がん

■■がん

医学界による定義では、がんを「あらゆる悪性腫瘍」とし、次のように述べる。

□「異常な、目的のない、無秩序な細胞分裂から発生し、周囲の組織を侵し破壊する」

今でも恐ろしい病気だが、がんはほとんど当たり前の病気となり、現在では三人に一人が生涯に何らかのがんと診断されると言われるほど、罹患率が高まっている。2018年9月のWHOのファクトシート『がん(Cancer)』[R0.1]では、世界の死亡者数の約六人に一人を占めるとし、以下を述べる。

□「がんは世界第二位の死因である」

ファクトシートの以前のバージョンから得られる統計から、がんによる死亡率が上昇継続していることが示されている。2008年統計では、がんによる死亡は760万人、2012年は820万人に上昇し、2015年には880万人に達している。最新のがん統計は、2018年9月のIARCプレスリリース『世界のがん最新データ。2018年のがんの重荷は、新規患者数1810万人、がん死亡者数960万人に増加(Latest global cancer data: Cancer burden rises to 18.1 million new cases and 9.6 million cancer deaths in 2018)』で報告されている。タイトルの示す通りだ。

一般に、がんは単一の疾患として言及されるが、WHOのファクトシートでは、がんを次のように説明する。

□「身体のどの部分にも影響を及ぼす可能性のある、大きな疾患群の総称」

小見出し『がんの原因(What causes cancer)』[R0.1]のもと、ファクトシートには次の記述がある。

□「がんは、一般に前がん病変から悪性腫瘍へと進行する多段階のプロセスにおいて、正常細胞が腫瘍細胞に変化することにより発生する」

この記述では、発がん原因は説明されていない。しかし、ファクトシートは、次のように記述を続ける。

□「これらの変化は、人の遺伝的要因と三つのカテゴリーの外的要因の相互作用の結果である」

この三つのカテゴリーの外的要因とは、「物理的発がん性物質」「化学的発がん性物質」「生物学的発がん性物質」であり、いずれも「遺伝的要因」と共に後述する。

しかし、がん発症に関連するとして発がん性物質に明確に言及するにもかかわらず、ファクトシートは、がんもすべてのNCDに当てはまる同じ四つの「危険因子」から生じるとし、次を述べる。

□「タバコ使用、アルコール使用、不健康な食事、運動不足は、世界的に主要ながんのリスクファクターである」

この主張は非常に誤解を招きやすい。WHOのファクトシートによれば、毎年176万人が死亡しており、喫煙と肺がんとの関連性は証明済である。喫煙が、がん発症リスクを高める主な理由は、ほとんどのタバコ製品にベンゼン、ホルムアルデヒド、メタノール、ヒ素などの発がん性物質が含まれることだ。

アルコールもまた不健康である。アルコールは肝臓障害と密接な関係があり、初期には肝硬変との診断かもしれないが、肝臓がんにつながる可能性がある。

肝臓に影響を与える事実が、アルコールの毒性を示している。

不健康な食事は確かに健康を害するが、がんとの関連は、WHOのファクトシートの意味するリスクとはむしろ異なる。がんの発生に寄与する食品としては、農薬や食品添加物などの有害な化学物質を大量に使用して生産されたものである。

しかしながら、運動不足ががんの危険因子との主張は全く根拠がない。他の関連因子がないにもかかわらず、運動不足ががんの原因や要因になることはない。

古代エジプトやヒポクラテスを含むギリシャの文献に記述のあることから、がんの起源は古いとされる。がんは主に近代的な病気であり、工業化の結果との主張に反論するための証拠として、これらの文献が引用される。しかし、こうした努力は無駄である。本節での議論で示すように、工業化による発がん性物質をがんに関連付ける証拠がふんだんにあるためだ。さらに、古代におけるがんの発生も、発がん性物質との関連で説明できるし、このあと説明していく。

20世紀以前は、がんは比較的珍しい病気であり、現在のような凶悪な病気ではなかった。この現象の説明の一つは、がんは加齢による病気との説に基づく。ファクトシートは主張する。

□「がん発症率は年齢とともに急激に上昇する」

これは明らかに相関関係だが、特にすべての老人ががんにはならず、因果関係を証明はしない。しかし、このファクトシートは、高齢者の罹患率上昇を説明しうる根本問題への手がかりを与えている。

□「年齢とともに増加する特定のがんリスクの蓄積による可能性が高い」

しかし、高齢者にがんが多いのは、「リスク」の蓄積ではなく、体内「毒素」の蓄積によるからだ。この事実を、限定的ではあるが、WHOのファクトシートは認めている。

□「全体的リスクの蓄積は、人が年をとるにつれて細胞の修復機構が効きにくくなる傾向とあいまっている」

細胞の修復機能低下は、加齢のみが原因ではなく、修復機能を弱くする要因がより深く関係している。

しかし、「がんは加齢の病気」との説は、子どもや若者にも発症する事実により完全に否定される。NCI(米国国立がん研究所)のウェブサイトの『思春期・若年層のがん』[R7.150]が、この問題の規模を示す。

