原爆なかった論の戯言:林千勝の大嘘(25)〜引用なのに勝手に文章改変して印象操作

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この記事の三行要約

  • 林千勝は、ゴーディンがスピッツァーの日記をもとに紹介したティベッツの発言を、あたかもティベッツ本人の直接の発言として引用したように記述している。
  • さらに「ギミック(からくり)」という語を抜き出し、原爆偽装を示唆するような印象を与えているが、原典では「gimmick」は原爆に対する複数の呼称の一つで、ティベッツが好んで使った表現にすぎない。
  • 引用文を省略・改変したうえで出典をゴーディン120頁とし、原典とは異なる印象を読者に与えている。 

林千勝著、経営科学出版の書籍『広島・長崎 悲劇の正体』の、『第6章 母なるエノラ・ゲイの発進』について、再度見てみます。

原爆なかった論の戯言:林千勝の大嘘(3)〜印象操作と誘導の方法 でも書いたことです。ただし、この記事には一部事実関係の誤りがありました。しかし、結論は変わりません。ティベッツの言葉ではなく、スピッツァーの日記から拾ったものなのです。

この件について、改めて林の引用している文献を調べてみました。マイケル・ゴーディンによる『原爆投下とアメリカ人の核認識: 通常兵器から「核」兵器へ』という本です。いや、驚愕しました。

ウソつくためにここまでやる?

これが私の感想です。順を追って説明しましょう。

林の記述

本書37ページです。こうあります。

(8/4のブリーフィングにおいて)新兵器の威力については口頭で語られた。母親の名前とそのままのエノラ・ゲイに搭乗する直前、部下達に対し、ティベッツ大佐が最後に行った状況説明の言葉は次の通りだ。

“「『ギミック』(からくり)が誰かの単なる荒唐無稽な夢かもしれないと考えながら、自分たちのしていることの意味が分からないことがいかに大変なことであったか」

「6か月は戦争の終結を早めることになる爆撃作戦に選ばれたことを、個人的に名誉に思っているし、われわれも全員そうだろうと確信している」² “

そして、このティベッツの発言の引用元は

2 『原爆投下とアメリカ人の核認識ー通常兵器から「核」兵器へ』120頁

となっています。つまり、先のゴーディンの著書(翻訳書)です。いかにもティベッツ自身が発言したかのようです。

この第6章は、この文章で終わっており、林は何も説明していませんが、いかにもティベッツが、『ギミック』(からくり)という言葉を使って「偽装原爆」を匂わせたと印象操作したいことは明らかでしょう。

しかし、ギミック(からくり)を使って読者を騙そうとしたのは林自身なのです。それを証明できます。

ゴーディンは何と書いていたのか?

では実際には、ゴーディンは何と書いていたのでしょうか?まるで違うことを書いていますよ。林によるいかにも「引用」したかのような記述は真っ赤なウソです。なぜこんなすぐばれるようなウソを平然とつくのでしょうか?

林の引用元である、ゴーディンの本の120頁を開いてみましょう。

観測機グレート・アーティスト号の無線通信士のエイブ・スピッツァー(Abe Spitzer)は、ティベッツによる最後の状況説明の思い出を日記に記録している。そこでは、秘密兵器に関する新たな情報が知らされた。

“大佐は、大佐自身を含め、われわれがそれまで行ってきたことは何であれ、今からすることに比べれば取るに足らないことであったと語り始めた。続いて彼は、あいさつ代わりの言葉を、あたかも本気のように述べた。つまり彼がわれわれと仲間であったことをいかに誇りに思っているか、われわれの士気がいかに高いか、そして時間を浪費し「ギミック」が誰かの単なる荒唐無稽な夢かもしれないと考えながら、自分たちのしていることの意味が分からないことがいかに大変なことであったか述べた。彼が言うには――他のお偉方も彼がこう言った時には戦争の終結を早めることになる爆撃作戦に選ばれたことを、彼は個人的に名誉に思っているし、われわれも全員そうだろうと確信していると言った。この爆弾が本当に戦争を終わらせることになると彼は真剣に考えているようにしか聞こえなかった。⁶⁸”

彼の話のトーンに見られるように、ティベッツの言葉は、普段彼に敬意を払っているが、ここまで日本軍との戦いを続けてきたスピッツァーにとって、信じがたいことのように思われた。任務の前に、グローヴズはパーソンズに、彼が最初の作戦での爆弾投下責任者――グローヴズに言わせれば、原子爆弾を標的へ導く役を担う機上の代表者――となること、そしてそれ以降の作戦ではアッシュワース 

以前の私の記事、原爆なかった論の戯言:林千勝の大嘘(3)〜印象操作と誘導の方法 において、このギミックという言葉はスピッツァーあるいは仲間内で符丁のように使っていたものだろうと推測しました。

