アントニー・ミュラー:テクノクラシーのための「グレートリセット」

Mises Institute: The ‘Great Reset’ Calls For Technocracyという記事です。

この記事はパトリック・ウッドのポッドキャストで紹介されているもので、

著者はAntony P. Mueller。ドイツ人経済学教授で、現在はブラジルで教えているようです。


現在ブラジルで教えるドイツ人教授は、「グレートリセット」が「世界的なテクノクラシーを作り出すことを意図して」でっち上げられているという、TN(テクノクラシーニュース)による長年の評価を独自に確認した。 これは重要であり、すべてのTN読者が読む必要がある。–TN編集者

 
コロナウイルスパンデミックをきっかけとするロックダウンが、いわゆる新世界秩序を確立するための長期間の計画の実行を加速させた世界経済フォーラム(WEF)の後援の下で、世界的政策立案者は、世界的テクノクラシーの創出を目的とした「グレートリセット」を提唱している。2019年10月18日、ニューヨーク市においてジョンホプキンス健康安全センターの主催する「ハイレベル」のパンデミック訓練において、WEFが「イベント201」に参加したのは偶然では無い。
 
この来たるべきテクノクラシーには、デジタル業界首脳と政府首脳との緊密な協力が含まれる。すべての人への最低所得の保証やヘルスケア等による新たな種類の統治は、厳格な社会統制と包括的な社会正義の約束を組み合わせている。
 
しかし、真実としては、デジタル専制政治の新世界秩序には、包括的な社会信用制度が付帯することである。中国は、個人、企業および社会政治的エンティティの監視と制御の先駆者である。
 
個人について、そのIDとしては、その個人的行動をほとんどすべて登録するアプリやチップに限定される。いくつかの個人的権利を得て、特定の場所に移動するためには、その人はバランスさせなければならない。つまり、詳細に定義された「良い行動」と人類と環境に有益と見なされるものの規制の網の目への服従である。

 

要するに、自発的な秩序や開発とは逆のタイプのソーシャル・エンジニアリングである。機械を使う機械技師のように、ソーシャル・エンジニア、つまりテクノクラートは、社会を対象(object)として扱う。以前の全体主義による残忍な抑圧とは異なり、現代のソーシャルエンジニアは、ソーシャルマシンを設計に従って独自に機能させようとする。この目的のため、ソーシャルエンジニアは、機械エンジニアが自然の法則に従う方法で社会の法則を適用する必要がある。行動理論は、ソーシャルエンジニアリングの夢を可能にする知識の段階に達している。 ソーシャルエンジニアリングの陰謀は、力ずくではなく、微妙にナッジ(軽く押す)によって機能する。

グレートリセットによって想定される秩序の下では、技術の進歩は人々の状況の改善に役立つことではなく、個人をテクノクラティック国家の専制政治に服従させることを意図している。 「専門家は、より良く知っている」がその正当化となる。

アジェンダ

世界の全面的な見直しの計画は、毎年1月にスイスのダボスでミーティングしているビジネスマン、政治家、及び彼らの知的仲間のエリートグループの発案によるものだ。1971年に誕生した世界経済フォーラムは、それ以来巨大なイベントになった。2020年の会議には、世界中から3000人以上のリーダーが参加した。

WEFの指導の下、グレートリセットのアジェンダの言うことは、現在の産業改革を完了するには、経済、政治、社会の徹底的な見直しが必要であることだ。このような包括的な変革には人間行動の変化が必要であり、したがって超人間主義(トランスヒューマニズム)がそのプログラムの一部である。

グレートリセットは、2021年にダボスで開催される世界経済フォーラム第51回会合のテーマになる。そのアジェンダとしては、世界経済を「より公正で、持続可能で、回復力のある未来」に向けて動かすという誓約である。このプログラムでは、人種的平等、社会正義、自然保護を中心とする「新たな社会契約」を求めている。気候変動については、「経済の脱炭素化」を求め、人間の思考と行動に「自然との調和」をもたらすことを求めている。この新世界秩序が「緊急に」実行されねばならないとWEF推進者は主張する。そして彼らが指摘するには、このパンデミックが「社会的結束」に欠けている「我々のシステムの持続不可能な状態をあらわにした」ことである。