□「がんはAYA世代における疾患関連死亡原因の第一位である。2011年にがんより多くAYA世代の命を奪ったのは、事故、自殺、殺人だけである」

略称「AYA」は15歳~39歳の年齢層を指す。

また、2018年9月のWHOのファクトシート『小児がん(Cancer in Children)』[R0.1]に示されるように、すべての子どもを含む、さらに低年齢層におけるがんの発生率が顕著である。こう述べる。

□「がんは、世界の小児および青少年の主要死因であり、毎年約30万人の0歳から19歳の子どもが、がんと診断されている」

がんの発症に「加齢」が無関係なことは明らかだ。

20世紀初頭、がんの発生率が顕著に増加し始めた。この時期には「病気の細菌論」が台頭していたため、微生物学者はこの病気に関して「細菌」の役割の可能性の調査を始めた。しかし、時折、動物の腫瘍から「ウイルス」が発見されることはあっても、この分野の研究はほとんど進展しなかった。

1937年に米国にNCIが設立された後、がんの原因や治療法の研究を続けるため、さまざまなプログラムが開発された。1950年代には、化学療法によるがん治療を開発するためのプログラムが作られた。1962年には、環境中の潜在的発がん性物質を調査するための別のプログラムが作られた。1964年、ウイルスとがんの関連性の研究が再開され、この分野の研究のために別のプログラムが作られた。


ピーター・デュースバーグ博士が、書籍『エイズウイルスの発明』[B30]で報告することは、しばらくの間は、この三つのプログラムが並行して実行されたが、多くの理由でウイルス・プログラムが医学界に好まれたことである。その結果、ウイルス・プログラムがより多くの資金を獲得し、最終的に他プログラムは、その影に隠れ、十分な資金を得られないまま、自分たちが行うべき研究の進行が困難になってしまった。ウイルス・プログラムに対する優遇措置は見当違いであった。この計画が行った調査では、がんを起こすウイルスの発見はできなかった。結局、この計画は中止され、研究者の何人かは、先述したように、HIV/エイズの研究計画に移った。

しかし、「ウイルスとがん」の関係をまだ調査中だった1971年、リチャード・ニクソン(大統領)が「がんとの戦争(War on Cancer)」を開始したのは有名な話である。この「戦争」の主目的は、がんのとらえどころのない治療法を見つけることだった。しかし、軍事的な言葉の使用は、問題に対する軍事的アプローチを促し、病気を「攻撃し」「戦い」「殺す」方法の実行につながった。これは、病気、特にがんに取り組むための全く新たなアプローチでもなかった。この「戦争」構想の目的は、最も恐ろしい人間の病気に対するキャンペーンの強化であった。

がん罹患率と死亡率の継続的増加は、この「戦争」に負けたことを示す。この失敗の本当の理由は、そのアプローチががん、特にその原因と治療法について根本的欠陥のある理論に基づくからだ。

がんにまつわる学説のひとつとして「遺伝子」がその進行に関係するというものがある。様々な遺伝子を様々ながんに関連付ける努力がされているが、これは欠陥理論である。さらに、遺伝子では、がんの既知の側面の多くを説明不能であると示す十分な証拠がある。この極めて重要な点については、デビッド・ラスニック博士が、先に引用した2002年の記事『がんの異数性説とその受入の障壁』[R7.151]で、次を説明する。

□「遺伝子を全く変異させない発がん性物質のリストが増えつつある。さらに、がんに特異的な遺伝子変異はない。一つの臓器の腫瘍でさえ、一様に遺伝子が変化することは稀である。そして、決定的な反証として、ヒトや動物の正常細胞を、がん細胞に変化させる遺伝子が、がんから分離されたことはない」

この節の冒頭で述べたように、WHOの主張としては、発がん性変化には「遺伝的要因」が関係し、それに相互作用するのが、物理的、化学的、生物学的の三種類の「発がん性物質」とのことだ。ファクトシートは遺伝的要因の役割を十分説明していないが、一般に医学界では、がんは遺伝子変異により起こるとされる。しかし、ラスニック博士とピーター・デュースバーグ博士の研究は、その主張への議論の余地のない反論を提供する、つまり、がんに特異的な遺伝子変異が存在するとの主張と、遺伝子が健康な細胞をがん化させるとの主張に対するものだ。後述する彼らの研究が示すのは、「遺伝的要因」は、がん発生に無関係なことだ。

生物学的発がん性物質(biological carcinogens)は、WHOのファクトシートで次の定義がされている。

□「特定のウイルス、バクテリア、寄生虫による感染症」

第3章での議論が提供したのは、ウイルス、バクテリア、寄生虫が「感染症」を起こすとの主張に対する明確な反証である。寄生虫については、第8章でさらに詳しく説明する。残念ながら、「細菌論」に固執するあまりに「微生物」が、がん関連を含め、病気の原因に関する理論の主要な特徴であり続けている。2014年の論文『感染症とがん:世界的な分布と疾病の重荷』[R7.152]が示す。

