「論文」に騙されないように

出版予定の「本当は何があなたを病気にするのか?」下巻第9章の一部を紹介します。要するに、「査読付きの論文」なるものは、もはや単に製薬会社の宣伝にすぎないということです。


調査研究論文は、科学の「ゴールドスタンダード」として広く推進される査読プロセスを通った後、医学雑誌に掲載され続ける。『リスキー・ビジネス』[B62]で、著者のシェルドン・ランプトンとジョン・スタウバーがこう説明する。

□「理論上は、査読プロセスにより、科学的エラーやバイアスを避けることができる」

しかし、これもまた「既得権益」の影響により、現実は理論と異なる状況であると、彼らはさらに説明する。

□「現実には、政府や企業の資金提供者の影響を排除できないことが証明されており、彼らのバイアスが研究結果に影響することが多い」

「査読」プロセスには問題の多いことが認識されており、リチャード・スミス(Richard Smith)が医学雑誌に関する記事[R9.60]で説明する。

□「研究の品質保証は不十分だ。発表された知見のほとんどが誤りと我々にはわかっており、これは驚きでもない。また、査読には問題が多く、有効性の証拠に欠ける」

上の「発表された知見のほとんどが誤り」とのコメントは、2005年の論文『発表された知見のほとんどが誤りの理由』[R9.61]のことであり、著者のジョン・ヨアニディス(John Ioannidis)医学博士は次を述べる。

□「現在の多くの科学分野において、主張される研究結果は、単に支配的バイアスの正確な尺度にすぎないことが多い」

この発言は「査読」プロセスの多くの問題点の一つを浮き彫りにする。それは、「査読」プロセスが、支配的「コンセンサス」の見解に頼り、それを永続させ、それに異議を唱える研究の発表を否定することだ。ブレギン博士が『毒性精神医学』[B12]で述べる。

□「(査読とは)もう一つの旧知の仲ネットワークであり、批判的意見が日の目を見ないようにする一方、体制側を支持する欠陥まみれの研究の迅速な公開を保証するものだ」

「ネットワーク」が、批判的視点に対抗して結束を固めた例として、アンドリュー・ウェイクフィールド博士のケースがある。彼の研究は、胃腸障害と自閉症の関連性を明らかにし、MMRワクチンの関与を示唆するもので、ワクチン産業にとって深刻な脅威となった。ウェイクフィールド博士の研究論文は、「査読」プロセスを通過して著名医学雑誌に掲載されたものの、その後撤回され、現在では「詐欺的」「信用できない」と報じられている。

※アンドリュー・ウェイクフィールド博士がワクチンと自閉症の関係を示唆する論文の発表により、医学界やメディアから総攻撃を受けた事件。下巻第7章で説明。

医学研究論文発表への製薬企業の影響力は、問題として広く認識されている。エッセイ『医学雑誌は製薬会社マーケティング部門の延長』[R9.62] (日本語訳)で、リチャード・スミスは、ランセット誌の元編集者であるリチャード・ホートン(Richard Horton)の2004年の発言を引用している。

□「(医学)ジャーナルは製薬会社の情報ロンダリングの場になってしまった」

リチャード・スミスはエッセイの中で、新薬やワクチンの有益結果の研究公表は有効な宣伝手段と述べる。

□「製薬会社にとって、好ましい試験は数千ページの広告に値する」

発表された研究は科学的な「真実」を示すと思うだろうが、その想定は誤りだ。ヨアニディス博士は、先に引用した2005年の論文[R9.61]で次を説明する。

□「発表された研究結果は、その後の証拠により否定されることもある」

医学雑誌も製薬業界から大きな影響を受けるが、それはわずかに広告収入が理由にすぎない。製薬業界は、より効果的な別の戦術を用いており、一つが「ゴーストライター」の起用である。『リスキー・ビジネス』[B62]の著者は、サイエンスライターのノーマン・バウマン(Norman Bauman)の言葉を引用するが、彼はゴーストライターについて次を述べる。

