原爆なかった論の戯言:資料集〜『広島市永年防空計画』その他

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広島原爆戦災誌 第5巻』の冒頭の『広島市永年防空計画』および『昭和16年度広島市防空計画』の中の重要と思われる部分を現代語に翻訳したものです。

『広島市永年防空計画』の『第一編』『第二編』

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第一編 総則

第1条

この計画は、広島県防空計画に基づき、広島市における防空の実施、およびそれに必要な人員・物資の整備について、長期にわたって定める事項を規定するものである。

第2条

市長が担当する防空業務は、次のとおりとする。

  1. 市が行う防空の実施に必要な人員の召集、配置、編成、勤務および補充に関する事項。
  2. 防空監視哨の設置準備、召集などに関する事項で、本計画に定めるもの。
  3. 海上防空に関する事項で、本計画に定めるもの。
  4. 市長が行う防空の実施に必要な通信に関する事項。
  5. 市内への警報伝達に関する事項。
  6. 燈火管制および消防に関する事項で、本計画に定めるもの。
  7. 防毒、救護、退去、避難および待避に関する事項。ただし、実施上、警察が担当するものを除く。
  8. 配給、工作および偽装に関する事項。
  9. 市が所有・管理する建物その他の施設(市営造物)の防護に関する事項。
  10. 防空の実施に必要な人員、設備または資材の整備に関する事項。
  11. その他、知事または市長が必要と認める事項。

第3条

市長は防空計画を策定する際、必要な事項について警察署長と連絡・協議するとともに、関係する官公署や事業者団体などとも緊密に連絡を取り、計画に不備がないようにするものとする。

第4条

市長は、毎年度、市防空委員会の意見を聞き、次の事項および知事から特に示された事項について年度防空計画を策定し、知事の認可を受けるものとする。

  1. 本計画において、毎年度決定することとされている事項。
  2. 知事から、毎年度決定するよう指示された事項。
  3. 本計画の規定だけでは対応できない事項。
  4. その年度に整備すべき設備または資材に関する事項。
  5. 特にその年度だけ必要となる事項。
  6. その他、市長が必要と認めた事項。

第5条

市長は、前条に基づいて防空計画を策定したときは、必要な事項を広島市警防団に指示し、さらに必要な部分については市民一般にも周知・指示しておくものとする。

第6条

市長が指定した市営施設の責任者は、所轄警察署長と協議し、本計画に基づいて、

  • 防空警報の受領・伝達
  • 通信・連絡
  • 燈火管制
  • 消防
  • その他の防護

について、具体的な防護計画を作成し、市長に報告するものとする。

第7条

警察署長は市長と協力し、次に掲げる施設などの管理者、またはそれに準ずる者に対して、広島県防空計画に基づく防空計画を作成させ、警察署長を経由して知事に報告させるものとする。

ただし、国が管理するもの、および別途「特別防空計画」を策定するものは除く。

  1. 従業員100人以上を有する工場、事業場、会社、銀行、商店(百貨店を除く)。
  2. 50床以上の病院。
  3. 定員500人以上の興行場および集会場。
  4. 500人以上の学生・生徒・児童がいる学校。
  5. その他、前各号に準ずるもの。

第二編 防空方針

第8条

広島県の防空方針は、沿海州および太平洋方面から来襲する敵の航空攻撃に対して、主として瀬戸内海の重要地域、特に広島・呉およびその周辺を防護することにある。

第9条

前条の方針に基づく広島市の防空については、防空全般、とりわけ「防護」に重点を置くものとする。

その重要度・優先順位は、おおむね次のとおりとする。

  1. 消防・救護
  2. 工作
  3. 防空監視・情報通信
  4. 防空警報の伝達・燈火管制
  5. 防毒・避難(待避)・配給

『広島市永年防空計画』の『第三編 防空実施』『第十章 防毒』

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第十章 防毒

第一節 通則

第147条
防毒とは、主として敵航空機が使用する毒性のガス、煙、液体など(以下、これらを「毒ガス」と称する)に対して、適切な防護措置を講じることによって、被害を防止または軽減することをいう。

第148条
防毒については、一般市民の防毒に関する知識を向上させ、できるだけ防毒面(ガスマスク)または応急防毒具を備えさせて、各自が簡単な自衛措置を取れるようにする。同時に、防毒機関を編成・配置し、防毒設備や資材を整備して、防毒業務に従事させるものとする。

第二節 防毒機関

第149条
市長は、市に所属する職員によって市直轄の防毒機関を編成し、被害の大きい地域の防毒業務に従事させるとともに、警防団の防毒業務を援助させるものとする。前項の組織・編成については、年度防空計画で定めるものとする。

第150条
警防団の防毒部の編成、担当業務、装備は、おおむね次のとおりとする。ただし、編成人員についてはおおよその基準を定めたものであり、被毒の程度に応じて適宜増減するものとする。

部門・係 人員 主な業務 装備
防毒部(班)長 1名 部内の統制 防毒面、防毒衣、防毒手袋、防毒靴、毒ガス検知資料、消毒材料など
総務係長 1名 防毒資材の整備、各部との連絡
総務係員 2名 同上
警戒係長 1名 毒ガス投下の警戒、毒ガスの検知、被毒地域の表示、毒ガス警報の発令・伝達、毒ガス避難の誘導・整理 警報器材、被毒地域標示材料など
警戒係員 9名 同上
消毒係長 1名 被毒した地域・物件などの消毒
消毒係員 5名 同上