□「感染症はがん発症の主要原因の一つである」

この声明には信頼性があるように見えるが、真実からはほど遠い。

にもかかわらず、「細菌論」は医学界のドグマにしっかりと定着し、IARCのグループ1カテゴリーのヒト発がん性物質には、11種類の「生物学的物質」が含まれ、そのうち7種類はウイルスである。興味深いことに、このグループに含まれる「感染性物質」のうち六つは以下とされている。

□「慢性炎症を介して作用する間接的な発がん性物質」

生物学的物質が、がんを起こすとの説は、同じようにWHOのファクトシートで次のように流布されている。

□「2012年に診断されたがんの約15%は、ヘリコバクター・ピロリ、ヒトパピローマウイルス(HPV)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、エプスタインバーウイルスなどの発がん性感染症(carcinogenic infection)に起因する」

発がん性感染症という言葉は無意味だ。まず「細菌」は感染症を起こさない。次に「細菌」が正常細胞に対し、がんを発生させる腫瘍細胞に変えることはない。第三に、さらに重要なこととして、がんは細胞の増殖を伴うが、「感染」は細胞の破壊を伴うと言われることだ。これらが全く異なる作用機序であることは明らかだ。

したがって、「生物学的発がん性物質」カテゴリーも、がんの発生とは無関係として却下しうる。

しかし、「物理的発がん性物質」カテゴリーを否定はできない。WHOのファクトシートは、このカテゴリーが電離放射線を含むと認めており、第6章で論じたように、これがヒトの発がん性物質であることは証明済だ。

また、「化学発がん性物質」カテゴリーも外せない。WHOのファクトシートでは、アスベストやヒ素など、わずかな例しか言及しないが、このカテゴリーは、がん発生が既知の関連因子の主要グループを表す。


デブラ・デイビス博士は、著書『がんとの戦い秘史』[B26]で、1936年にブリュッセルで開かれた第二回がん会議に言及している。その議論の中で、ある種の工業用化合物の発がん性が認識されるなど、がんの原因についてかなりのレベルの知識が明らかになったと報告している。特に言及されているのがベンゼンであり、1948年にアメリカ石油協会はその安全レベルをゼロであると認めた。しかし、半世紀以上たった今でも、ベンゼンは工業用化学物質として広く使われている。IARCが公式にグループ1発がん性物質に分類したにも関わらずだ。

また、デイビス博士は、1949年の雑誌サイエンティフィック・アメリカンのグロフ・コンクリン(Groff Conklin)による記事を引用している。これは『がんと環境』[R7.153]と題され、1900年以降のがん死亡率の増加に言及している。また、この病気の発生率増加を説明するための調査にも言及している。

□「1900年当時とは比較にならないほど複雑な環境の中で(この調査が)求められている。調査は発がん性物質に集中している」

1949年から数十年の間に、「環境」はさらに複雑化し、汚染もはるかに進んでいる。しかし、ほとんどの化学物質が未検証であるものの、最もよく検査されるのが発がん性であり、発がん性証明済物質のリストは拡大し続ける。グループ1の発がん性物質のリストにあるものは、塩化ビニル、トリクロロエチレン、PCB、TCDDであり、これらはすべて毒性の有機塩素化合物である。

しかし、毒性や発がん性が既知にもかかわらず、これらや他多くの化合物が産業界で広く使用され続けている。これは、毒物や発がん性物質に日常的に曝露する主要原因が職場であることを意味するが、ある種の産業が特に大きなリスクを伴いうる。エプスタイン博士が『がんの政治』[B35]で説明する。

□「様々なカテゴリーの労働者に、発がん性物質曝露のリスクが高い」

彼の言う、労働者の発がん性物質曝露可能性のある産業としては、鉱業、金属加工、製錬などだ。いずれも長い歴史の産業であり、何世紀にもわたり続くことも少なくない。

昔の産業は現代とは全く異なるプロセスを使っていたとはいえ、いずれも自然界の様々な「毒」に曝露することになり、その多くに発がん性が分かっている。例えば、金の採掘では、水銀やヒ素への曝露が知られる。さらに「選鉱くず」の廃棄で、地域住民も発がん性物質に曝露する。このような曝露が歴史を通じて行われたため、現在のみならず遠い過去におけるがん発生を説明するのに十分な根拠を与える。

欧米諸国における工業化の急速な進展は、環境汚染物質の量と濃度を著しく増加させ、その中には発がん性物質が多く含まれる。しかし、現在、環境中に蔓延する有毒物質や発がん性物質の組み合わせはますます複雑化しており、特に20世紀半ば以降、がんの発生率が驚異的に上昇した主要因を一つに特定することは不可能だ。

ある発がん性物質が特定のがんを起こしたかを判断する方法には多くの困難が伴う。この困難は、ある化学物質を市場に出す前の安全性試験が事実上不可能であることに起因する。ある物質が発がん性であるとの直接的証拠のないことは、その物質の安全性を意味しない。物質がもたらす害の証明は、多くの場合、疫学研究から得られる。これは常に、物質が市場に公開された後の複雑な実環境で実施される。疫学研究は、相関関係を示すことはできても、因果関係の直接的証拠の発見は、ほぼできない。

