変え、旧字体は新字体にしています。
果たして原子爆弾か 矢崎理博に聴く
覇望深む米の研究
廣島の投下弾には若干の疑問敵が使用を開始した新型核兵器は原子爆弾だと仮定している、原子爆弾についてはいままで世界各国の科学者の間で熱心に研究され理論的には一応の結果をみながら実用化の点でいづれも完成にまで至らなかったもの、しからばアメリカは果してこれを完成し得たのであろうか、広島を攻撃した爆弾が果してこれかー原子物理の研究者でありこの研究のために二度まで渡米している理論物理学者矢崎為一氏にこの点を衝(?)いてもらう――
◇
「原子核が半分に割れるといふ現象を爆弾に使用して最高威力を発揮させるというのが原子爆弾の原理だが、この原子核分裂の現象を発見したのはドイツのカイゼル・ウイルヘルム研究所のハーン博士で昭和十三年頃だった、ウラニウムは地上における最高原素であるがハーン博士はこのウラニウムに中性子をあたえたところ素晴らしいエネルギーを出すことが判り、これを超ウラン原素とよんだ、超ウラン原素という新物質が生れたと思ったのだが、あとでこれは間違いで新物質ではなく、中性子を当てることによってウラニウムが分裂した現象だと判った、この原子核分裂のエネルギーは余りに強大なのでこれを爆薬に使用したら前古未曾有(※これまで一度もなかった)の強力なものができるだろうという科学者の夢がここに生まれたわけだ
ラジウム発見者マリー・キューリー夫人の娘イレーネ・キューリーだとかノーベル賞を得た伊人フェルミーとかいうこの方面の世界的学者が続々と研究に着手したのだった、もちろん米英独仏伊をはじめ各国で同様の苦心と努力が為された、その結果については各国とも秘中の秘として洩らさなかったが、その到達した程度はほぼおなじものと思われている、開戦後は判らないがそれまでの状態でもアメリカが特に進んでいたという事実は認められなかった、ただ彼らは自国だけでなく欧州各国の学者ー化学、工学、薬学、(?)学など一切の学者が提携連絡して総合した研究をつづけ、一年の半分くらいはワシントンに集合してくらすほどの熱意は軽視できぬものであった、相対性理論のアインスタイン博士なども動員されていると言(?)われていた。
私が二回目の渡米をしたのは昭和十五年だったが、その直前に仁科先生ー理学博士仁科芳雄氏ーと二人の署名でウラニウム分裂の論文を発表した、それがニューヨーク・タイムスへ「日本で新ウラニウムを発見」と掲載したので私は冷汗をかいたが、そんな関係でかあちらの原爆実験はついに私達をどこでも拒否した、常時アメリカは日独共三国同盟に非常に神経過敏となっており、私が帰国(?)する十一月末どころにはウラニウムの輸出禁止を断行した、アメリカは世界でもウラニウムの多い国だけに、枢軸側への売却も非常に危険視したのである。
この原子爆弾の完成を想像してみれば「原子爆弾の早急の完成国こそ世界の支配者たり得る」ことが考えられたのである。各国ともにこのことを銘記して研究をつづけたのだった。
広島へ落としたものが果してこれであろうか、私はしっかりした根拠や材料がないのが遺憾だが、われわれが考えていたいわゆる原子爆弾とは違うと思っている、ただ爆薬(?)自身が短時間の中に分散し非常な熱効果をあらわした点を見ると容易ならぬ機構のものだとはうなづける、その威力はひどいものだがやはり爆薬(?)には違いなく、夢に描いたものを多くの化学者、約学者、工学者などが寄り集まって作り出したもののような気がする。
原子爆弾という以上種類はどんなものにせよ原子核分裂を爆弾に使ったものに対してよばれるのが、至当である(※極めて当然である)、その効果だけみると原子爆弾が実現したごとくだが厳密な意味ではいえない疑似原子爆弾とよべばよべるかも知れぬ、新しい威力ある爆弾が出るたびに原子爆弾の語がいままでも使われてきたが、こんどもその時(?)のやうな気がしてならない、といふのも広島の場合爆発力よりも爆薬(?)効果の方が強かつたように思はれる。
なにしろ原子分裂のエネルギーといふものは角砂糖一個ぐらいの大きさでロンドンやパリぐらいの都市を破壊するという計算ができるほどのものなのだ、燃焼力が強い点は原子爆弾によく似ている、しかし結局原子爆弾でないにせよ、効果が非常によく似てゐれば目的は達せられるわけだからもちろん軽視はできない、いづれ調査の結果はっきりされることであろう
