伊藤詩織:性暴力に対する日本の態度は過去に閉ざされたまま(後半)

伊藤詩織:性暴力に対する日本の態度は過去に閉ざされたまま(前半)の続きです。


この時だったんです。私は、自分の頭を被害者からジャーナリストに切り替えたんです。警察がいかに事件を扱うのかを分析し始め、彼らとのすべてのやりとりを記録することにしました。これ以来、ブラにデジタルレコーダーをセットしました、どの警察署に行く前にも。私はいつも怯えていました、録音が見つかったら、何をしたり言ったりするのだろうと。その当時弁護士がいませんでしたから。でも、彼らのアプローチの仕方を記録しなくてはならないように感じました。これを継続できる唯一の方法は、自分の感情を完全に隔離してしまうことでした。このことを、自分がフォローしている「お話」のように扱う必要があったんです。私は、ジャーナリストとして真実を追求し、切り離し、私情を挟まないようにしたんです。それが未だに、自分の中にそれを構成するための方法です。

二年以上にわたって収集した録音を、とうとう本にすることができ、昨年出版しました。私のジャーナリストとしてのトレーニングと、あまりにたくさんの会話から取得した録音の中の事実が、出版社の弁護士を満足させたのかもしれません。レイプ主張の後で私の受けた扱いの説明が、フェアで正確であることをです。

私は自分の経験をシェアし、将来レイプされた方の社会的・法的サポートの両者を改善したかったんです。こんな必要がなければよかったんです。小さな妹と家族は反対でした。私は、家と家族から離れて英国に移動しました。公になった時にやってきた糾弾と注目から逃れるために。

私がカメラの砲列の前で声明を出してから一年になりますが、日本における景観はゆっくりですが確実に改善してきています。「日本メディアネットワークにおける女性(?)」が組織されました、メディアの中の女性ジャーナリストと女性をセクハラから守るためのものです。しかし、このネットワークのメンバーは圧倒的に匿名を選択しています。彼女らはオンラインでの攻撃と反動を恐れているのです。

2018年4月に、このドキュメンタリーを撮影した後、財務相の福田淳一が辞任しました。女性テレビレポーターによるセクハラの訴えによってです。彼女もまた、彼との会話を録音しているのですが、彼はいかなる不正も否定しています。この女性レポーターは匿名のままですが、私に言ったのです、彼女の行動は私の行ったことと世界的#MeTooムーブメントに触発されたものであると。

これは画期的な出来事です。以前の日本の女性は思い切ってMeeToo(私も)と「ささやく」だけだったんです。でも、全員が学んだのです、いかにしてお互い支え合っていくかを。にも関わらず、烙印や反動は、ほとんどの者にとっては強すぎます。あまりに多くの人が「We too(我々も)」を選択してしまうんです。そうすれば、誰もMe(私)をターゲットにすることはできませんから。

私自身と私の物語を、私自身のジャーナリズムにしたことにより、私は多くの境界を越えました。いかに懸命に公平な調査を努力しようが、私の事件を離れた視点で見ようが、それは未だに私のことなんです。未だに私を傷つけているんです。でも、他の選択は無いと感じたんです。質問する側から答える側への役割の転換で最も大きく学んだこととしては、認めることです、何度も何度も聞かれることが、いかに攻撃的かです。「では、その夜実際に何があったのか教えてくださいと」。今日の英国でさえもです。

もし日本の報道が社会的因習の足かせから自由であったなら、これらの問題は数年前に持ち上がっていたかもしれません。日本の一世紀前のレイプ法、被害支援センターの欠如、等身大人形によるレイプの再現といった問題です。日本において真に自由な報道があったなら、私は公に出る必要も、生まれ育った国を出る必要もなかったでしょう。長期にわたるオンラインのヘイトキャンペーンのターゲットになることもなかったんです。

でも、そうは言いながらも、私は言論の自由を謳歌したんです。これが今も日本にあることを誇りに思います。最初は、自身の経験を話したわけですが、後には、その後に起こったことを話すことになりました。このステップを踏む必要があったと感じます。なぜなら、私は自身で目撃したからです。男性支配のメディア業界において、いかに性暴力の主張をすることが難しいかを。女性がおきまりのように執着され(?)、セックス対象として矮小化される社会では。

もう一度言わねばなりません。山口氏に対する刑事罰がもたらされることはありませんし、彼は民事での私の主張を否定しています。しかし、主張することだけが私の選択肢です。我々は皆が声を持っており、誰かからの糾弾に直面したとき、それが広がるのは他者の信念とサポートによるものなのです。


本はこれですね。私は読んでませんが。お求めはこちらからです。

コメント