第151条
市長は、防毒のために特殊技能者の派遣を求める必要があると認めた場合には、警察署長と協議したうえで、速やかな方法によって知事に申請するものとする。

第152条
防毒機関は、次のような防毒業務にあたるものとする。

  • 毒ガスの検知
  • 消毒
  • 毒ガス警報の発令および解除
  • 被毒地域の交通規制
  • 被毒した物件の使用制限
  • その他の防毒業務

第153条
有害地帯および毒ガス警報が発令された地域では、適宜、交通制限を行うものとする。特に、持久性毒ガスによって汚染された場所については、警防団防毒部員が縄張りなどによって区域を区切り、赤旗または青旗を立てて表示する。夜間には障害注意灯を使用し、立ち入りを禁止するものとする。さらに必要に応じて、使用されたガスの種類や、適切な場所に迂回路を明示するものとする。

第154条
防毒部員は、関係機関と協力して、毒ガス警報が発令された地域内の避難者を誘導するものとする。避難誘導を行う際には、風向、地形、建物などを考慮して避難方向を決定し、誘導するものとする。

第三節 一般市民の措置

第155条
本市の住民には防毒面(ガスマスク)を所持させ、各自で防毒措置を取らせることを基本方針とする。ただし、防毒面を持っていない場合には、やむを得ない応急対策として、完全な防護はできなくても、何もしないよりはましという考えから、特に致命的な傷害を受けやすい呼吸器を防護することに注意し、応急措置を講じさせるものとする。

第156条
毒ガスの兆候を知った場合、または毒ガス警報を聞いた場合には、次のように対処するものとする

一 防毒面を持っている場合は、速やかに装着すること。防毒面を持っていない場合は、呼吸器などに対して応急的な防護措置を講じること。

二 速やかに風上などの無毒地帯へ避難するか、または防護室、準防護室、あるいは防毒設備を施した防空壕へ避難すること。これらの場所へ避難できない場合は、防毒室へ避難すること。

三 液状の持久性毒ガスの場合、被毒地域の風下にも相当濃度の気体状毒ガスが流れ続けるため、危険な範囲にいる者は、防空機関の指示に従って避難するなどの措置を講じること。

四 液状の持久性毒ガスは、その毒性が長期間持続するため、やむを得ず被毒地域を通過するときは、ゴム靴、高下駄、ゴム底の履物などを使用し、毒液が身体や衣服などに付着しないよう注意すること。

五 液状の持久性毒ガスに汚染された場所や物に触れる場合は、防毒手袋またはゴム手袋を使用すること。やむを得ない場合でも手袋を使用し、素手で触れてはならない。

六 持久性毒ガスが雨のように降下している場合、屋外にいる者は、液状毒ガスを避けるため、直ちに屋蓋の下、または適切な遮蔽物の下へ避難すること。あるいは、傘、マント、外套、布片、紙(油紙、包装紙などが適する)などによって身体を防護すること。

第四節 調査

第157条
市長は、防毒業務に従事することになる医師、歯科医師、獣医師、薬剤師、看護婦を調査し、その内容を年度防空計画に明記するものとする。また、前項に挙げた者には、できるだけ防毒用具を整備させ、その整備状況についても明らかにするものとする。

第158条
市長は、警防団員に対する防毒面(ガスマスク)およびその他の防毒用具について、現在どの程度整備されているか、また、それらの保管責任者が誰であるかを、年度防空計画に明記するものとする。

『昭和16年度広島市防空計画』の(防空壕の)防毒的構造

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第五 防毒的構造

一、出入口および非常口には気密扉を取り付け、さらに、できるだけその後方1メートル(3尺3寸)以上の位置に、もう一つの気密扉または防毒幕などを設けること。気密扉は、爆風が直接当たらないように、出入りする通路を屈折させて設置すること。

(イ)気密扉

気密扉・救戸(※原文のまま)には、薄い鉄板(トタン板)または不浸透性の紙・布などを貼り付けること。その取り付けについては、枠木に切り込みを設け、扉との接触部分には羅紗(フェルト)などを使用して、隙間ができないようにすること。

(ロ)防毒幕

(一)排開式

排開式の防毒幕は、不浸透性の布を左右2枚使用し、中央部分を20センチ(約7寸)以上重ね合わせるものとする。その取り付けは、人が出入りできる程度の余裕を残しながら、桟木を使って枠木に十分に打ち付けること。幕の裾には砂などのおもりを付け、床面に密着するよう工夫すること。

(二)捲上式

捲上式の防毒幕は、不浸透性の布に桟木の横骨を取り付けたものとする。傾斜した枠木に沿って、巻き上げたり下ろしたりできるように取り付けること。

二、天井や板壁の隙間は、不浸透性の紙・布などで目張りするか、または「パテ」や粘土などを使って隙間を埋め、気密状態にすること。

三、不浸透性の材料としては、次のようなものを使用する。

  • ゴム引き布
  • 防水布
  • 毛布
  • 厚織布
  • セロファン紙
  • パラフィン紙
  • ハトロン紙

なお、毛布や厚織布などは、使用する際に水または油で湿らせること。

四、換気や採光のための開口部、または監視孔などを設ける場合は、必要なときにいつでも閉鎖できる構造にすること。

第六 施工

一、防空壕の施工方法

防空壕を構築する際には、おおむね次の順序・方法によって施工すること。

(イ)収容する人数、形式、位置および大きさを決定する。
(ロ)掘削を行い、掘り出した土砂を施工の邪魔にならない場所まで運んでおく。
(ハ)杭を打ち込み、支柱を組み立てるなどして、骨組みを作る。
(ニ)板を張って土を盛る、または土を充填するなどして、周囲の壁と上部の覆い(掩蓋)を設ける。
(ホ)腰掛けなどの設備を設ける。
(ヘ)盛土または充填する土は、20センチ(約7寸)ごとの層に分け、それぞれ十分に突き固めて盛り上げること。

二、材料・器具の準備

防空壕の構築に必要な材料および器具は、できるだけ平時から準備しておくこと。

 

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