悪質なウソ記事「ロシアがディープステートと大手製薬会社がCOVIDパンデミックを製造したことを証明する2,000ページの報告書を発表」

ときどきこういう記事が出てきて、疑うことを知らない人達がすぐに引っかかります。ひっかかりやすいものとしては、我々の希望を叶えてくれるような「明るいニュース」の場合です。

ロシアがディープステートと大手製薬会社がCOVIDパンデミックを製造したことを証明する2,000ページの報告書を発表という日本語記事です(wayback machineはここ)。まるでウソです。

扇情的な文言に惹きつけられる

素晴らしい言葉が並びますね。曰く。。。

ロシアは、世界を征服するためにCovid-19パンデミックを製造しているとして、大手製薬会社とアメリカのディープステート関係者を公に非難し、ヒラリー・クリントン、バラク・オバマ、ジョー・バイデン、ジョージ・ソロスを人類に対する陰謀の共謀者としてリストアップしました。

「ロシアはSARS-CoV-2の発生と流出について正義を望んでいますが、西側諸国はその起源を隠蔽し、科学者やジャーナリストを検閲しました」と、在米ロシア大使館は木曜日に発表しました。

ロシアは国連にすべての証拠を提出しており、それは過去18カ月間の主張を証明する2,000ページ以上の報告書に相当します。

この記事は、海外記事を日本語に翻訳したもので、元英文記事は、Russia Releases 2,000 Page Report Proving Deep State & Big Pharma Manufactured Covid Pandemicというものです(wayback machineはここ)。

元英文記事には、確かに上の文言がありますね。

Russia has publicly accused Big Pharma and US Deep State actors of manufacturing the Covid-19 pandemic to take over the world, listing Hillary Clinton, Barack Obama, Joe Biden, and George Soros as co-conspirators in the plot against humanity.

“Russia wants justice for the creation and release of SARS-CoV-2, while the West covered up the origins and censored scientists and journalists,” the Russian Embassy in the United States said on Thursday.

Russia has submitted all their evidence to the UN, which amounts to over 2,000 pages worth of reports proving their claims over the last 18 months.

では、この情報ソースはどこなんでしょう?まず上の「said」のリンク先は、タス通信の記事「Russian embassy in US blames Washington for trying to manage epidemics」というものです。

タス通信記事には、「ロシアはSARS-CoV-2の発生と流出について正義を望んでいますが、西側諸国はその起源を隠蔽し、科学者やジャーナリストを検閲しました」など、どこにも書いてありません。SARS-CoV-2という言葉すら見つかりません。もちろん、他の人名等もです。一切ありません。タス通信記事内容としては、米国が監視と称して世界中に生物兵器研究所を置いていることを非難しているだけです。

元英文記事が引用しているのは、このタス通信記事のみで、元英文記事には、他に埋め込み動画が二つありますが、この件とはまるで無関係のようです(とても見る気になれないので、見てません)。

後半の引用元

では、その後の文言、例えば「特に懸念されるのは、国防総省がウクライナで展開している活動です。米国はそのプロジェクトに、ウクライナの国家機関や民間企業数十社を巻き込んできました」などは、どこからのものでしょうか?文言を検索してみると、以下のSputnik記事を見つけました。どういうわけか、元英文記事には、このSputnik記事へのリンクが無いのです。

Pentagon Bio-Research in Ukraine Should be Assessed by Relevant Int’l Bodies – Russian Embassy

元英文記事には、この部分にも扇情的な文言がありますね。

病気を監視するという名目で、米国のディープ・ステートは、非人道的な研究に従事する違法な生物研究所を世界中に増殖させている、と大使館は強調しました。

Under the guise of monitoring disease, the US Deep State has proliferated the world with illegal biolaboratories engaged in inhumane research, the embassy stressed.

ところが困ったことに、この(ディープステートという)文言は、Sputnik記事のどこにもありません。Sputnik記事において、上の文言は、「ワシントンはその主張を無視し」というパラグラフと、「この声明はまた、これらの機関がロシアの国境近く」というパラグラフに挟まれた部分のはずですが、こう書かれているのです。

病気を監視するという名目で、米国は世界中に違法な研究所を堂々と、そして平気でばらまいている、と同大使館は強調しました。

Under the guise of monitoring disease, the United States has scattered brazenly and with impunity illegal laboratories around the world, the embassy highlighted.

このSputnik記事のWayback machineの記録はここです。おそらく書き換えられてはいないと思われます。つまり、最初からディープステートなどという言葉は使っていなかったであろうことです。どう考えても、こんなところにいきなり「ディープステートがー」などと書くはずありませんけどね。

もちろん、

ロシア国防省が発表した米国の違法な軍事生物学的活動に関する事実は、ワシントンD.C.のディープ・ステートの真の目的について改めて考えさせるものです。

The facts published by the Russian Ministry of Defense about the United States’ illegal military-biological activities should make one think again about the true objectives of the Deep State in Washington D.C., the statement said.

という部分は、著者の感想なので、事実とは無関係ですね。

結局のところ

こういったインチキ記事は定期的に出てきます。最大のものは、「第2ニュルンベルグ裁判が始まった!」という2年以上前のもので、このギョーカイの影響力のある有名人達がこぞって拡散したものです。もちろんウソです。

こういった教訓を生かさずに、未だにこれを頻繁にやっている人たちがいます。少なくとも、元の英文記事を読みさえすれば、この記事(日本語、元英語)が、全く根拠の無いものとすぐわかるはずなのに、それをしません。すぐに飛びついて拡散しようとするのです。

こういったウソ記事の目的としては、当然ですが、注目を集めることです。そのために、引用元には無い勝手な文言を加えるのに忙しくて、先のSputnik記事のリンクをつけるのを忘れたりします。しかも、ここでは意図的に捻じ曲げているのが明白です。極めて悪質と言えます。

あるいは、元英文記事著者の、Baxter Dmitryという人物が、Controlled Oppositionの可能性も否め無いと思います。こういったウソ記事を作って、拡散させることにより、「陰謀論者はウソばかりついている」との印象を与えるためです。

 

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