さらに重要なこととして、単一の発がん性物質への曝露でのがん発生はほぼなく、特定の状況を除き、多くの異なる毒性物質の長期間曝露の結果として発生することだ。エプスタイン博士が示すように、これら曝露原因は多岐にわたる。

□「職場において比較的高い濃度で労働者が曝露する可能性のある毒性・発がん性化学物質は、周辺地域の大気や水にも排出・流出する。消費者製品や一般環境を通じ、労働者は職場と同じ化学発がん性物質に曝露する可能性がある」

現実世界では、人々が定期的にさらされる有害物質の組み合わせが複雑で多様なため、疫学的調査によって、特定の曝露と曝露集団のがん発生との間に明確かつ直接的な関係を証明できない。この困難さを利用し、タバコ産業は何十年にもわたり、喫煙とがんに直接的関係があるとの主張に反論する試みを続けてきた。

しかし、時折、直接的因果関係が証明される事例も起きており、インドのボパールで起きた災害がその一つだ。この悲劇的な事件では、極めて高いレベルの特定の猛毒ガスに、膨大な数の人々が曝されたのである。第8章で詳述するが、この事故により、この地域のさまざまな種類のがんの発生率と死亡率が大幅に上昇した。

がんと特定発がん性物質との直接的因果関係の立証が困難なため、そのような関連性は「疑わしい」と関連業界は主張し、それにより起こった損害に対する責任を回避することもできる。この点については、デビッド・マイケルズ(David Michaels)が、その適切なタイトルの著書『疑いは彼らの製品』[B51]で説明している。

□「アスベストによる中皮腫のように、ある疾患がある曝露に特有という、ごく稀な例を除き、疫学者は特定の化学物質曝露が特定患者のがんを間違いなく起こしたと述べることはできない」

さらに、特定産業の周辺に住む人々は、環境に排出された有毒で発がん性のある廃棄物にさらされている。エプスタイン博士は説明する。

□「高度な都市化コミュニティにおける石油化学その他の特定産業の近隣に住むことは、超過がん発生率の集積により証明されるように、がんリスクを増加させる。高レベルの有毒および発がん化学物質が、広範囲の産業により周辺コミュニティ大気中に故意に排出されている」

第6章での議論で、製薬業界が有害排水で環境を汚染している責任のある者の一つと示した。

発がん性物質への曝露は、赤ん坊や小さな子供向けの製品を含む日常的消費財の使用により、家庭内でも起こる。エプスタイン博士は、『有毒美人』[B36]で一例を紹介している。

□「例えば、多くのベビーソープ、ベビーシャンプー、泡風呂は、エトキシレートと呼ばれる一連の成分の中に1,4-ジオキサンと呼ばれる発がん性汚染物質を隠している」

エトキシレートは界面活性剤で、多くの洗浄剤タイプの製品に使用される。1,4-ジオキサンはダイオキシン類の仲間ではないが、グループB2発がん性物質に指定されている。これは「ヒトに対する発がん性の可能性がある」を意味し、あらゆる消費財、特に赤ん坊や小さな子供向けの製品成分として使用すべきではない。


エプスタイン博士の説明によれば、ベビー用品によく使われる成分の中には、実験動物でがん誘発証明済のものが多くあるという。これらは重要な知見である。なぜなら、動物でのがん誘発が示された物質は、実際には発がん性がなくとも、ヒトに対する発がん可能性と見なければならないことが、科学研究界での広い認識だからだ。これにより、動物実験継続が主張される傾向があるかもしれないが、それは稚拙な議論である。主な理由としては、多くの化学物質が、実験で発がん性を示したのに、製品成分として使用され続けていることだ。動物実験が人間の使用にとって「安全」な製品を生み出すとの主張は、明らかに根拠がない。

タルカム・パウダー(ベビー・パウダー)も、赤ん坊だけではなく、よく使われる製品だ。エプスタイン博士によれば、タルカム・パウダーは実験動物でがんを誘発し、卵巣がんとの「強い関連」を示す製品でもある。これは特定のタイプの人間のがんのみだが、しかし、タルカム・パウダーと動物のがんが関連するとの事実は、例えば子宮頸がんのような女性の生殖器系のがんにも関係するのである。

少女や女性が日常的に使用するパーソナルケア製品には、有毒で発がん可能性のある成分が含まれ、重大な懸念がある。これらの製品には、生理用ナプキン、タンポン、女性用デオドラント剤、ティッシュが含まれるが、これに限定されない。これらの製品の成分には、通常は塩素系化学物質を含む漂白剤や、発がん性が既知のフタル酸エステル類を含む「香料」を含むことがある。これら化学物質は、子宮頸がんの要因として「ウイルス」と呼ぶ非生物の粒子よりも、はるかにもっともらしいものである。