で、このスピッツァーの記述の引用元68を見てみると、次のようにあるのです。

(68) Quoted in Gordon Thomas and Max Morgan Witts, Enola Gay (New York: Stein and Day, 1977), 229. なお、第五〇九混成群団のほとんどの団員は、自分たちの最終任務を知らされていなかった。そのため、彼らはそれを「ギミック(からくり)」と呼んでいた。 

再度、私の前の記事で書いた、スピッツァーの日記を見てみましょう。

私の以前の記事より:15時、7組の搭乗員が、何人かの「long hairs(学者連中)」と、海軍の少将2名とともに作戦室に集まった。何かが起こっていることは間違いなかった。

我々はまもなく、すべてのこの手の込んだ準備の原因となっていた大きな秘密――「Gimmic」――を知ることになった。最初の投下について計画が話し合われており、それはほかならぬティベッツ大佐自身が実行することになっていた。

詳細については海軍のパーソンズ大尉が説明した。それは信じられないものだった。そんなことは到底あり得ない。いや、これは現実ではない、現実であるはずがない――これは、あまりにも豊かな想像力を持った誰かが考え出した奇妙な夢(weird dream)なのだ。人間は、これほどの極限までその才知を働かせ、これほど強大な規模の元素(element)を考案・設計し、破壊のために利用することなどできるのだろうか?そういうことだったのか!

そうなんです。エノラ・ゲイと共に観測機二機グレート・アーティストとネセサリー・イーブルが飛びましたが、スピッツァーは前者の乗組員でした。そして、出撃直前のブリーフィングまで原爆投下というミッションであることを聞かされていなかったのです。そこで彼らは、それを「ギミック」と呼んでいたわけです。

Enola Gay: Mission to Hiroshima

つまり、マイケル・ゴーディンは、この『原爆投下とアメリカ人の核認識: 通常兵器から「核」兵器へ』を書くにあたり、直接的にスピッツァーの日記から情報を得たのではなく、Gordon Thomas、 Max Morgan-Witts『Enola Gay: Mission to Hiroshima』(邦訳:『エノラ・ゲイ: ドキュメント・原爆投下』、TBSブリタニカ、1980年7月)から引用しているのです。

この本の原著はこちらで読めます。いくつか拾ってみましょう。

PDF221ページ

Tibbets concluded the formal briefing with a short homily. Later, he would not be able to recall his exact words; it would be left to Spitzer to produce the only record.

“The colonel began by saying that whatever any of us, including himself, had done before was small potatoes compared to what we were going to do now. Then he said the usual things, but he said them well, as if he meant them, about how proud he was to have been associated with us, about how high our morale had been, and how difficult it was not knowing what we were doing, thinking maybe we were wasting our time and that the “gimmick” was just somebody’s wild dream. He was personally honored and he was sure all of us were, to have been chosen to take part in this raid, which, he said—and all the other big-wigs nodded when he said it—would shorten the war by at least six months. And you got the feeling that he really thought this bomb would end the war, period.”

On August 5, a duplicating machine turned out the single-page operations order, No. 35, which described the final preparations for the strike.

ティベッツは、短い訓話をして正式なブリーフィングを締めくくった。後になって、彼は自分が正確に何と言ったのかを思い出すことができなかった。そのため、唯一の記録を残す役目はスピッツァーに委ねられることになった。

“大佐はまず、自分自身を含め、われわれがそれまでにしてきたことなど、これからわれわれがしようとしていることに比べれば取るに足らないものだ、ということから話し始めた。それから、いつものようなことを話した。しかし、まるで心からそう思っているかのように、実にうまく語った。われわれと一緒に仕事をしてこられたことを、いかに誇りに思っているか。われわれの士気がいかに高かったか。そして、自分たちが何をしているのか知らされないまま、もしかすると時間を無駄にしているのではないか、「ギミック」が誰かの途方もない夢にすぎないのではないかと思いながら過ごすことが、いかに困難だったか、ということについてである。彼は、この爆撃作戦に参加するよう選ばれたことを個人的に名誉に思っており、われわれ全員もそう思っているに違いない、と述べた。そして、この作戦は――彼がそう言ったときには、その場にいた他の幹部たちも皆うなずいた――少なくとも6か月は戦争を短縮するだろう、と彼は言った。そして、彼は本当に、この爆弾が戦争を完全に終わらせることになると思っていたのだ、という感じがした。”

8月5日、複写機によって、攻撃に向けた最終準備について記した1ページの作戦命令書、第35号が作成された。 

ページを前に戻って、同書の165ページを読んでみます。

The operation was code-named “Bronx Shipments.” Tibbets often wondered who invented the endless cover names that were given everybody and everything associated with the project. He was still surprised each time Groves came on the telephone with the words, “This is ‘Relief,’ ” or when Ashworth announced himself as “Scathe,” sometimes bringing news from the “Coordinator of Rapid Rupture,” the pseudonym given to one of the scientists working on the plutonium bomb.