□「フリーのライターを雇い、これまた雇った医師の署名のもと、査読付きのジャーナルに記事を書かせる」

一般に、発表論文記載の著者名は、それを行った研究者と考えられているが、必ずしもそうではなく、ゴーストライティングがますます一般的になっているようだ。シェルドン・クリムスキー教授は『産学連携と科学の堕落』[B43]で次を説明する。

□「科学と医学にはゴーストライティング産業がある」

しかし、キャロリン・ディーン博士が『現代医療による死』[B27]で説明するように、これは新しい産業ではない。

□「セルジオ・シスモンド(Sergio Sismondo)によれば、製薬会社は何十年も前からゴーストライターを雇って論文を作っていたそうだ」

「医学」においては、小説とは異なり、ゴーストライティングは単に「能力の低い」作家を支援するものではない。リーモン・マクヘンリー(Leemon McHenry)博士が2010年の論文『詭弁家とスピンドクターのこと:産業界の支援するゴーストライティングと学術医学の危機』[R9.63] で説明する。

□「しかし、このような行為が、単なる原稿作成を超え、研究の学術的外観を提供する」

このような行為の存在は、査読と出版のプロセスが「ゴールドスタンダード」システムであるという主張に反する。しかし、「学術的外観」も懸念点ではあるものの、ゴーストライティングの意味するところは、はるかに重大なものだ。彼は言う。

□「こうしてカモフラージュされた出所が、科学的誠実さを損ない、公衆衛生を危険にさらす」

製薬業界が利用するもう一つの厄介な戦術は「ゴースト・マネジメント」と呼ばれるもので、セルジオ・シスモンド教授の2007年9月の論文『ゴースト・マネジメント:製薬会社が裏でどれだけの医学論文を作っているのか』[R9.64]で紹介されている。ここで彼は「ゴースト・マネジメント」の様子を説明する。

□「製薬会社とそのエージェントが、論文の研究、分析、執筆、出版という複数の段階をコントロールし、方向付けしている」

この産業の全容は、その活動がほぼ不可視のため知られないが、その影響はより目立っている。その理由をシスモンド教授が述べる。

□「(ゴースト・マネジメントは)製薬業界が医学研究に多大な影響力を持ち、それをマーケティング手段とすること(を可能にしている)」

研究論文の執筆や出版なども含め、医学研究のあらゆる側面に製薬企業が影響を及ぼしていることは重大な懸念をもたらす。ブレイロック博士は『健康・栄養の秘密』[B10]で説明する。

□「これらの科学ジャーナルの編集スタッフや編集長のほとんどもまた、製薬会社から研究費を受け取っており、さらには金を得ている企業の株式を保有さえしている」

これは明らかに「利益相反」の問題を提起する。シェルドン・クリムスキー教授は、科学の広い分野を調査してきたが、彼の発見は「医学」にも適用できる。彼は『産学連携と科学の堕落』[B43]で次を説明する。

□「科学上の利益相反は、不正行為や違法行為の疑惑よりも、はるかに軽く扱われる」


 

さらに、既刊の上巻第6章より。強者のストーリーに沿わない意見の学者・論文はこのように抑圧されます。この世界にもはや「科学」など存在しないのです。

 


GMOについては、かつてスコットランドのローウェット研究所(Rowett Research Institute)に勤務していた生化学者のアルパッド・プスタイ(Arpad Pusztai)博士を抜きにしては語れない。彼は当初、GE技術の支持者であり、作物の収量向上に役立つと信じていた。1990年代半ば、彼は遺伝子組み換えジャガイモを使ったラット飼育試験を行った。しかし、その結果、様々な悪影響が確認されたために懸念を抱くようになった