皮膚に塗布する製品の成分としての発がん性化合物には、がん発生を促進する作用がある。前述のように、皮膚が化学物質を吸収して血液中に入り、体内のさまざまな器官や系に拡散する可能性がある。したがって、この問題は女性だけでないことが明らかだ。有毒で発がん性のある成分を含む製品を性器に塗布する男性や少年も、同様に生殖器系のがん、例えば前立腺がんを発症する「リスク」がある。NHSによれば、前立腺がんの原因は不明だが、珍しく「感染症」との関連は主張されていない。

興味深いことに、18世紀のイギリスで若い煙突掃除夫に陰嚢がんが多いことが発見された。そして、煙突の煤煙への常時曝露との直接的関係が明らかになった。煤煙には様々な炭化水素が含まれており、一部は発がん性が確認済だ。煤煙曝露だけでなく、がん発生リスクに拍車をかけたのは、ほぼ洗濯をしない極めて悪い衛生状態や、これらの少年が確実に住んでいただろう極めて貧しく不衛生な環境などの要因がある。

この例は、がんが「老化」の病気であるとの考えをさらに否定するものだ。

小児がんの代表的なものに白血病があるが、ACS(アメリカがん協会)のウェブサイトの『小児白血病の原因は分かっているのか?』[R7.154]では、おなじみの主張がされている。

□「ほとんどの小児白血病の正確な原因はわかっていない」

にもかかわらず、ACSは、もうひとつおなじみの主張をしている。白血病の「危険因子」には「放射線やある種の化学物質」を含む環境的危険因子に加え、「遺伝的因子」も含むというのだ。白血病は血液細胞のがんで、最も多いのはALL(acute lymphoblastic leukaemia~急性リンパ芽球性白血病)である。医学界によれば、ALLの原因もほぼ「不明」とされているが、2013年のランセット誌の論文『急性リンパ性白血病』[R7.155]は、次を述べる。

□「電離放射線はALLの原因となる被曝として確立されている」

さらに、NHSのALLに関するウェブページでは、既知の危険因子として「無関係のがん」に対する化学療法歴をあげており、そのページでは、他のがんに使用された可能性のある特定の化学療法「薬」についても言及している。化学療法の「治療」とがんの発症との関連は非常に重要であり、本節で後述する。

何十年にもわたる否定の後に、電離放射線の極度の危険性は、現在では医学界に広く受け入れられている。さらに、すべての電離放射線はグループ1の発がん性物質に分類されている。

電離放射線より危険度は低いものの、非電離放射線もまた、がんを含む多くの有害な影響と関連している。もっとも、いまだに医学界はこの関連を否定している。この否定については、これまで議論してきたが、CDCの小児白血病に関するウェブページ[R7.156]に『不確か、未証明、あるいは論争の的となる危険因子(Uncertain, unproven or controversial risk factors)』との項目があり、そこにある『電磁場への曝露(exposure to electromagnetic fields)』との項目がそれ(否定)を示している。白血病と電磁波曝露の関連が不確かで、未証明、あるいは議論の的になるとの考えには根拠がない。電磁波が発がんリスク増加に関連するとの証拠は十分あり、IARCがRFRと電磁波をグループ2B発がん性物質に分類していることからも明らかだ。

また一方、非電離放射線と白血病以外のがんとの関連は既知であり、W・ロス・アデイ(W Ross Adey)医学博士は、記事『電磁場、脳組織の機能調節 -生物学のパラダイムシフトの可能性』[R7.157]で次を指摘する。

□「疫学的研究においても、女性および男性における環境電磁界への職業的曝露と乳がんの関係が示唆されている」

さらに彼は、次の重要な指摘をする。被曝が常に多重であること、電磁波が化学物質と相乗的に作用する可能性があることだ。

□「環境電磁場は、がん促進作用が既知の環境化学物質曝露とあいまり、脳腫瘍リスクを高めるように作用する可能性がある」

この点を強調しすぎることはないだろう。人体は生化学的、生体電気的な性質を持ち、これらの「システム」は密接に関連しており、一方のシステムを混乱させる影響は、必然的に他方のシステムも混乱させることである。もう一つ強調するのが重要な点としては、病気、特にがんは、通常、数十年とは言わないまでも、何年にもわたり有害な因子に何度もさらされた結果であることだ。


ニール・チェリー博士は、先に引用した記事『電磁波の健康影響に関する証拠』[R7.19]の中で、メラトニン濃度低下とガンの関連について言及している。また、彼が言及する研究結果についても触れている。

□「EMR(電磁波)と乳がんの因果関係と分類するのに十分な結果である。メラトニン減少がその生物学的メカニズムである」


『バイオイニシアティブ報告書2012年』[R6.46]には、電磁波曝露とがんの関連に言及する論文が多数掲載されている。例えば、2003年の論文では、ヒトのリンパ球が電磁波に曝露して発生した異数性に言及し、次を記している。

□「この効果は非熱的であった」

他の『バイオイニシアティブ報告書2012年』[R6.46]の論文『ワイヤレスフォンの使用と脳腫瘍のリスク増加のエビデンス』[R7.158]では、子どもの脆弱性に言及し、次を述べる。