Today’s memo confirmed a recent one from “Judge” (Captain Parsons) giving details of how the “target” for “Little Boy” (the uranium bomb) should travel to “Destination” (Tinian). “Little Boy” was just one of a variety of names for the bomb. It was also known as “the gadget,” “the device,” “the gimmick” (an expression Tibbets favored), “the beast” (often used by scientists now critical of the project), “S-1” (preferred by Stimson), and “it” (used by the 509th, still mystified about what, exactly, the weapon was).

Groves had originally called the uranium bomb “Thin Man,” after Roosevelt. When it was found necessary to shorten the bomb’s gun barrel, Groves renamed it “Little Boy.” The plutonium bomb, from its conception, was known as “Fat Man,” after Churchill.

この作戦には「ブロンクス・シップメンツ(Bronx Shipments)」という暗号名が付けられていた。ティベッツは、計画に関係する人や物の一つ一つに付けられた、際限なく増えていく偽名を、いったい誰が考え出しているのだろうと、しばしば不思議に思った。グローヴズが電話に出て「こちらは『リリーフ(Relief)』だ」と言うたびに、あるいはアッシュワースが「『スケイス(Scathe)』です」と名乗るたびに、彼はいまだに驚かされた。アッシュワースは時折、プルトニウム爆弾の開発に携わっていたある科学者に与えられた偽名、「急速破裂調整官(Coordinator of Rapid Rupture)」からの情報を持ってきた。

今日のメモは、「ジャッジ(Judge)」(パーソンズ大佐)から最近届いた文書の内容を確認するものだった。それには、「リトルボーイ(Little Boy)」(ウラン爆弾)の「標的(target)」を「目的地(Destination)」(テニアン)までどのように輸送すべきか、その詳細が記されていた。

「リトルボーイ」は、この爆弾に付けられた数多くの名称の一つにすぎなかった。それはまた、「ガジェット(the gadget)」、「デバイス(the device)」、「ギミック(the gimmick)」(ティベッツが好んで使った表現)、「ビースト(the beast)」(現在では計画を批判している科学者たちがしばしば使う呼称)、「S-1」(スティムソンが好んだ名称)、そして「それ(it)」(兵器が一体何なのか、依然として知らされていなかった第509混成群団が使った呼称)などとも呼ばれていた。

グローヴズは当初、ウラン爆弾を「シンマン(Thin Man)」と呼んでいた。ルーズベルトにちなんだ名前である。しかし、爆弾の砲身を短くする必要が生じたため、グローヴズはこれを「リトルボーイ(Little Boy)」と改名した。一方、プルトニウム爆弾は、構想された当初から、チャーチルにちなんで「ファットマン(Fat Man)」と呼ばれていた。 

たしかにティベッツ自身がギミックという言葉を気に入って使っていたようですが、結局、軍隊内全員で使っていた符丁にすぎません。しかも、関係者も全然別の名前で呼ばれるなどの徹底ぶりには驚きましたね。しかも、この広島型原爆には、また別の名称もあったわけです。

  • The Gadget
  • The Device
  • The Gimmick
  • The Beast
  • S-1
  • It
  • Thin Man

「It」は、この兵器が何なのか知らなかった人たちが使ったわけです。しかし現在はLittle Boyと呼ばれていますね。

しかし、長崎型のFat Manはチャーチルから来ているとは。。。

林千勝の悪質さ

ともあれ、再度林の悪質ぶりを確認しましょう。

(8/4のブリーフィングにおいて)新兵器の威力については口頭で語られた。母親の名前とそのままのエノラ・ゲイに搭乗する直前、部下達に対し、ティベッツ大佐が最後に行った状況説明の言葉は次の通りだ。

“「『ギミック』(からくり)が誰かの単なる荒唐無稽な夢かもしれないと考えながら、自分たちのしていることの意味が分からないことがいかに大変なことであったか」

「6か月は戦争の終結を早めることになる爆撃作戦に選ばれたことを、個人的に名誉に思っているし、われわれも全員そうだろうと確信している」² “

引用ということにしていますが、これは引用ではありません。勝手に文章を改変して、読者を印象操作しているのです。ティベッツが好んで使っていたことは事実であるものの、このギミックという言葉は広島型原爆につけられた数ある符丁の中の一つにすぎません。

しかも林はこれに「(からくり)」などと説明して、読者を誘導しようとしているのです。極めて悪質です。

gimmickの定義

  • 1
    •  賭博装置を秘密裏かつ不正に操作するための機械装置
    •  巧妙な、あるいは新しい機械装置
      :「ガジェット(gadget)」
  • 2
    • すぐには明らかにならない重要な要素(要求事項や条件など)
      :「落とし穴」「裏」(catch)
      電話の向こうの人が「それって、いい話に聞こえないか?」と言った。私は「そうですね。でも、何か裏があるんでしょう?(what’s the gimmick?)」と答えた。
    •  巧妙で、通常は新しい、策略・仕掛け・やり方
      職業上のキャリアにおいても、単なる能力や職人的な技術だけでは、「仕掛け(gimmick)」の代わりにはならない。
    •  商売や注目を集めるために使う策略・仕掛け
      販売促進の仕掛け(marketing gimmick) 

 

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