クイックテストへの信頼は存在しない流行を作り出す

Faith in Quick Test Leads to Epidemic That Wasn’tという記事です。2007/1/22とかなり古いものです。著者はGina Kolata。

ダートマス・ヒッチコック医療センター(ニューハンプシャー州)の内科医ドクター・ブルック・ハーンドンは、咳が止まらなかった。昨年の4月半ばに始まり、二週間の間、咳をし続けた、見るからにノンストップであり、次の週は断続的になり、うっとおしい状態であった。彼女が言うには、同僚の誰に対してもだ。

長くもかからず、ダートマスの感染病専門家のドクター・キャスリン・カークランドに恐ろしい考えが浮かんだ。彼女は百日咳流行を始めているのではないか?4月の遅くには、病院の他の医療従事者が咳をしていた。深刻でしつこい咳は百日咳の証明である。そしてもし、百日咳であるなら、流行をただちに封じ込めなければならない。病院内の赤ん坊に対しては致死的であり、虚弱な患者が肺炎を引き起こす可能性がある。

これが医療センターでの奇妙な話の始まりである。存在しない流行の話だ。

数ヶ月の間、この医療センターが巨大な百日咳流行になり、広範な影響を受けたと、関係者全員が考えていた。ニューハンプシャー州レバノンの、この病院の千人近くの医療従事者が予備検査を受け、結果が出るまで仕事を中断した。ドクター・ハーンドンを含む142名が、病気を持つと伝えられた。そして、数千名に抗生物質と防御のためのワクチンが与えられた。病床は、集中治療のいくつかを含み排除された。

八ヶ月後のことである。医療従事者達は病院経営側から愕然とするメールを受け取った、これらすべてがデマだったというのだ。

確定検査では、百日咳は一件も確認されなかった。つまり、研究室での細菌、百日咳菌の培養による確定検査では、百日咳は一件も無かったのである。そうではなく、医療従事者はおそらく、風邪のような通常の呼吸器疾患に苦しんでいたようなのだ。

さて、この話を振り返ってみて疫学者や感染病専門家は言うのである、問題としては、彼らが迅速かつ高感度の分子検査を過度に信頼し、方向を見失ってしまったことだと。

感染病専門家は言う、このような検査がますます使用されるようになり、百日咳、レジオネラ症、鳥インフルエンザ、結核、SARS等の疾患を診断し、流行を判断するために迅速の回答を得る唯一の方法としている可能性があると。

ジョンズ・ホプキンスの疫学者であり、米国ヘルスケア疫学者協会の元会長であるトリッシュ・M・パール博士は言う、このような分子検査への過度の依存によって引き起こされた疑似流行に関する全国的データは無いと。しかし彼女は言う、疑似流行は常に起こると。ダートマス事件は最大だったかもしれないが、決して例外では無いと言う。

同様の百日咳騒ぎが昨年秋にボストンの小児病院で起こった。ここに巻き込まれたのは、大人36人と子供2人である。が、確定診断では百日咳は発見されなかった。

「これは問題だ、問題であることはわかっている」とパール博士は言う。「私の推測としては、ダートマスで起こったことは、より一般的なものになるのではないか」。

多くの分子テストは迅速であるが、技術的には要求の厳しいものであり、各研究室がそれ自身の方法になっているかもしれない。これらの検査、「自家製」と呼ばれる検査だが、これは市販されておらず、そのエラー率の適切な推定値は無い。しかし、非常に敏感なため、偽陽性が発生しやすく、ダートマスで発生したように、数百、数千が検査されたときには、偽陽性によって伝染病が発生しているように見えるのだ。

新たな分子検査によって「未踏の地にいる」と言ったのは、ドクター・マーク・パーキンスである、感染症専門家であり、Innovative New Diagnosticsのチーフ科学オフィサーであり、ここはビル&メリンダ・ゲイツ財団のサポートする非営利組織である。「正確な性能については全くの白紙だ」。

もちろん、ではなぜそれらに完全に依存するのかという疑問になる。「額面上は、明らかにこれを行うべきではないのだ」とパール博士は言う。しかし、彼女はこうも言う、しばしば答えが求められ、百日咳菌のような弱体な生物で研究室での培養が難しい場合には、「良い選択肢が無い」と。

クイックテストへの信頼は存在しない流行を作り出す、その2

 

 

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