人権とは(4):これまでのまとめとアナーキズムについての続きです。
これまでのまとめ
何度でも同じことを書いておきますが、日本や他国のような近代立憲主義においては、
- 人権(自然権)は最上位にある。日本国憲法でもこれがうたわれている。つまり、国や憲法の前に個人の人権がある。
- 国家は、それ自体が目的なのではない。人権を現実に保障するための必要悪、あるいは実践的な制度として導入されたにすぎない。
というところですね。しかし、アナーキストの言い分としては、こうです。
- 国家を作った瞬間に自然権の侵害が始まる
これが実際に世界中で起こっていることです。例としては枚挙にいとまがないのですが、
- 選挙で公約もしていないのに、多額の税金を我々の同意もなく勝手に使っている。
- 国旗損壊罪やスパイ防止法など、我々の人権を侵す法律を虎視眈々と狙っている。
自分の所有物をどうしようが自由。スパイ防止法は表現の自由の侵害を狙ったもの。
などなど、これらは「個人よりも国家の方が上」というおかしな思想に基づくものです。
社会契約論
さて、ここで社会契約論について説明します。近代国家とは、人々が互いに契約を結び、国家に権限を与えてきたという考え方です。ロック、ルソー、ホッブズなどです。
- 私の人権を守ってくれるなら、国家に物事を任せましょう。
- そのためにお金が必要なら出しましょう。何かしら私の働きが必要なら、やりましょう。
- で、契約書はこれこれですね?
ということです。当然ですよね、国家や憲法よりも個人が上です。でも、個人がバラバラだと、例えば悪いやつが来てひどいことをするかもしれませんから、ガードマンが必要です。あるいは、個人どうしでいさかいがあったり、人権侵害があるので、裁判所が必要です。皆がお金を出し合って、自由に使える道路の整備も必要ですね。
そこで「国家」というものとの契約が必要になってくるわけです。あくまで個人が主体であることを忘れないでください。個人が「国家に様々なことを任せるという契約書」にハンコをつくわけです。
契約なんかしてないよ!
あなたはこの契約書にサインしたこと、ハンコをついたことがありますか?ないですよね?例えばこんな話はどうでしょうか?
マンション管理組合の場合は、入居時に規約に同意して契約しますが、国家の場合は、生まれた時点で自動的に加入扱いになるわけです。我々は契約書も見せられていないし、ハンコもついていません。
それなのに、収入を得ると、どういうわけか税務署がやってきてお金を取り立て、そのお金を同意もしていないことに使ってるわけです。おかしくないですか?
最初の説明に戻ると、これは自然権の侵害以外の何物でもありません。
アナーキストの言い分
では、アナーキストの目からはどんなふうに見えているでしょうか?ここでは主に、ライサンダー・スプーナー、ラーケン・ローズの線のアナーキストの主張を取り上げていきます。彼らの最も大きな主張はこれです。
国家には、人を支配する権利そのものが存在しない
ということです。なぜでしょうか?
個人にない権利は、集団にも生まれない
例えば私には、あなたから税金を徴収する権利、あなたを逮捕する権利、あなたの家を差し押さえる権利はありません。これらをやれば、恐喝、監禁、強盗になります。では、100万人集まって投票したら?アナーキストは言います。
100万人分の「ない権利」を足しても、「ある権利」にはならない。
これが、「権利は加算できない(rights are not additive)」という考え方です。
民主主義は権威の発生源ではない
普通の政治思想では、「国民が主権者だから国家権力は正当である」と説明します。しかしローズは、「国民一人ひとりにその権利がないのなら、投票しても生まれない」と主張します。
例えば、100人で投票して「隣の家を没収しよう」と決めても、それは窃盗以外の何物でもありません。民主的だから正当になるわけではないのです。つまり、多数決は道徳を変えることはできません。
「国家は個人の代理人」は成立しない
例えば、弁護士に対して「私の代わりに**してください。」と依頼できます。しかし、私は他人を殴る権利を持っていないので、「私の代わりに殴ってくれ」という代理契約は成立しません。代理人は、依頼人以上の権限を持てないのです。
もし国家が国民の代理人であるなら、国民が持たない権利は行使できません。
では国家が権限を持つ方法は?
国家が私に何か命令できる唯一の方法があるとすれば、、それは私自身が自由意思で国家と契約することだけです。例えば、「私の警備をしてください。その代わり毎月1万円払います」と契約できます。もし、「裁判もお願いします」と裁判サービスの契約ができます。さらに、「道路も整備してください」という契約もできるでしょう。
つまり、国家は一つのサービス会社に過ぎません。
契約は解除できる
契約なら当然、解約できます。例えば、警備会社が気に入らなければ、別の会社へ乗り換えます。ところが国家は、勝手に解約できません。ですから、国家の実態はこういうことです。
国家とは契約ではなく支配である。
ローズが繰り返す問い
ローズはよく、次の質問をします「国家がやってよいことのうち、私人がやると犯罪になることは何ですか?例えば、税金を払え、払わなければ財産を差し押さえる、抵抗すれば逮捕する。これは私人なら犯罪です。
では、制服を着ると突然正義になる理由は何か?という問いです。ローズは、その理由を誰も論理的に説明できていない、と言います。
アナーキストの国家観
国家は特別な存在ではありません。国家は、一つの会社、一つの共同体、一つのサービス提供者にすぎません。そして、どんな会社とも同じように、契約によってのみ権限が発生するというのが彼らの立場です。
したがって、
- 「生まれたから従え」
- 「この土地に住んでいるから従え」
- 「多数決で決まったから従え」
という理由は、いずれも契約の代わりにはならないのです。
アナーキストの言った通り
アナーキストの思想は過激だと思うでしょうか?
何度も確認しておきますが、人権が最上位にあり、それを保障するための仕組みが国家であるわけです。そして、その国民と呼ばれる人たちが少なくとも暗黙の同意、明確に言えば契約したことによって国家が成立しているはずです。
ところが、我々の選挙では、国家自体の有無を問うこと、つまり、存続させるか廃止させるかなど投票しませんよね?つまり、最初から契約しているものとみなされ、契約破棄はできず、しかし、「やり方だけは皆で決められますよ」と言ってるだけなのです。もちろん、選挙公約にありもしないことを勝手にやるので、当然ながら、こんなものはすべて無効なのですが。
そして、昨今では、どんどんと国家権力を増大させ、人権を剥奪する方向に向かっていますね。もちろん、彼らはそうは言いませんよ。彼らの言い分としては、常に
あなたのためです
そういうフリをし続けるのです。仮にアナーキストの思想が過激すぎると考える人でも、これだけは認めるでしょうね、もちろん、これまでの人権と国家の話を完全に理解した人に限りますが、
国家はますます人権を侵害しようとしている。アナーキストの予言通りだ
と。








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