□「発達中の脳は毒素に敏感であり、おおよそ20歳程度まで発達中である」

これは、携帯電話が20歳未満の子供や若者にとってはるかに重大な健康被害をもたらす理由を強調する、極めて重要なものだ。論文はさらに次を説明する。

□「子供は大人より頭が小さく、頭蓋骨が薄い。また、脳組織は導電率が高く、これらの状態により、RF-EMFからの吸収が大人よりも高くなる」


『バイオイニシアティブ報告書2012年』[R6.46]の『一般向け要約(Summary for the Public section)』には、以下のような様々な研究の存在に言及している。

□「幼児期に携帯電話を使い始めた子どもは、20~29歳の年齢層になるまでに神経膠腫(グリオーマ)を発症するリスクが5倍以上(500%以上)ある」

神経膠腫は「侵襲性悪性腫瘍(aggressive malignant tumours)」と呼ばれ、医学界による定義は以下の通り。

□「神経系の非神経細胞(glia)の腫瘍」

また、定義によれば、この用語は中枢神経系のすべての腫瘍を指す言葉として使用される可能性がある。神経膠腫は白血病とは異なるが、どちらも身体の異なる部位に発生した「がん」である。白血病を、医学界は次のように定義する・

□「骨髄およびその他の造血器官が、ある種の白血球の数を増加させる悪性疾患のグループ」

先に引用したように、ACSは白血病の正確な原因を不明とするが、「ある化学物質」を含む「危険因子」が関与すると主張する。その中には、医学界の激しい否定にもかかわらず、血流に入り血液を汚染するワクチンの有毒成分が含まれる。ワクチンとがんの関連は、二つの揺るぎない事実から証明される。第一に、少なくとも二つのワクチン成分、水銀とホルムアルデヒドは、既知の発がん性物質である。第二に、ワクチンは安全との主張にもかかわらず、発がん性評価がなされていないことだ。この事実は、ワクチンの添付文書を参照すれば確認することができる。すべての添付文書に共通する適切な文言としては以下である。

□「(当該ワクチンは)発がん性、変異原性、生殖能力への影響について評価されていない」

ワクチンの発がん性未評価の意味することは、医学界は、ワクチンとがんの関連性はないとは主張できないことだ。

さらに、ワクチン接種年齢が、白血病の中で最も多いALLの多発する年齢層と密接に関係することが、ウェブページ『急性リンパ性白血病』[R7.159]で報告されている。

□「2~3歳の子どもに発症のピークがあり、急性リンパ性白血病と診断された子どもの半数以上は5歳以下である」

水銀と白血病の関連性は、第6章で取り上げたアマルガム充填を除去した後に白血病が消失した子供の例で、ハル・ハギンズ博士も立証している。

一般に医学界は、がん発生に関わるプロセスの知識が乏しいが、一部の科学者はこの病気について理解を深めつつある。最も顕著なのは、デビッド・ラスニック博士とピーター・デュースバーグ博士だが、彼らはがんの異数性理論を共同で研究している。これは、すべてのがんが染色体異常の結果発生するというものだ。

これは新たな理論ではなく、1890年にデイヴィッド・フォン・ハンセマン(David von Hansemann)が紹介し、1914年にテオドール・ボベリ(Theodor Boveri)博士がドイツ語で出版した本の中で初めて正式に述べ、その後、1929年に英語に翻訳された。この理論の発展についての詳しい情報は、ラスニック博士のウェブサイトで入手できる。

染色体の変化による問題の明確な例として、ダウン症がある。この病気については、先に最小の染色体の一つの誤りが原因と説明した。染色体異常はがんにも起こる。しかし、ラスニック博士は、先に引用した論文[R7.151]の中で、ダウン症とがんの違いを次のように説明する。

□「ダウン症の場合、欠陥は生殖細胞で起こるので、染色体異常は体内のすべての細胞に存在する」

ダウン症の節で述べたように、生殖細胞系列(germ line)とは、人体が発生する際の主要細胞である生殖細胞(reproductive cell)に発展する細胞である。

しかし、がんの場合を、ラスニック博士はこう説明する。

□「身体が形成された後、特定の細胞で(欠陥が)発生する」

この区別は非常に重要だ。

異数性とがんの関係を明らかにした科学者は、ラスニック博士とデュースバーグ博士だけではない。シーア・コルボーン博士は、内分泌かく乱化学物質の危険性を明らかにすることに重点を置いて研究していたが、異数性の存在も認識していた。ウェブサイトOur Stolen Futureでは、『異数性とは何か、なぜ重要か?』[R7.161]と題し、異数性とがんの相関関係について解説している。

□「もう一つの異数性である『有糸分裂』異数性は、事実上すべての固形腫瘍のがんに関連している」

したがって、細胞分裂の正常なプロセスに何らかの障害が生じ、娘細胞に受け継がれる染色体に「欠陥」が生じ、異数性になることが明らかだ。減数分裂の異数性は出生時障害をもたらし、有糸分裂の異数性はがんをもたらす。「有糸分裂性」異数性を起こす「因子」はすべて発がん性物質と定義されねばならないことが明らかだ。ラスニック博士が述べる。