1998年、英国のテレビ番組でプスタイ博士のインタビューが放映され、自身の研究とその結果についてオープンに語った。また、GM食品は食べないと発言したとも報道された。このインタビューは、ローウェット研究所から事前承認を得ていたが、番組は大騒動となった。GM食品で健康に害があることを暴露し、バイオテクノロジー産業が主張する安全性とは正反対の内容だったのだ。その直後、プスタイ博士は研究所から停職処分を受け、彼の研究は公表されていない、あるいは「査読」されていないとの理由で、マスコミから中傷された。この状況は、1999年に彼の研究論文がランセット誌に掲載されたことで改善された。この雑誌は、評判の高い雑誌ではあったが、やはりGM推進派から攻撃を受け、厳しい批判にさらされたのである。その研究論文とは、『マツユキソウのレクチンを発現する遺伝子組み換えジャガイモを含む食餌のラット小腸への影響』[R6.120]というもので、ランセットのウェブサイトから入手することができる。

プスタイ博士とその研究に対する根拠のない主張は、明らかに彼の信用を落とすことを意図したものであった。彼がその研究分野の権威であり、当時、その研究が、GM食品について最も徹底した研究と多くが考えていたにもかかわらずである。彼の研究結果が、バイオテクノロジー産業に対する重大な挑戦であり、GM食品は安全との主張に矛盾するため、抑圧される必要があったことが明らかだ。

『Center for Research on Globalisation』のウェブサイト掲載の2009年の記事『GMOスキャンダル』[R6.121]で、ウィリアム・イングドールは、業界が承認した以外の研究結果が抑圧され続けていることを報告している。彼は述べる。

□「評判の良い査読付き科学雑誌の掲載が許されるのは、モンサント社などGM企業により事前承認を受けた研究だけだ」


 

さらに、既刊の上巻第1章からです。医学雑誌に掲載される論文のうち、科学的根拠のあるものは1%しかありません。

 


様々なソースからの豊富な証拠があり、そこでは「現代医学」が「科学」に基づいていないことを示している。そこには医学界自身から得られるものもあるのだ。例えば、1991年10月、権威あるブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)の元編集長リチャード・スミス(Richard Smith)は、『知恵はどこにある?医学的根拠の貧しさ』[R1.4]と題した論説で、次を述べている。

□「世界には、おそらく三万の生物医学雑誌がある」

明らかに、医師が読むべき資料としては、ありえないほど膨大だ。しかし、問題の本質は医療関連書の量ではない。この論説では、その前週にマンチェスターで開催されたある医学会議について触れている。リチャード・スミスが引用したのは、講演者の一人であるデューク大学のデビッド・エディ(David Eddy)教授の発言である。

□「確かな科学的証拠に裏付けられた医学的介入は、わずか15%程度である」

リチャード・スミスは自身の言葉でこう続ける。

□「この理由の一部としては、医学雑誌に掲載される論文のうち、科学的根拠のあるものが1%しかないこと。また、一部としては、多くの治療法が全く評価されていないことである」

これらの暴露は、現代医学は「科学」であり、治療法はすべて安全で効果的と科学的に「証明」済との主張に反する。

しかし、この論説は、「医薬品」が安全で効果的という主張自体にある問題を医学界が認めた唯一の例ではない。薬の使用に「リスク」が伴うことは広く認識されており、『現代医療による死』[B27]のディーン博士は、米国GAO(会計検査院)が作成した報告書を参照し、次を説明する。

□「1976年から1985年の間にFDAで承認された198の医薬品のうち…102(または51.1%)が承認後の深刻なリスクを抱えていた」

この報告書が示す「リスク」としては、心不全、腎不全、肝不全、出生異常などが含まれ、「承認済み」医薬品のもたらす危険性を明確に示す。これらの深刻な症状が薬の承認前に確認されなかったことは、薬の試験方法の重大な問題を示すだけでなく、化合物が薬としての使用に適すという、そもそもの考えに問題があったということだ。シェルドン・クリムスキー(Sheldon Krimsky)博士は、著書『産学連携と科学の堕落』[B43](邦訳:海鳴社)で、薬物検査の手順に疑問が持たれない理由を述べる。

□「毎年数万件の臨床試験のほとんどは、新薬、臨床処置、医療機器のFDA承認を得ようとする営利企業が資金提供している」

この状況は改善されるどころか、悪化している。第9章(下巻)で示すように、利益追求の製薬会社などの既得権益による医療制度の支配が、ますます強まっているのだ。


 

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