無関係な記事
ちなみに無関係な記事の部分は以下です。どう考えても無関係です。矢崎の名前も出てきません。
林はここでも真っ赤なウソをついている
当該記事に戻って検証すると、たしかに林がP203-P205にわたり引用している文章はこの記事そのものです。。。と思いきや、ここでも林は一部の文章を削除して印象操作しているのです。私が文字起こししたものと林の「引用」を比べ、林がカットしている部分を赤で示します。
「原子爆弾の早急の完成こそ世界の支配者たり得る」ことが考えられたのである、各国ともこのことを銘記して研究を続けたのだった。
広島へ落としたものが果たしてこれであろうか、私にはしっかりした根拠や材料がないのが遺憾だが、我々が考えていた所謂原子爆弾とは違うと思っている。
ただ、爆薬自身が短時間の中に分散し非常な熱効果を現した点を見ると容易ならぬ機構の ものだとはうなづける、その威力はひどいものだが、やはり爆薬には違いなく、夢に描いたものを多くの化学者、工学者などが寄り集まって作り出したもののような気がする。
原子爆弾という以上種類はどんなものにせよ原子核分裂を爆弾に使ったものに対してよばれるのが、至当である(※極めて当然である)、
その効果だけみると原子爆弾が実現したごとくだが厳密な意味ではいえない疑似爆弾とよべばよべるか知れぬ、新しい威力ある爆弾が出るたびに原子爆弾の語が今までも使われてきたが、こんどもその伝のような気がしてならない、というのは広島の場合爆発力より爆破効果の方が強かったように思われる。
なにしろ原子分裂のエネルギーといふものは角砂糖一個ぐらいの大きさでロンドンやパリぐらいの都市を破壊するという計算ができるほどのものなのだ、
燃焼力が強い点は原子爆弾によく似ている、しかし結局原子爆弾でないにせよ効果が非常によく似ていれば目的は達せられる訳だからもちろん軽視はできない。
矢崎の言うことは、こういうことですね。
- 「私にはしっかりした根拠や材料がないのが遺憾だが、我々が考えていた所謂原子爆弾とは違う」、彼の中にあった原爆というイメージとは違ったというだけです。
- 「爆薬自身が短時間の中に分散し非常な熱効果を現した点を見ると容易ならぬ機構の ものだとはうなづける、その威力はひどいものだ」。少なくとも一発の爆弾がこれほどの被害を起こしたということです。大規模爆撃ではありません。
- 「原子爆弾という以上種類はどんなものにせよ原子核分裂を爆弾に使ったものに対してよばれる」。核分裂を使った爆弾であれば「原爆」である。当然のことを言っています。
- 「その効果だけみると原子爆弾が実現したごとくだ」。ここでもやはり、「原爆ではないかもしれないが、一発の爆弾であれほどの被害を引き起こした」は認めているのです。
- 「角砂糖一個ぐらいの大きさでロンドンやパリぐらいの都市を破壊するという計算ができる」。彼の計算上では、より大きなものというイメージだったようです。しかしもちろん、Trinity実験のことも知らなったわけです。
- 「しかし結局原子爆弾でないにせよ効果が非常によく似ていれば目的は達せられる訳だからもちろん軽視はできない」。ここでも同じで、一発の強力な爆弾によってこれほどの被害が起こったことを再確認しています。
矢崎の意図するところは明らかです。簡単に言えば、自分の持つ原爆のイメージとは違っているし、はっきりとは言えないが、一発でこれほどの被害を出したと。これを明確に認めているわけです。原爆か否かは無関係に、一発の強力な爆弾です。
そこで、この節で林が最初に書いたことを思い出してみましょう。
P203:都築正男教授と並ぶ勇気の人、理研の矢崎為一教授は、「偽装原爆であり、複合爆弾だ」との特集記事を掲げた。
まるでウソであることがわかりますね。矢崎はそんなこと一言も言っていません。さらに、林はこんなことも書いています。
P205:矢崎理博は、記者に「もう完成されたというのは何だか早過ぎるような感じです」と話したという。
この記事にはそんな文言はありません。どこから持ってきたものでしょうか?もちろん、これが事実だとしても、結論は変わりませんね。
林は、引用しているように見せかけ、実は言ってもいないことをでっちあげているのです。









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