□「事実として、これまで調べられた発がん性物質はすべて異数性を引き起こす」

これは「化学的発がん性物質」だけを指すのではなく、「物理的発がん性物質」と呼ばれるもの、特に電離放射線を指す。これは、染色体損傷、すなわち異数体形成を起こすと証明されている。電離放射線には催奇形性と発がん性があり、異数性、出生時障害、がんの間の直接的かつ密接な関係が示されている。

がんに関連するもう一つの要因は、高いレベルの「フリーラジカル」である。以前に引用した論文『薬物による酸化ストレスと毒性』[R7.9]には、このように書かれている。

□「腫瘍細胞は活性酸素のレベルが高く、ヒトの悪性腫瘍では正常細胞に比べて酸化ストレスおよび/または酸化的DNA損傷のレベルが高いことが研究で示されている」

要約すれば、がん発生には、毒素、酸化ストレス、細胞損傷、染色体異常という相互関連する要因が複合的に関与していることになる。

WHOは、当面のがん発生率上昇継続を予測するが、この悲惨な予測の実現は不可避だ。しかし、WHOは、死亡率の減少達成に楽観的との主張だ。

□「がんを早期発見して治療すれば、死亡率を低下しうる」

この主張は誤解を招く。ほとんどのがんの治療後生存率は低い。つまり、早期発見と治療が死亡リスクを下げたり、生存を保証はしない。低生存率の主な理由は、「治療」の性質による。最も一般的な「治療」は、手術、化学療法、放射線療法だが、これらはすべて、がんは戦って「殺さねばならない」病気との誤った理論に基づく。

さらには、「治療法」の化学療法と放射線療法の二つは、発がん性が認められている、つまり、がんを起こすと証明済だ。これらを「治療法」として使う根拠は、がん細胞を「狙い撃ち」して殺すと考えられていることである。これまで議論したことは、いかなる治療法であれ、がん細胞を含む特定の細胞を「狙い撃ち」することが不可能なことだ。また、これらの治療法は、患者に合わせて調整され、がんは殺すが患者は殺さない適切な「量」を受けられるとされる。これは、パラケルススの誤りのもう一つの誤った適用である。残念ながら、これらの治療で問題が解決するわけではない。これは、がん治療にもかかわらず、生存できなかった大勢の人で証明されている。明らかに、生存する人もいるが、それは治療によるものではなく、治療にもかかわらず生存しているのだ。

化学療法は発がん性があり、がんの原因となる。先に挙げた例として、NHSにより、ALLの多くの症例が「以前の化学療法」が原因としていることで示されている。発がん性物質で起こったがんは、発がん性物質で「治す」ことはできない。これらの治療は、毒素の体内負担を悪化させるだけで、問題の悪化や病気の「再発」、通常はより攻撃的な形の再発を助長することになる。

このことは、がんのもう一つの貧弱な理解の側面、すなわち病気が「戻る」こと、あるいはいわゆる「転移」を浮き彫りにする。WHOのファクトシートでは、次のように説明される。

□「がんを決定づける特徴の一つは、通常の境界を越えて成長する異常細胞が急速に作られることであり、その細胞が体の隣接部分に侵入して他の臓器に転移しうることであり、後者の過程を転移と呼ぶ」

転移は、「原発(primary)」がんとは異なる臓器や部位での発生が多いため、「二次(secondary)」がんとも呼ばれる。医学界の転移の見方としては、元のがんが治療で根絶されず、がん細胞が体内の新たな場所に移動したというものだ。しかし、これはありえない。がん細胞が他の部位に「転移」したり、他の臓器に「侵入」するとの考えは、細胞生物学と完全に矛盾しており、誤りである。細胞の医学界による定義は以下である。

□「複雑な生物は、特定機能を果たすために特別に変化した数百万の細胞で構成される。細胞分化プロセスは胚の発生初期に始まり、特定のタイプの細胞(例えば、血液細胞、肝臓細胞)は常に同じタイプの細胞を生み出す」

転移についての医学界による理解の欠陥は、限定的ではあるが、既に認識されている。2017年1月の論文『がん細胞が広がる仕組みの解明につながる遺伝子の発見』[R7.162]では、次を認めている。

□「がん細胞が広がる仕組みの根本メカニズムはよく分かっていない」

細胞の専門化とは、ある臓器の細胞が他の臓器に「拡散」しないことを意味する。

興味深いことに、転移は実験動物におけるがんの「自然な進行」ではないようだ。『生体解剖の暴露』[B58]の中でトニー・ペイジ博士が説明する。

□「人工的に発がん性物質を投与された実験動物は、通常、転移を全く起こさない」

これは、病気研究実験に動物を使うことの大きな問題点を強調する重要なコメントである。それは、研究対象の病気がしばしば人工的方法で誘発されることだ。したがって、研究者が同じ「病気」を研究している可能性は低い。人工的に病気を作り出すことは、動物実験の結果から人間の健康にとって意味のある結論を導き出せはしないことを意味する。これは、疾病研究への動物利用に対する最も強力な意見の一つである。