WEFのグレートリセットプロジェクトは、最高レベルのソーシャルエンジニアリングである。リセットの擁護者達が主張するのは、国連が世界秩序確立に失敗し、アジェンダ2030として知られる持続可能開発の世界秩序を推進を失敗したことである。理由としては、その官僚的で緩慢な矛盾のある動き方のためである。これに対し、世界経済フォーラムの組織委員会の行動は、迅速で賢いのである。コンセンサスが形成されると、それは世界中のグローバルエリートによって実行される

ソーシャルエンジニアリング

世界経済フォーラムのイデオロギーは左でも右でも、進歩的でも保守的でも無い。また、ファシストでも共産主義でも無いが、完全にテクノクラティックである。そのため、集産主義イデオロギーの多くの要素が含まれている。

この数十年のあいだ、毎年のダボス会議でコンセンサスとなったことは、世界が革命を必要とすること、その改革にあまりに時間がかかりすぎていることだ。WEFのメンバーは急激な変化を想定している。そのタイムスパンはあまりに短く、ほとんどの人間は、革命が進行中であることにも気が付かないだろう。変化は非常に迅速かつ劇的である必要があり、革命の進行を認識した者にも、それに反対して動員を行う時間が無い。

グレートリセットの基本的な考え方としては、仏革命、露革命、中国革命への根本的な転換を導いたものと同じ原理である。それは、国家に組み込まれた、構成主義的合理主義のアイデアである。しかし、グレートリセットのようなプロジェクトは、誰が国家を統治するかという質問には答えられない。国家自体は支配しないのである。これは力の道具である。決定するのは抽象的な国家ではなく、特定の政党と特定の社会集団のリーダーである。

以前の全体主義政権は、自らの力を維持するため、大量処刑と強制収容所を必要とした。現在、新たなテクノロジーの助けにより、反対者は容易に識別され、無視されると考えられている。不適合者は沈黙させられる、道徳的に卑劣な者としての意見の不一致により。

2020年のロックダウンは、このシステムの機能の仕方のプレビューを提供した可能性がある。ロックダウンは、まるでオーケストラのように機能したし、おそらくそうであった。まるで単一の命令に従うかのように、経済発展の様々な段階のにある大国・小国のリーダーが、ほとんど同一の措置を実行した。多くの政府が協調して行動しただけではなく、世界的封鎖の恐ろしい結果をほとんど考慮もせずにこれらの措置を適用したのである。

数ヶ月にわたる経済停滞は、何百万もの家族の経済基盤を破壊してきた。封鎖は社会的距離と相まり、自身達を気にかけることのできない大衆を生み出した。まず政府が生計を破壊し、次に政治家が救世主として現れた。社会的支援の要求は、もはや特定のグループに限定されず、大衆の必要性となってしまった。

かつて戦争は国家の健康だった。今は病気への恐怖である。この先にあるのは、すべての人の最低所得、ヘルスケア、教育の保証される慈善的包括的な福祉国家の見た目の心地良さではない。ロックダウンとその結果は、将来の予兆をもたらした。つまり、恐怖の永続的状態、厳格な行動管理、大量の失業、そして国家への依存の高まりである。

コロナウイルスパンデミックをきっかけにとられた措置により、世界経済リセットの大きな一歩が踏み出された。国民の抵抗がなければ、パンデミックの終焉はロックダウンと社会的距離の終焉を意味するものではない。現時点では、デジタル専制政治の新世界秩序に反対する者は、異議を唱えるメディアやプラットフォームにアクセスできる。が、時間は無くなってきている。新世界秩序の加害者達は血の匂いをかいだ。コロナウイルスパンデミック宣言は、連中のグレートリセットのアジェンダを促進するのに役立った。大衆的反対のみが、これを減速させ、最終的には止めることができるのだ、拡大中の専制的テクノクラシーによる力の掌握の拡張を。

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Posted by ysugimura