「二次」がんの代表的な部位は肝臓である。先述の通り、肝臓は主要解毒器官だ。したがって、肝臓がんは、それを体が処理して排除する能力を失くしている過剰な毒素の体内負担から生じるものだ。これらの毒素には、化学療法「薬」としての化学物質を含む。つまり、「治療」は必然的に転移の原因となるのである。残念なことに、二次がんの「治療」では、化学療法や放射線療法、あるいはその両者をさらに投与されることが多い。このような毒物の猛攻の結果、患者が死亡し、「がんとの戦いに敗れた」とされるのである。現実には、患者は毒素蓄積との戦いに敗れたのだ。毒素には、「治療」で使用されたものに加え、元々のがんの原因となった物質も含まれる。

これらの治療法では患者を救えないことが多いとの認識が、がん研究界を鼓舞し、とらえどころのないがん治療法の探求を続けさせている。がんの原因因子として「感染症」に言及するにもかかわらず、奇想天外にも、がん「治療」の可能性としての「細菌」利用を考える新たな理論がある。2015年10月の記事『がんと闘うウイルスが承認される』[R7.163]が、ネイチャー誌のウェブサイトにニュースとして掲載されたが、こう書かれている。

□「10月27日、米国食品医薬品局(FDA)は、進行性メラノーマ治療薬として、talimogene laherparepvec(T-Vec)という遺伝子組み換えウイルスを承認した」

このアプローチには多くの問題がある。特に、遺伝子工学という、不確実で予測不可能、かつ不正確なプロセスで、大きな危険の可能性が明らかな技術を用いる点だ。第6章の議論では、遺伝子操作実験の結果をコントロールすることが不可能であることを示した。特定「ターゲット」への到達能力の無いことと合わせ、この問題は人体に導入される「治療法」に対して深刻な懸念を抱かせる。

がんに対する「ウイルス」治療研究の発端としては、患者の「感染症」の症状、特に発熱時に、ときおり腫瘍退縮が観察されることだ。これは、ウイルスが感染症の原因と証明するものでも、ウイルス感染によるがんの「治癒」を証明するものでもない。さらに、このアプローチは、「感染症」が、がん発生に大きく寄与するとの主張に真っ向から対立するものである。

「感染症」症状は、身体の解毒と、毒素を老廃物として排出しようとする働きを示している。「感染」後に、ガンがその結果として「寛解」することは、いくつかの重要なポイントを示している。がんは体内毒素の蓄積に直接関係すること、がんからの回復には解毒が重要な側面であること、そして身体には自己治癒力があることだ。

細菌も同様に、がんの原因物質とされている。例えば、ヘリコバクター・ピロリ菌は胃がんの原因とされる。しかし、細菌のがん「治療薬」可能性の調査も行われている。また、細菌において必要な性質を発現させるため、遺伝子工学的手法を用いた研究も行われている。この分野に多くの問題があることは明らかだ。

医学界が「がんとの戦い」に勝利していないことは、十分明らかだ。しかし、この敗戦は必然だった。彼らの採用したアプローチが欠陥理論に基づくからだ。つまり、病気を「殺す」ためには発がん性を持つ治療法の使用を適切と考えるものだ。このアプローチは、がん発生率と死亡率の悪化のみに成功した。残念ながら、この問題はがんに限ったことではない。あらゆる慢性疾患に関わるメカニズムについての医学界の理解には欠陥がある。これを本章で明らかにしてきたが、第10章でさらに論じることにする。

がんを避けることは可能だが、そのためには、病気に対する全く異なる理解が必要となる。これまで述べたように、がんは主に、発がん性物質のみならず、さまざまな有害物質や影響に長期間曝露した結果として発症する。そのほとんどは、様々な産業の製品、廃棄物、排出物である。エプスタイン博士が『有毒美人』[B36]の中で説明する。

□「強力な科学的証拠が示す点としては、消費者製品が含む発がん成分を別とすれば、現代のがん流行の主要原因は、石油化学および原子力産業の技術とその環境汚染物質に直接関係している」

なお、非電離放射線も「現代のがんの蔓延」の一因として含める必要があろう。

この病気による罹患率と死亡率の継続的な上昇を防ぐためには、がんに対する医学界の欠陥のあるアプローチから、病気の真の理解に基づくアプローチに切り替えることが急務である。

さらに、がんは身体を攻撃する「病気の実体」ではなく、体内のダメージの現れであると認識する必要がある。

著書『ナチュラル・ハイジーン:人間の原始的な生き方』[B66]で、ハーバート・シェルトンは、がんについて絶妙にシンプルな説明をしている。

□「がんは攻撃しない。がんは進化する」

さらに、こう説明する。

□「がんは、正常な体には発生しない。つまり、真に健康な身体は、がんを進化させないということだ」

「真に健康な体」との言葉の意味は、すべての「病気」に対して意味を持つ。これを第10章での議論で明らかにしよう。